
第12回
‟色恋”の代わりに‟男友達”を手に入れた
大人の女の等価交換
更新日:2025/09/24
世間でよく話題にのぼる男と女の友情が成立するのか問題。
これに関してはいろんな意見がありますが、個人的にはずっと「絶対に成立しない」と思っていました。
そもそも、男女では体の作りからして全然違うわけですから。
凹凸が重なり合う仕組みになっている限り、この体に性欲なるものが宿っている限り、「成立するわけがないんだ」と。
頑なにそう信じて生きてまいりました。
でも、ここ数年はちょっと思うようになってきたんですよ。「成立するのかもしれない」というか「成立せざるをえないのかもしれない」って……。
私は根っからの男好きなんでね。
目の前にいる男性は全て恋愛対象。
友達というグレーゾーンを設けることができないからこそ、「付き合えるのか、付き合えないのか」「やれるのか、やれないのか」と、「0か100か」の振り切った感覚で常に男性と向き合ってきたんですけど。
今となっては、どんなにこっちが「やれる」「付き合える」と思ったところで、相手は何とも思っていないっていう。
年齢を重ねるにつれ、そういう状況が悲しいほどに続くと私も思うわけですよ。
「なるほど、じゃあ、ここは潔く路線を切り替えてと。友達というものとやらにトライしてみようじゃないか」と。
体の内側でたぎる性的なものを封印して、純粋に“友達”として男性と向き合う。
それの何が面白いのか、最初は全く理解できなかったんだけど。
これが、やってみると意外にも楽しく心地よい。
例えば、女芸人同士だと、同性であり、友達であり、同業者でもあるから。
誰よりもわかりあえるんだけど、無意識に張り合ってしまうことも。
その人が爆笑をかっさらったり、良い仕事をしていると、素直に喜べない自分がいたりして。
でも、これが男性芸人相手になると張り合う気持ちがスッと消える。
不思議と何とも思わなくなるからすごくラクなんですよね。
また、何度も言いますが、私は無類の男好きなんでね。
「この人とは恋愛や性的な方向に絶対に展開しない」と、「あくまで友達なんだ」とわかっていても、そこに男がいるだけで気分が上がるというか、男好きの心が満たされるというか。
最近はちょっと思っているんですよ。
「男友達って悪くないのかもしれない」って。
この間も、平成ノブシコブシの吉村君から「大久保さんと飲みたいと言っている放送作家(男)が2人いるんですけど、どうですか?」って誘われて。
これが、以前の私だったら「もしかして、これは出会いかも?」って。
行く前に、いつもより念入りにメイクして、ドライヤーで髪をセットして、なんなら、ZOZOTOWNで服まで購入。
構えに、構えて、恋愛と性欲の鎧をガチガチに身につけて挑んでいたと思うんですけど。
今の私はテキトーな感じで、「なんですかこの会。どういうつもりで開いているんですか」なんて軽口叩いて、なんの鎧も身につけずにいつもの私で挑むことができる。
これもまた、すごくラクでねぇ。
男女関係なく人間同士で深く関わり合えている感じも、すごく楽しかったんだよねぇ。
まぁ、2人とも既婚者だったんだけどね(笑)。
色恋抜きで男性と向き合う楽しさに目覚めつつある今日この頃。
最近、私はこんなことを思っている。
「女が一人で生きていくには、支え合える女友達は絶対に大事だし必要。でも、そこに男友達があと3人加わったら、私の人生はもっと楽しくなるのかもしれない」と……。
その3人は具体的にどんな男友達がいいのか。
理想としては、まず、私の男好きな心を癒してくれるビジュアル担当のイケメンは一人欲しいところですよね。
芸能人で言うなら、坂口憲二さん。
家の扉がガタついたり、網戸が外れたりしたときに、「カヨ姉、いいかげんにしてくれる」って笑いながら駆けつけてくれて。
パパッと手際よく直してくれるんですよ。
ああ、でも、そのときはちょっと性的な目で見ちゃうかもなぁ。
でも、大丈夫、見るだけだから‼︎
ほんのちょっといやらしい目で眺めるだけだから‼
二人目は、リアルなところで言うと、おぎやはぎの小木さんかな。
小木さんはすでに仲の良い男友達なんですけど、粗雑でぶっきらぼうで、人として見下せるところが多々あるから、私も気を遣うことなく言いたいことが普通に言えるんだよね。
また、奥さんやお子さん含め、家族ぐるみで仲良くさせてもらっているので。
歳を取って寂しくなったら家族の食卓に混ぜてもらって、「しょうがないなぁ。大久保さん、うちで暮らす?」の一言を待つっていう。
老後の家族枠ですね、ハイ。
最後の一人はどうしようかなぁ。
旅行やドライブに連れて行ってくれたり、私の好奇心と行動範囲をぐんと広げてくれる年下の男友達とかいいな。
プライベートな会話はツッコまれるほうが好きなので。
一緒にラジオをやっているトンツカタンの森本君とか、パンサーの向井君もいいな。
でも、二人はちゃんと気を遣ってくれそうだから。
そうなると、ラバーガールの飛永君あたりがいいのかも。
飛永君はね、いい塩梅の気の遣わなさ加減が心地よいんですよ。
もちろん先輩としてリスペクトしてくれているとは思うんだけど、ちょっと舐めている感じもあって。
「大久保さん、それやるんですか?」って蔑んだ目で見てきたりして。
でも、そこで生まれる軽口の叩き合いも楽しかったりするんだよね。
年齢を重ねるにつれ恋愛やトキメキからは縁遠くなっていく。
それは寂しいことだけど、その代わりに男友達は作りやすくなっていく。
今はまだまだ少ないけど、新たな男友達、これからどんどん増やしていきたいよね。
聞き手・構成/石井美輪 題字・イラスト/中村桃子
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©三山エリ
- 著者プロフィール
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大久保佳代子(おおくぼ・かよこ)
タレント。1971年5月12日生まれ、愛知県出身。千葉大学文学部卒業。1992年、幼なじみの光浦靖子と「オアシズ」結成。「めちゃ×2イケてるッ!」でのブレイク後、バラエティ番組にとどまらず、コメンテーターや女優としても活躍している。近著にエッセイ集『まるごとバナナが、食べきれない』 (集英社)『パジャマあるよと言われても』(マガジンハウス) など。
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