2024年のNHK大河ドラマ『光る君へ』がついにスタート!
『フェミニスト紫式部の生活と意見~現代用語で読み解く「源氏物語」~』(集英社刊)の著者であり、平安文学研究者出身の作家・奥山景布子さんが、毎週「源氏物語」と紫式部、その時代についてQ&A方式で解説します!
第1回は、紫式部と清少納言はほんとにライバルだったのか? というお話です。
第1回
清少納言と紫式部
更新日:2024/01/10
- Q1 紫式部と清少納言との関係って本当のところどうだったの?
- A1 たぶん、直接会ったこともないはず。
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時にライバルと言われることの多い二人。確かにそれぞれの著作「枕草子」と「源氏物語」は日本を代表する古典文学ですし、清少納言は康保3(966)年頃、紫式部は天延元(973)年頃の生まれと推定されるので、年齢もそれほど離れていません。また、清少納言が女房(侍女)として仕えていた藤原定子(ていし/さだこ、貞元2(977)年~長保2(1000)年)と、紫式部が仕えていた藤原彰子(しょうし/あきこ、永延2(988)年~承保元(1074)年)とは、ともに一条天皇の後宮にいた女性ですので、宮中などで接点があっても良さそうに思えます。
しかし実際には、同じ時期に宮中にいたことはない、すれ違いの関係だったようです。
定子が一条天皇の後宮に入ったのは正暦元(990)年、清少納言が定子に仕えるようになったのは正暦4(993)年頃。そして、定子周辺での出来事を多く記録する「枕草子」が、世間に広まるようになったのは長徳年間(995~999)の頃と考えられています。
長保2(1000)年に定子が25歳の若さで亡くなった後、清少納言は女房づとめをやめたらしく、その後はどこにも仕えることなく、静かに暮らしました。
一方の紫式部。清少納言が定子のもとで活躍していた頃には、彼女は父の藤原為時(ためとき)と共に暮らしていました。長徳2(996)年には為時の赴任先である越前(福井県)へ随行し、その後、京へ戻って藤原宣孝(のぶたか)と結婚。長保元(999)年には女子を出産しています。
「源氏物語」を書き始めたのは、宣孝が亡くなった長保3(1001)年頃だと考えられます。
紫式部が彰子に仕えるようになったのは、それからさらに数年後の寛弘2(1005)年頃、彰子の父、藤原道長の要請によるものと考えられます。
定子は、亡くなったあとも、一条天皇のお心や、貴族たちからの敬意を集める存在だったようですが、道長はなんとかそれを彰子の方へと引き寄せたかった。そのために紫式部をスカウトしたのです。
二人の関係を語る上で必ず引き合いに出されるのは、「紫式部日記」に書かれている清少納言批判です。これはおそらく、定子のもとで清少納言が果たした「文芸サロンの牽引役」のような役目を期待された紫式部が、「『枕草子』にあるような、機知に富んだふるまいはなかなかできない」、でも「本当の学識なら私の方が実は深い」という、コンプレックスとプライドに揺れる思いを書きつけたものであり、清少納言本人と会った上での感想ではないのです。
常に比較される、会ったこともないライバルへの思い。千年以上も長きにわたって、その言葉が取り沙汰されるとは、きっと思ってもみなかったことでしょう。
さて、思ってもみなかったと言えば、ついに始まった大河ドラマでは、道長の兄、道兼の抱える「闇」が初回からいきなり恐ろしかったですね! 肉親の男同士が鎬を削らねばならぬ平安時代の貴族男性たち、それに翻弄される女性たち。いずれも、この先のドラマでどう描かれるのか、とても興味をそそられます。 -
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「源氏物語」のイメージが変わります!『「フェミニスト紫式部の生活と意見~現代用語で読み解く「源氏物語」~』
(奥山景布子著、集英社刊)
バックナンバー
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第40回 紫式部のライバル!?
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第11回 紫式部の原稿料
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第9回 お后たちの文学作品
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第8回 藤原道長の魅力
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第7回 平安時代の宴会メニュー
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第6回 「源氏物語」の作者とは
更新日:2024/02/14
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第5回 平安貴族と和歌
更新日:2024/02/07
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第4回 藤原道長と紫式部
更新日:2024/01/31
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第3回 寝殿造のトイレ事情
更新日:2024/01/24
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第2回 十二単を着るときは
更新日:2024/01/17
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第1回 清少納言と紫式部
更新日:2024/01/10
- 著者プロフィール
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奥山景布子(おくやま きょうこ)
1966年生まれ。小説家(主なジャンルは歴史・時代小説)。名古屋大学大学院文学研究科博士課程修了。文学博士。主な研究対象は平安文学。高校講師、大学教員などを経て、2007年「平家蟹異聞」で第87回オール讀物新人賞を受賞し作家デビュー。受賞作を含む『源平六花撰』(文藝春秋)を2009年に刊行。2018年、『葵の残葉』(文藝春秋)で第37回新田次郎文学賞、第8回本屋が選ぶ時代小説大賞をW受賞。近刊は『フェミニスト紫式部の生活と意見~現代用語で読み解く「源氏物語」~』(集英社)『ワケあり式部とおつかれ道長』(中央公論新社)など。文庫オリジナルの『寄席品川清州亭』シリーズ(集英社文庫)や、児童向けの古典案内・人物伝記も精力的に執筆。古典芸能にも詳しく、落語や能楽をテーマにした小説のほか、朗読劇や歴史ミュージカルの台本なども手掛ける。「紫式部」を素材にした書籍としては、ほかに紫式部と清少納言が現代の子どもに向かって話しかけるスタイルの児童向け伝記『千年前から人気作家!清少納言と紫式部<伝記シリーズ>』(集英社みらい文庫)がある。
公式ブログ http://okehuko.blog.fc2.com/.
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RICCA(リッカ)
漫画家、イラストレーター。群馬県出身。児童向け作品を多く手掛け、漫画作品に、『<集英社版・学習まんが世界の伝記NEXT>津田梅子』(監修/津田塾大学津田梅子資料室、シナリオ/蛭海隆志)、『<集英社学習まんが日本の伝記SENGOKU>武田信玄と上杉謙信』(監修/河合敦、シナリオ/三上修平)、『胸キュン?!日本史』(4コマ漫画担当、著/堀口茉純、イラスト/瀧波ユカリ、集英社刊)。イラスト担当作品に集英社みらい文庫の『真田幸村と十勇士』シリーズ、『三国志ヒーローズ!!』(いずれも著/奥山景布子)ほか多数。歴史好き。推し武将、推し文豪の聖地巡礼にも赴く。ソロキャンプも趣味。X https://twitter.com/ricca_comic
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