大久保佳代子のほどほどな毎日

第20回

会場の一体感に心が震える 神聖なるライブの世界

更新日:2026/05/20

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 ここ数年、ライブに行く機会が増えたような気がします。
 自分発信では行かないんだけど、周りにいる人が誘ってくれるから「じゃあ、観ておこうかな」って。
 それこそ、今年はレディー・ガガ様の東京ドーム公演も行きましたしね。
「チケットが取れましたよ‼︎」と、いとうあさこさんがサザンオールスターズのライブに誘ってくれたり、川村エミコちゃんがMrs. GREEN APPLEのライブに誘ってくれたり。

 プライベートで楽しむこともあるけれど、お仕事関係の方々から「観に来てください」と招待してもらうことも。
 これが東京ドームだとね、まずは座席に併設されている応接室みたいな小さな個室に通されるんですよ。
 で、会場が暗くなるのをそこで待ち、暗くなったら部屋から座席に出るんだけど。
 たいてい、その部屋には芸能人が集まっていてね。
 待っている時間がまあ~気まずい。

 狭い空間の中でずっとうつむいているのも変だから、挨拶はしたほうがいいのか。
 マスクをしたままだと芸能人気取りだと思われるかもしれない。
 でも、顔丸出しになるのはどうなのか……。
 そんなことを迷いながら開演時間を待ったりして。

 でも、ライブが始まればそんな迷いもあっという間に吹き飛んでね。
 芸能人席は意外と盛り上がるんですよ。
 当たり前だけど、表舞台に立つ人の気持ちがわかるから。
 拍手をしたり、歓声をあげたり、ちゃんと楽しむというか。
 スンッと気取っている人はあまりいないんです。

 だがしかし、そんな楽しい時間のあとには、これまた気まずい“ご挨拶タイム”が待っていてね。
 楽屋前にズラーッと関係者が並び、順番に本人に一言だけ挨拶していくんですけど。
 そこでも、目を凝らして知り合いを探して挨拶したほうがいいのか、逆に見ないようにしたほうがいいのか、些細なことで悩み迷い。

 スタイリストやヘアメイクがついていないプライベートでも美しい女優さんやアイドルを横目に「なんか私達、汚いね」とうつむく。
 で、段々と気まずくなってきちゃって、「急いでいるんで」と嘘をつき、途中で列を離れて帰っちゃったりして。

 あれはよくないですよ。
 ライブ後は本人も疲れているでしょうからね。
 早く休ませてあげたほうがいいですよ。
 あの制度は早々に廃止したほうがいいですよ。

 “ご招待”にはそんな気まずさがついてまわりますが、ライブ自体はやっぱり最高ですよね。
 プロフェッショナルな演出やパフォーマンスはもちろんだけど、なによりも私の胸を打つのが会場にいるファンの皆さんで。
 会場の一体感、大きな歓声、それにこたえるアーティスト……。
 ファンがアーティストを応援し、アーティストもファンを応援する、そんな素敵な時間が誰かにとっては“一生忘れられない瞬間”になったり、それを思い出すだけで頑張れたり、幸せな気持ちになれるんだろうなって。
 会場にいる一人一人のドラマにいつもグッときてしまうんだよね。

 またさ、ステージの上に立つアーティストも本当に輝いていて。
『ノンストップ!』で共演しているふっかさん(SnowManの深澤辰哉)も普段は「気のいい兄ちゃん」と思っているんだけど。
 ライブでは最高にアイドルでね。かっこよくて、可愛くて、キラキラしていて……。
 ライブ後は「観なきゃよかった」って、ちょっと後悔しましたからね。
「これから、意識しちゃうかも。もう気軽にツッコめないかも。仕事にならないかもしれない」って。

 最近は誰かに誘われてライブに行ってばかりの私ですが、自分で必死にチケットを取って行ったライブといえば、最たるものはやっぱりザ・ブルーハーツになるのかな。
 私が高校生だった頃はネットなんてないから。
 休み時間に学校を抜け出して、一番近くの公衆電話からチケットぴあに何度も電話。
 で、まんまと授業に遅れて、先生からゲンコツをくらって、反骨精神がさらに高まり、「ブルーハーツだって自由が大事だって言っているよな」と曲を聴きまくって。
「このままじゃダメだ、渥美半島にいたらダメだ」と受験勉強に打ち込み上京したっていうね。

 最後に(甲本)ヒロトが歌う姿を観たのはザ・クロマニヨンズのライブ。
 埼玉のライブハウスでもみくちゃになったときに「もう卒業かな」と。
 年齢的な辛さから離脱したのが約20年前。
 最近は参戦できていないけど、やっぱり「死ぬまでにもう一度、観たい」とは思うよね。

 森山直太朗君のライブも「もう一度、観たい」ステージのひとつ。圧倒的歌唱力といい、ひとつの物語を作り上げるようなライブの世界観といい、もうね、本当に唯一無二で素晴らしいんですよ。

 ちなみに、過去には小木夫婦が私と直太朗君をくっつけようとしていた時期があって。
 小木さんが森山家に入ったものの、一人じゃ太刀打ちできないから、もう一人外部から人を入れたいと。
 その白羽の矢が私に立ち、彼がまだ独身だった頃、何度か食事会を開催してくれたんですけど。
 私が“森山直太朗”という存在にビビりすぎちゃってね。

 最初の頃はまだ、ライブを観ていなかったから、私も気軽に話せたんだけど。
 ライブ体験後はもうダメだったよね。
 目の前にいるこの人はすごい人だと、妙に意識しちゃって、乙女出ちゃって、謎の無愛想を発症。
 小木さんの作戦は見事失敗に終わったっていうね。

 藤井風君のライブもいつか観てみたいな。
 もともと楽曲が好きで聴いてはいたんですけど。
 歌番組で気になる年上の女性を聞かれたときに私の名前を答えてくれて。
 そこから風君のことがさらに気になるようになってね。
 ただ、こないだSNSを見ていたら、風君とヒコロヒーがコントをやっている映像が流れてきて。
 それを見た瞬間、なぜだか勝手にフラれた気分に……。

 やっぱりね、神聖な音楽の世界に邪な気持ちを持ち込んだらダメですね。
 今後は邪な気持ちを捨てて、しっかり純粋な気持ちで、音楽を楽しみ続けたいと思います。

聞き手・構成/石井美輪 題字・イラスト/中村桃子

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©三山エリ

著者プロフィール

大久保佳代子(おおくぼ・かよこ)

タレント。1971年5月12日生まれ、愛知県出身。千葉大学文学部卒業。1992年、幼なじみの光浦靖子と「オアシズ」結成。「めちゃ×2イケてるッ!」でのブレイク後、バラエティ番組にとどまらず、コメンテーターや女優としても活躍している。近著にエッセイ集『まるごとバナナが、食べきれない』 (集英社)『パジャマあるよと言われても』(マガジンハウス) など。

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