大久保佳代子のほどほどな毎日

第24回

父の介護と、父の死と、怒涛の日々が続いた、50代の2年間

更新日:2026/09/24

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 この連載を始めた頃の私は53歳、そして、今の私は55歳。
 この約2年は本当に怒涛の日々でした。

 当初はね、「ほどほどな毎日」というタイトルにもあるように、もっとのんびりとした時間を過ごすもんだと思っていたんですよ。
 それこそ、第1回では富士山登山をきっかけに、失いかけていたメスの本能が目覚めた話を書いていて。
 あの頃は、消えかけた灯火ではあったものの、恋愛に対する希望も細々と存在していたしね。

 だがしかし、そのあとすぐに父の介護がスタート。
 第2回にはもう、そのことを書いているんですよね。
 そこからは、実家に帰省する回数が増え、Amazonの購入履歴の大半が介護グッズに。
 私の頭の中は父と介護のことでいっぱい。

 自分のために使える時間もグンと減ってしまって。
 もう、恋愛どころじゃなかったというか。
 そんな余裕もなかったし、そういう気持ちにも全くならなくなってしまったんだよね。

 実は、その父も昨年末に亡くなりまして。
 このエッセイでは父のことをたくさん語ってきただけに、ちゃんと皆さんにお伝えしたいところなのですが……。
 具体的なエピソードを語るのは「まだ辛い」のが正直な今の気持ち。
 やっぱりね、整理しきれていない思いもあるし、そう簡単に気持ちを切り替えることはできないよね。

 仕事が終わった夜も、休日も、物理的には自分のために使えるようになって、今は徐々に日常を取り戻せるようになってきてはいるんですけど。
 どこかにポッカリと穴が空いたような感覚で。
 なんだろうね、以前は「お父さんのことを考えていればいい」という気持ちの埋め方をしていたけれど、それが急になくなってしまって「どうしよう、何をしよう」みたいな。
 肩の力が抜けるのと同時に虚無感のようなものを感じたこともあったりして。

 少しずつ日常が戻りつつあるけれど、自分のことだけを考えて生きていたあの頃には、まだしばらく戻れないんじゃないかな。
 まず、父は亡くなってしまったけど、母との時間がまだ残されていますから。
 完全に介護終了ではないというか。空のまま炊飯器を炊いてしまったり、味噌汁のワカメが全然切れていなかったり、物忘れが激しくなってきたり……あやしい部分は多々あるけれど、今のところはまだ元気、一人で生活できるくらいには元気。

 それだけに「相変わらず口うるさいな」「性格がきついな」とイラッとしてしまうこともあるんだけど、母を大事にしてあげないと父も悲しむだろうし、そんな母もまた介護が必要になるときがいつかやってくるわけで。
 そのときは「お父さんのときよりは納得できるような最後にしてあげたい」と思う私もいたりして。

 まだ数年はきっと、気にしながら、囚われながら、私は生きていくんだろうな。
 まあ、「ご自由にどうぞ」「好きに生きてください」と急に解き放たれても困る気がするから、それが逆に今はありがたかったりもするんだけどね。

 周りの先輩達から「50代は変化のとき」とは聞いていたけど、ここ数年は本当にいろんなことがものすごい勢いで変わったよね。
 恋愛に関する意識もまた同じで……。

 先日、『踊る!さんま御殿‼︎』で舘ひろしさんと共演したんですけど。
「以前、大久保さんとラジオで共演したときにすごく良い印象を抱かれたみたいで。大久保さんを是非、という声が館さんからも上がったんですよ」なんて、嘘か本当かわからないけど、スタッフさんが嬉しいことを言ってくれたり。
 男性俳優さんが対談の相手に私を指名してくれたり。

 最近は、「女性として」ではなく「人間として」私のことを「面白い」と思って選んでくれたんだろうなって感じることがよくあって。
 なんか、今までとは全然違うモテ方をしている気がするんだよね。

 このあいだも、小木さんがYouTubeチャンネル『おぎやはぎトラベル』で声をかけてくれてねぇ。
 まあ、それは「小木さんならいいか」と断ったんですけど(笑)。
「女性」としては今も昔もモテないし、ちっとも求められないんだけど、仕事上ではそんなふうに「あなたが必要です」と私を求めてくれる、それが今はすごく嬉しかったりするんだよね。

 55歳、恋愛の戦場を自ら退いたつもりはないけれど、今の自分が恋愛することはもはやファンタジーにしか思えないくらいリアルじゃなくなっているのがリアル。
 なのに、ポッドキャスト『大久保佳代子とらぶぶらLOVE』では、他人の恋愛や不倫の相談ばかり受けているっていうねぇ。
 たいした経験値もないのに。

 そういえば、相談される機会が増えたのも、この2年の大きな変化かもしれない。
 最近はいろんなところで本当にやたらと悩み相談を受けていてね。
 それもまあ、「人として」求められているってことなのかもしれないけど。
 それはそれで嬉しいことなのかもしれないけど。

 この間はついに街で出会った人たちの悩みを片っぱしから聞いていく『大久保佳代子のさすらいの人生相談』なるB S番組までやってしまったりして。
 でも、これが結構楽しかったんだよね。
 やっぱり、父の死を経験したのが大きいのかな。

 介護士さんや看護師さんをはじめ、父の周りにいた人達には本当に感謝しかなかったし。
 介護をサポートしてくれた地元の同級生もまた同じ。
 たくさんの人と関わり、たくさんの優しさや思いやりを知りながら、それぞれの人生にも触れることができたというか。
 父の生き様もだし、周りの人の人生もだし、誰しもがいろんな思いを抱えながら生きていることを痛感して、より他人の思いに寄り添うことができるようになっているのを感じているというか。

 もうね、街にいるおじいちゃんおばあちゃんの話とか永遠に聞くことができますからね、私(笑)。
「そうなんだ、そんなことがあったんだ、すごいね、大変だったね、ここまで一生懸命に生きてきたんだね、この先も長生きしてね」って。

聞き手・構成/石井美輪 題字・イラスト/中村桃子

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©三山エリ

著者プロフィール

大久保佳代子(おおくぼ・かよこ)

タレント。1971年5月12日生まれ、愛知県出身。千葉大学文学部卒業。1992年、幼なじみの光浦靖子と「オアシズ」結成。「めちゃ×2イケてるッ!」でのブレイク後、バラエティ番組にとどまらず、コメンテーターや女優としても活躍している。近著にエッセイ集『まるごとバナナが、食べきれない』 (集英社)『パジャマあるよと言われても』(マガジンハウス) など。

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