
第6回
弾まない、交わらない、成り立たない。
ハラスメントを避けながら試みる、20代と50代の会話
更新日:2025/03/19
最近、若い世代と何を話したらいいのかわからない。
例えば、20代前半と思われる若いA Dさん。
昔だったら「彼氏いるの?」「恋愛どうなの?」なんて話もできたかもしれない。
でも、今そんなことを聞いたらセクハラになっちゃうし。
かといって、年齢や出身地を聞くのは個人情報だから躊躇してしまうし。
「現場、楽しい?」なんて、私が聞くことでもないよなぁって……。
迷いに迷った結果、選んだ一言が「今日は晴れそうだね」。
当たり障りのない天気の話で沈黙を埋めている自分がいたりしてね。
以前は若い世代ともっと楽しく話せていた気がします。
でも、気づけば私も53歳。
20代からしたらもうお母さん世代なわけで。
こないだも、韓国のガールズグループ『ル・セラフィム』を永遠に覚えることができなくて。
ラセラフィーじゃないのか、セラセラフィムも違うのか、周りの若い子に何度もしつこく聞いちゃったりしてね。
最近はもう、何が流行っているのか、どんな会話が盛り上がるのかもわからない。
年齢差が広がるのと同時に膨らむ若者に対する苦手意識。
さらに、追い打ちをかけるように襲いかかるのがハラスメントの嵐ですよ。
ハラスメントって、強者(上司や先輩)が弱者(部下や後輩)を攻撃するというイメージがあるから。
自分が弱者の立場なら少しは気が楽になるというか。
大竹まことさんには、迷いなく「ジジィ」と言えてしまうんだけど。
まあ、それも立派なエイジハラスメントなんですけど(笑)。
年上や同年代に対しては、同じ昭和を生きてきた安心感があるからか、お互いに多少の失礼は許し合える気がするんですよね。
ただ、自分が強者の立場になるとそうもいかない。
セクハラやパワハラに始まり、アルコールハラスメントに不機嫌ハラスメント、なんでもハラスメントになる昨今、若い子に対する言動にはやっぱり自分も敏感になってしまうよね。
また、こういう仕事をしていると、距離の取り方が若干バグっているというか、他人の心にズカズカと土足であがるようなところがあるというか。
デリカシーのない発言をしたり、ツッコんだり、それをちょっと面白いと思っちゃっている、良くない自分もいたりするわけですよ。
だからこそ、若い子と接するのが余計に怖くてね。
こっちはそんなつもりじゃなくても、私の一言がトラウマになって、メンタルやられて、仕事を辞めてしまうかもしれない……。
勝手に大袈裟に考えては、勝手に疲れ果て、「こんなに気を遣うならもう、コミュニケーションなんて取らなくてもいいや」と、これまた勝手に諦めてしまったりして。
そんな私と同じように、とにかく若者とコミュニケーションをとるのをビビっている、そんな昭和世代はきっと多いはず。
でも、同時にきっとどこかで感じていると思うんですよ。「このままじゃあ、ダメなんだろうな」って。
わかりあえる同世代の仲間だけで集まり、いつもと同じ場所で、同じ酒を飲みながら、同じような会話を繰り返す。
それはとてもラクだし心地良い。
でも、どんどんコミュニケーション能力が衰えていく気もするんですよね。
相手を“探る”努力をしないから。
人を知るにはやっぱり、会って、話して、接する必要があって。
そこで、何が響いて、何が返ってくるのか、そんな確認を繰り返しながらお互いのことを理解していくんだよね。
相手の目つきや表情を見て「こういうことを言ったらダメなんだ」「これをするのはイヤなんだ」なんて学びながら。
人と触れ合うと、イラッとすることも、ムカつくことも、嬉しいことも悲しいこともあるけれど、それもまた勉強です。
感情をあっちこっちに動かし、正解を探しながら、私たちは人間関係を築いていくわけです。
なのに、今ではお互いに不快なことはなんでもかんでもハラスメント認定。
異なる世代とは交わることを避けて平行線のまま。深まるばかりの分断を放置している、私たちはちょっとラクをしすぎているのかもしれないよね。
今の私の現場マネージャーちゃんは22歳の女の子なんですけど。
こないだ、私と同世代のスタイリストさんが、彼女に初めて会った瞬間、いきなり聞いたんですよ。「彼氏いるの?」って(笑)。
それは、若さにビビる私がずっと聞けなかったこと。
それだけに、一瞬ドキッとしたんだけど、そこからは恋愛トークがスタート。
雰囲気が悪くなるどころか、逆に楽しい空気が流れたんだよね。
そんな出来事からも感じたんだけど、今の時代、こういう“空気を読みすぎない人”が必要な気がするんですよ。
例えば、裏でも表でも誰に対しても「久々~!」「元気?」「マジウケる~!」とタメ語で話せる、ギャル芸人のぱーてぃーちゃんの信子ちゃんとか。
昭和のおばちゃんテンションでガンガン距離を縮めちゃう、いとうあさこさんとか。
そう考えると、ギャルと昭和のおばちゃんって最強なのかも。
お互いにビビりあっているからこそ、その壁をぶっ壊してくれるフランクな人間がいると、現場の空気がぐんと和んだりするんだよね。
振り返ると、私自身も先輩からのフランクな言動に救われたことが何度もあります。
なかでも「いつか私もあんな先輩になりたい」と憧れたのが関根勤さん。
関根さんてね、世代や立場に関係なく現場にいる全員に声をかけてくれるんですよ。
しかも、それはたいてい「大久保ちゃん、あれ見たよ!」「あの番組、面白かったね!」なんて嬉しい褒め言葉で。
若手時代は関根さんの言葉にいつも緊張が和らいで、今日の収録は楽しめそうという気持ちになれたんだよね。
だからこそ、私もいつか、関根さんのようになりたい。若者にビビったりすることなく、褒め言葉を届けられるような大人になりたい……。
えっ、今は褒めるのもハラスメントになる可能性があるの? 嘘でしょ? なんで?
みんな、考えすぎだよ‼︎ 褒めるくらいは許してくれよ~‼︎(涙)
聞き手・構成/石井美輪 題字・イラスト/中村桃子
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©三山エリ
- 著者プロフィール
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大久保佳代子(おおくぼ・かよこ)
タレント。1971年5月12日生まれ、愛知県出身。千葉大学文学部卒業。1992年、幼なじみの光浦靖子と「オアシズ」結成。「めちゃ×2イケてるッ!」でのブレイク後、バラエティ番組にとどまらず、コメンテーターや女優としても活躍している。近著にエッセイ集『まるごとバナナが、食べきれない』など。