大久保佳代子のほどほどな毎日

第22回

50代でマンション購入を決意。手に入れた快適な「自分のお城」

更新日:2026/07/22

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 3年前、マンションを買いました。
 「自分のモチベーションを上げるために、無理をしてでも高い家賃の家に住む」、芸人のなかにはそういう人もいるけれど、私は安心安全を選ぶタイプ。
 実際、これまで住んでいたのもこぢんまりとしたマンションで、「そんなに稼いでいるのに、ずいぶん家賃が安いところに住んでいるんですね」と驚かれることもあったりして。

 東京で一人暮らしを始めてからは、基本、6年周期で引越しをしていました。
 というのも、私は丁寧に掃除をするような人間ではないから、それくらいの時間が経つと家が汚れてくるんですよ。
 クーラーから謎のカスが出てくるようになったり、台所の換気扇が油汚れで真っ黒になったり。

 最後の賃貸物件には珍しく9年も住んでいたもんだから、その汚れ具合もMAXに。
 お風呂の鏡はウロコ汚れで真っ白になり、さらには、浴槽のエプロンの裏に広がる湯垢地獄をうっかり発見。
 その地獄を見たときに「引っ越そう」と、重い腰を上げたんですよね。

 でも、最初はマンションを買おうなんて全く思っていなくて。
 「愛犬のパコ美を預かってくれる友達のHちゃんも近所に住んでいるし、また同じエリアに引っ越すか」くらいのテンションで探し始めたんですよね。
 しかし、心惹かれる物件に全然出会えなくて。

 だったら、浴槽の裏の地獄は見なかったことにして、と。
 「このまま今の家に住み続けちゃおうかな」とすら思っていたんだけど。
 このHちゃんが物件好きのお節介な人間でね。
 頼んでもいないのに物件情報を次から次へと送ってくるわけですよ。
 そのなかに、パコ美の散歩中に見かけては「素敵だな」と思っていたマンションを見つけて、「家賃は上がるけどここならいいな」と。

 ただ、残念ながら、その部屋は1階でね。
 なんとなく安心して住めなそうな気がして諦めることにした……まさにそのときに、舞い込んできたんですよ‼︎
 「上の階の部屋が売りに出ている」という情報が‼︎

 これだけでも「え、運命?」って思うのに、さらに衝撃の事実が発覚。
 若い頃からお世話になっているプロデューサーMさんに何気なくこの話をしたら、その部屋の売り主がMさんの知り合いであることが判明。
 そこで私の中で「運命」が確定。
 基本的に腰が重く、機が熟しに熟して落ちるまで動かないこの私が、遂にマンションを購入することを決めたわけです。

 「恋愛と物件選びはよく似ている」。
 こうやって文字にすると改めて思うよね。
 運命的な巡り合いが大事なのも、周りからの「つきあっちゃいなよ♡」「あの人なら大丈夫だよ♡」なんて声が背中を押してくれるのも同じ。

 恋愛が女友達の声なら物件は不動産屋の声。
 「芸能人だとレギュラー番組の数が多いほどローンを組みやすくなるから。買うなら今ですよ」
 「売り主が知り合いだと値下げしてくれる可能性が高くなるから。チャンスですよ」
 「このマンションは有名な学校が近くにあって。引越ししてでも通わせたいと思っている人が多いから。いずれは賃貸収入ものぞめますよ」なんて、不動産屋の囁きも確実に私に勇気を届けてくれましたからね。

 買うと決めてからは、ローンの話し合いをしたり、大量の書類に目を通してはサインをしたり押印したり、会議室で売主と売買契約を結んだり……。
 これがもう、本当に大変でね。
 今まで避けて生きてきた“大人の階段”を何段かしっかり上がったような気持ちになったよね。

 で、引っ越してから約3年。
 今は「マンションを買ってよかった」と心から思っています。
 広さは1.5倍になり、人生初の床暖房も経験。
 最初は「電気代が死ぬほどかかる」という情報を耳にして使わないようにしていた床暖房だけど、その快適さを知ってしまったらもうアウト。
 冬場は朝起きてすぐに床暖房のスイッチをオン。
 「足元から温まるって勝ち組だよな」と思いながらコーヒーを飲んでいますからね。

 マンションのランクが上がったおかげで、今の部屋には他にも様々な機能が。
 ただ、そこに住む私という人間のランクは変わらないまま、ずっと貧乏性のままだから、その便利な機能を上手く使いこなすことができなくて。
 台所のシンクについているディスポーザーなるものも、いまだに意味がわからなくて使えないし。
 食洗機も信用できないから、今も頑なに人間の手で食器を洗い続けていますからね。

 マンションを買ってからの変化といえば、部屋が広くなったぶん、人を呼べるようになったことなのかな。
 その来客は「大久保さんの家で飲もうよ」って、主に島崎和歌子さんが連れてくるんですけど。
 ありがたいことに、みんな「居心地が良い」とくつろいでくれてね。
 まあ、それも主に島崎和歌子さんなんですけど。
 「帰りたくない」と騒ぐのもまた主に島崎和歌子さんでね。
 あの手この手で和歌子さんをなんとか追い出すっていうのが、最近の恒例行事になっております。

 自分でも「買ってよかった」と思うけど、周りからも「買ってよかったね」とやたら言われる。
 で、そう言ってくれる人のほとんどが口にするのが「良いタイミングで買いましたね」という言葉で。
 ここのところ都内のマンション価格が暴騰。
 私はその直前に買うことができたし、金利が上がる前に固定金利でローンを組んだから。
 どうやら、かなり得をしているらしいんだよね。

 人との縁で良物件に巡り合い、さらには良いタイミングで購入することができた私は、ある意味強運なのかもしれない。
 このあいだ、そんな話をしていたら、「虫の恩返しかもしれませんね」と言われた。
 確かに、幼い頃から道端で死んでいる虫を土に還したり、ひっくり返っているセミを救出したり。

 この間も、アスファルトの上で息たえていたカナブンを埋葬したばかり。
 今まで積み重ねてきた徳が良縁を運んできてくれたのかもしれない。
 でも、なぜそれが、恋愛でもなく、結婚でもなく、マンションだったのか……。
 その答えを探しながら、今後も、謙虚に、虫の救済活動を続けていきたいと思います(合掌)。

聞き手・構成/石井美輪 題字・イラスト/中村桃子

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©三山エリ

著者プロフィール

大久保佳代子(おおくぼ・かよこ)

タレント。1971年5月12日生まれ、愛知県出身。千葉大学文学部卒業。1992年、幼なじみの光浦靖子と「オアシズ」結成。「めちゃ×2イケてるッ!」でのブレイク後、バラエティ番組にとどまらず、コメンテーターや女優としても活躍している。近著にエッセイ集『まるごとバナナが、食べきれない』 (集英社)『パジャマあるよと言われても』(マガジンハウス) など。

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