
第5回
欲まみれの若手時代を経て辿り着いた、私の仕事の現在地
更新日:2025/02/26
ポッドキャストで配信している『大久保佳代子とらぶぶらLOVE』。
これが、本当に多くの人に聞いてもらえているみたいでね。
最近、会う人会う人から「聞いています」ってよく言われるんですよ。
番組の主な内容はリスナーさんからの恋愛相談。
10代の可愛らしい悩みから、大人のねっとり濃厚な悩みまで、幅広い世代の様々な相談が寄せられるんですけど。
なぜか、やたらと多いのが不倫のお悩み相談。
「不倫は絶対にダメ‼︎」と全否定せず、決めつけず、「恋しちゃう気持ちはわかるよ」「人生一回きりだもんね」なんて、いろんな方向から答えてしまうからでしょうか。
不倫界隈で「あの番組は肯定してくれる」と噂になっているのか、単純に不倫している人は相談できる相手がいないのか、まあ~本当に驚くほど届きますからね。
既婚者からの不埒な色恋相談が(笑)。
数年前はポッドキャストの存在すら知らなかった私が、今では番組でパーソナリティを務めている。
時代や年齢と共に仕事も周りから求められるものも変化。
いろんなことがどんどん変わっていく昨今ですが、年々、積み上がる芸歴の年数だけは確実に増えていくわけでして。
気づけば、共演者の中で自分が最年長であることも。
いやほんと「長いことやってきたんだなぁ」ってふとしたときに感じますよね。
そして、長く仕事を続けていると、必ずと言っていいほどぶち当たるのが“モチベーション問題”です。
若い頃は番組に呼ばれるたびに「このチャンスを逃すな!」「失敗してはならぬ!」「次も呼ばれるために絶対に爪痕を残すんだ!」と全身全霊で前のめり。
周りの反応に一喜一憂してはドキドキハラハラ。
力が入りすぎているから、すごくウケることもあるけれど、とんでもない失敗をすることもあったりして。
でも、今は経験を積みテクニックも身につけているぶん、大ウケもしないが大スベリもしない。
ガチガチに緊張することも特になく「はいはい、そういう感じね」と現場に入れるというか。
若い頃のようにアップダウンはないけれど、シビれるような刺激もなくて。
かといって、あの頃のようにドキドキハラハラする挑戦を用意されたところで「いや、それはもう体力的にしんどいぞ」と尻込みしてしまう。
結果、情熱の注ぎ場所がどんどんわからなくなっていくっていうね。
仕事とは生活するためのお金を稼ぐものでもあります。
だがしかし、今の私には金がある。まあまあの預金がある。
正直、働かなくても、慎ましやかに生活すれば、この先も生きていけるのかもしれない。
でも、そこで「仕事を辞めよう」と考えたことはないんですよ。
だってさ、辞めたところで、1日は24時間あるわけで。まず、そこで何をしたらいいのかがわからない。
特に趣味もない私はきっと家でボーッとするだけ。
頭はどんどん鈍くなり、口も回らなくなって、顔全体の筋肉が下がり、猛スピードで老いてしまい……。
そんなのもう、想像するだけで恐ろしいじゃないですか。
私はなんでこの仕事をやっているんだろうと、たまに思うことがある。
そんなときは基本に立ち返るように。
こんな私でもファンレターをもらうことがあって。
10代の学生さんだったり、30代の主婦の方だったり、いろんな人が手紙を送ってくれるんです。
そこには「最近はイヤなことばかりだったけど、テレビで大久保さんを見ていたら笑っている自分がいて嬉しかったです」なんて書かれていたりしてね。
そんな言葉に触れると「そういえば自分もそうだったな。テレビやラジオにワクワクして、元気をもらっていたな」って忘れていた記憶が蘇ってくることも。
そして「そっか、私の仕事にはそういう役割もあるんだな」と思うことができたりしてね。
よくよく考えると、ある意味、今の私はよりピュアな気持ちで仕事と向き合えているのかもしれない。
なんせ、若手の頃は「あの人に負けたくない」「もっと自分は面白いのに」「もっとテレビに出たい」なんて、欲まみれだったから(笑)。
振り返ると、若手の頃の私はいつもビクビクしていました。
もともと人見知りで、人に嫌われたくない性格だからこそ、誰も知らない現場では周りの顔色ばかり窺って、何も喋れないまま収録が終わってしまうこともあったりして。
でも、この業界に長くいるおかげで、共演者や同業者に知り合いが増え、皆が私の扱い方もわかってくれているからこそ、仕事現場でメンタルがビクビクすることがなくなった。
信頼できるスタッフさんにも恵まれて、コミュニケーションをとりながら、より自分らしく仕事ができるようになった気がします。
良いことも悪いことも含め、今目の前にあるのは仕事を続けてきたからこそ見える景色で。
やっぱり“続けること”はとても大事なことなんだと思う。
以前は「続けるために大事なのは、毎日100点ではなく75点を目指すこと」なんて公言していた時期もあったけど。
最終的に大事なのはやっぱり「楽しむこと」なんだと思います。
現場には信頼できる人たちがいて、その空間で自分は楽しくやっていただけなのに、気づいたらフロアにいるスタッフも笑っていて、「ああ、今日は自分も周りも皆で笑えた良い一日だったな」と帰路につく……。
そんな仕事を積み重ねていくことが“続けること”につながるのだろうなって。
ただ、ここで大事なのが「果たしてこれが正解なのかどうか」、俯瞰で自分を見る視点を持つことですよね。
もしかしたら、「私が楽しんでいたら、結果的に周りもOKなんじゃないか」というその感覚は加齢による図々しさからきているのかもしれない。
考えるのが面倒でラクなほうに思考をスライドさせているだけかもしれない。
でも、何より一番怖いのが「実は楽しんでいるのは自分だけ」というパターンですよ。
ほら、無駄に芸歴が長いと、周りの人に気を遣われちゃうから。
「先輩を滑らせちゃいけない」って、周りが無理に笑ってくれるから。
そうなっているのを感じたら、こっそり教えてくださいね。
なんなら、ファンレターに書いてくださいね。「大久保さん、ヤバイですよ」って。
聞き手・構成/石井美輪 題字・イラスト/中村桃子
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©三山エリ
- 著者プロフィール
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大久保佳代子(おおくぼ・かよこ)
タレント。1971年5月12日生まれ、愛知県出身。千葉大学文学部卒業。1992年、幼なじみの光浦靖子と「オアシズ」結成。「めちゃ×2イケてるッ!」でのブレイク後、バラエティ番組にとどまらず、コメンテーターや女優としても活躍している。近著にエッセイ集『まるごとバナナが、食べきれない』など。