
第15回
「後輩には嫌われたくない」
どうする、年下女子とのコミュニケーション
更新日:2025/12/24
後輩も交えて大勢で食事に行くことはたまにあるけれど。
後輩とマンツーで食事に行くことは滅多にありません。
先輩である私に後輩は気を遣うだろうし、私は私で「圧を与えないようにしなきゃ」って、やっぱり気を回すしね。
よっぽど「この後輩の考えていることを知りたい」と思ったり、「今のお笑いはどんな感じなのか」「女芸人の若手世代はどうなっているのか」なんて好奇心が勝ったりしたら自分から誘ったりするのかもしれないけど……。
残念ながら私、そういう気持ちが1ミリもわかないタイプなんですよね。
老いていく親、衰えゆく身体、仕事の愚痴、共通項が多いからこそ説明なしに話が進み盛り上がれる。
一緒に飲むなら同世代の友達がラクでいい。
基本、そう思いながら生きている私ですが、最近、珍しく若い女子と2人でで食事に行ったんですよ。
その相手が元S K E48の須田亜香里ちゃん。
私がS K E48の番組のM Cを務めたさせてもらったところからはじまり、その後もラジオ番組やテレビ愛知の仕事で一緒になることが多くて。
気づけば、もう10年くらいの付き合いになるのかな。
そうなると、他人にあまり興味のない私でも、さすがに「可愛がりたい」という気持ちが湧き上がってくるわけで。
そんな彼女から「大久保さんとごはんに行きたい」なんて言われたら、もちろん「行こう」と答えるわけですよ。
「もしかしたら、私に相談したい悩みがあるのかもしれない。力になってあげないと‼︎」と、勝手に想像を膨らませながらね。
番組収録後に一緒に行った串焼き屋。
そこで、彼女が語り始めたのはやっぱり仕事に関するお悩みで。
彼女は私の一言一言を逃さないように真剣に話を聞いてくれるわけですよ。
だからこそ、私も「変なことは言えないぞ」と、彼女の気持ちを考えながら真面目に答えたりしてね。
だがしかし、お悩み相談は冒頭の20分で終了。
そこからは恋愛話がスタート。
久々に聞かれましたからね、「大久保さん、最近の恋愛はどうなんですか?」って(笑)。
同世代の友達間では「お互いに何もないだろう」と思っているからこそ、暗黙の了解で触れもしない、こちらは恋愛話から遠ざかってだいぶ経つのでね。
やっぱり。
「年齢と感覚が違うとこうなるよなぁ」と、開始から2時間半というちょうど良い時間で気持ちよく解散させていただきました♡
バラエティ番組は上下関係があまりなく横並びなので、普段は共演者との年齢差を感じることもなくて。
それこそ、須田ちゃんとは図々しくも「ひとつの椅子を取り合ってもおかしくない」くらいの気持ちでいたんだけど、実際は20歳という年齢差があるんだよね。
そんなジェネレーションギャップを感じつつも彼女と過ごした時間は楽しくて、なのに、どこか“肩透かし”感を覚えているのはきっと、私がハードルを上げていたからなんでしょうね。
同世代の友達と同じようにいろんな気持ちを共有しながら深い話ができるんじゃないか、さらに、そこに若い子ならではの刺激も届けてくれるんじゃないかって、勝手にね(笑)。
そんな出来事からも感じたのが“年下の女の子とのコミュニケーションに気負ってしまう自分”です。
これまた勝手なんだけど、後輩や年下の女の子からは嫌われたくないというか。
好かれたいし、興味を持ってもらいたいし、なんなら、一目置いて欲しい。
後輩が私の目の前をサーッと通り過ぎて、他の芸人の輪の中で盛り上がられたりすると、普通に傷つきますからね。
「私に興味ないんだ。テレビでも下ネタしか言わないし、同じ芸人だと思ってくれていないからそうなるんだ」って。
急にネガティブになって、それが「なんだこいつ」という憎しみにどんどん変わっていったりして。
私が後輩と飲みにいかないのは「嫌われたくない」っていう思いもあるんだろうな。
嫌われないためには、距離を縮めないのが一番の策だから。
また、こっちから誘うと、後輩に無理させてしまう可能性もあるじゃない。
その日はあいてないのに、行きたくないのに、「行きます」と言わせてしまったりね。
そうなるのが嫌だから、誘わない。
色々とコンプライアンスが厳しくなっている現代、私だけでなく、同じことを思っている先輩はきっと多いんじゃないかな。
だからこそ、食事や飲みに行きたいと思っているなら、後輩から誘ったほうがいいよね。
先輩からの誘いを待つんじゃなくてね。
あと、ここで年下女子達に言っておきたいのが「私と飲んだところでそんなに楽しくない」ということです。
たまに、若い子の雑誌のインタビューとかで「大久保さんと飲みに行きたいという読者がたくさんいます」なんて言ってもらうことがあるんだけど。
きっと「ポッドキャストの『大久保佳代子とらぶぶらLOVE』みたいに、悩み相談に乗ってくれそう」みたいなことを思っているんだろうね。
でも、あれはポッドキャストいう媒体があって、仕事としてお金をもらって、再生回数が増えれば番組が続くから、頑張れるわけで。
こちらとしては「それをマンツーマンで本気でやらせようと思っているのか?」と、「プライベートでそんなことはしないぞ」と言いたくなるよね。
もっと言えば、仕事だからこそ、不毛な恋のお悩みに対しても「エンタメになったらいいな」の気持ちで答えていますけど。
これが可愛がっている後輩の悩みだったら「やめなよ、そんな気持ち悪い恋愛‼︎」って、本気で怒るか、本気で嫌悪感を示しますからね。
エンタメ要素は皆無で、バサっと切り捨てる勢いで。
世の年下女子から「大久保さんと飲みたい♡」と思ってもらえるのは嬉しい、けれどやっぱり思ってしまう。
「じゃあ、あなたは私を楽しませることができるんですか?」と。
お金が発生しない以上、そこは対等ですからね‼︎
できないなら、お金を取りますからね‼︎

聞き手・構成/石井美輪 題字・イラスト/中村桃子
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©三山エリ
- 著者プロフィール
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大久保佳代子(おおくぼ・かよこ)
タレント。1971年5月12日生まれ、愛知県出身。千葉大学文学部卒業。1992年、幼なじみの光浦靖子と「オアシズ」結成。「めちゃ×2イケてるッ!」でのブレイク後、バラエティ番組にとどまらず、コメンテーターや女優としても活躍している。近著にエッセイ集『まるごとバナナが、食べきれない』 (集英社)『パジャマあるよと言われても』(マガジンハウス) など。
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