大久保佳代子のほどほどな毎日

第8回

「体調は常に不調」。それが「普通」の更年期世代。

更新日:2025/05/21

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 「もしかしたら、更年期障害なのかもしれない」と、感じ始めたのは51~52歳くらいの頃。
 まず、ズドンと気持ちが落ち込みやすくなったんですよね。
 でも、人間、生きていれば落ち込むことなんて普通にあるわけで。
 あまり気にしないでいたら、今度は眠りが浅くなり、さらには、異常な暑さを感じるように。
 これもホットフラッシュの一種なのでしょうか。
 ただでさえ眠りが浅いのに、暑さによる寝苦しさで深夜に何度も覚醒。
 以前は湯たんぽがわりに重宝していた愛犬のパコ美ですらも今は暑苦しくて、布団への侵入を断固拒否。
 この冬は一度も暖房をつけずに過ごしましたからね。

 「もしかしたら」と調べると、案の定「更年期の症状です」という回答にぶち当たる。
 疑惑が確信へと変わるなか、生理の回数も徐々に減少。
 「あれ、3ヶ月来てないな」が「半年来てないな」に変わり、「遂に終わったのかな」と思いきや、ふいにまた突然やってきたりする……。
 女心を惑わせるダメ男のごとく、気まぐれに私を振り回す月経周期。
 乱れるばかりのその周期に「ああ、閉経間近なのだな」と痛感する今日この頃。
 カウントダウンが始まっているからこそ、最近はナプキンを買うのもちょっと嬉しくてね。
 全部使い切れるかどうかもわからないのに「どのナプキンにしようかな♡」って、ウキウキしながらいつもより高級なものを選んでみたりして。

 “更年期”とは閉経前の5年間と閉経後の5年間をあわせた10年間のことを言うそうです。
 今の私は間違いなくその更年期ゾーンにいるわけですが、症状は軽いほうなのかもしれませんね。
 「鬱っぽい症状がもっと酷くなったら、仕事に差し障りが出るようなら、病院に行こう」と思ってはいるのですが。
 「今日は無理だなぁ。あんなに人がいっぱいいるなかでワーワー言える気がしないなぁ」と思いながら家を出ても、いざカメラが回り出すと「ウェ~イ‼︎」と言えてしまうというか。
 これはもう、仕事を続けるなかで身につけたバラエティタレントのさがのようなものなのでしょうか。
 どんなに気分が下がっていても、仕事が始まりさえすれば、テンションはドンドコ上がっていく、そんな自分が怖いよね。

 また、今は親の介護でそれどころじゃないというか、やるべきことが盛り沢山で忙しいっていうのも症状が軽い理由のひとつなのかもしれません。
 それを言葉にするならば“ランナーズハイ”ならぬ“介護ハイ”(笑)。
 常にマルチタスクを抱えて走る、ハイ状態が続いているからこそ、更年期の症状にあまり目が行かないのかもしれないよね。

 個人差が大きいと言われている更年期障害。
 私の症状はやはり軽いほうなんだろうなとは思う。
 だけれども、決して絶好調な状態ではないわけで。

 バラエティタレントのさがを武器に仕事をやり終え、テンションが上がったまま家で酒を飲んで、そのまま寝たかと思いきや眠りは浅く、深夜に暑さを感じて何度も起きて、時計を見ては「まだ1時間しか寝てないじゃん!」と絶望。
 で、翌日は寝不足のまま仕事場へ……。
 ここ数年、ず~っとその繰り返し。
 もうね、ず~っと体調は不調なわけですよ。

 ただ、年齢を重ねると、膝が痛いとか、腰が悪いとか、誰しもがどこかに不調を抱えていて。
 そもそも「今日は絶好調!」っていう日のほうが珍しくなるから。
 そんな老化の流れに乗ってヌルッと更年期はやってくるから。
 突然やってくるわけじゃないから。
 普段の不調に少し深みが加わった、くらいの感覚でどうにかなっているんだよね。

 光浦(靖子)さんが「これ、更年期にいいんだよ」とカナダのお土産にくれたピンクの巨大なサプリメント。
 それを飲んだら、女性ホルモンを刺激されたのか、乳首がビックリするくらい痛くなっちゃってね。
 「なにこれ‼︎ 乳首が取れそうなんだけど‼︎」とクレームを入れる私を見て、光浦さんが爆笑していたのが最近の出来事。

 そんな更年期ネタだけでなく、立ち上がるたびにきしむ膝、すぐにエノキがはさまる歯間、土色に近づく肌のくすみ、髪の毛だけでなく下の毛や眉毛まで侵略してくる憎き白髪……老化ネタもつきることがなくてね。
 さらには、「私の乾燥した踵はまるで霜が降りたみたいに真っ白だ」と私が言うと、(いとう)あさこさんが「私なんてまるで吹雪のように粉が舞う」と言い始め、そこから始まる謎の老化マウント。からの、病気マウント。

 誰にだって必ず訪れる老いへの戸惑いを共有したり、一緒に笑って昇華したり、同世代の仲間達にはだいぶ助けられています。
 かといって、楽しく老いと向き合えているのかと聞かれたら、それもまた、決してそんなことはなくて。
 老いは怖い。間違いなく怖い。
 「怖くない」なんて言わないし、絶対に言えないよね。

 私が老いをしっかり自覚したのは45歳ぐらいだったかな。
 お酒が残る、目の下のクマがとれない、起きたら関節が強張る、とにかくだるい。
 そこから40代後半にかけて「疲れが取れない」がどんどん加速。

 老いとはもう8年くらいの付き合いになるのでね。
 だいぶ慣れてきているし、一通りの“老い”アイテムも出揃った感があるから。
 当分、新規のアイテムは出てこない気がするから。
 それをいかに悪化させずに、この健康状態をキープするか……。
 今、ちょっと怖いのが尿もれね。
 クシャミと同時にうっかり出ちゃうアイツね。

 年齢を重ねるごとに、耳が遠くなり、足腰が弱くなり、生き物としての機能がどんどん衰えていく。
 それは今、自分の両親を見ていてもリアルに感じること。
 だからこそ、老いは怖い、超絶怖い。
 でも、悲しいかな、人間は必ず老いていくんだよね。

 今の私が立っているのはきっとまだ初老のスタートライン。
 多少不具合があっても、まだ動く、まだ聞こえる、まだ見える。
 だからこそ「S T O P‼︎ 加齢‼︎」。
 今日もまた日課のアンチエイジングエクササイズに励み、高価な若返りサプリを飲む私。
 尿もれ防止のための骨盤底筋スクワットも、そろそろ始めようと思います。

聞き手・構成/石井美輪 題字・イラスト/中村桃子


©三山エリ

著者プロフィール

大久保佳代子(おおくぼ・かよこ)

タレント。1971年5月12日生まれ、愛知県出身。千葉大学文学部卒業。1992年、幼なじみの光浦靖子と「オアシズ」結成。「めちゃ×2イケてるッ!」でのブレイク後、バラエティ番組にとどまらず、コメンテーターや女優としても活躍している。近著にエッセイ集『まるごとバナナが、食べきれない』など。

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