宇宙作家・村沢譲と宇宙好き漫画家・エミ先生の楽しい宇宙講座です。予備知識は一切不要!
今回の話題は、「星占いの星座と夜空の星座は、ちがうって本当?」

第7回
星占いは信じられる?
更新日:2025/03/12
- 星座を考えたのは誰?
-
夜空に輝く星を線でつないで形づくられている星座。
星座の起源は、よくわかっていませんが、もっとも古くから天体の動きを観測し、記録する天体観測が行われていたのは、チグリス川とユーフラテス川に挟まれた古代メソポタミア(現在のイラク周辺)でした。
紀元前3000年頃、メソポタミアに住んでいたシュメール人によって世界最古の都市国家が生まれました。そこでは天体の動きが地上の出来事に関係していると考えられ、神殿で神官たちが星、太陽、月、惑星の動きから、収穫や戦争など、国家や王の運命を占っていました。これが星占いの起源だと考えられています。
昔の人たちは、夜空のすべての星が、ひとつの球面に張りついていると考えていました。この球面を「天球」といいます。これは見かけ上のもので、まちがいだと後にわかりましたが、天体の位置や動きを表すときに便利なので、今でも使われています。
天球上の星と星を線で結べば、星の配置を覚えやすくなり、1年を通じた星の動きもわかりやすくなります。こうして星座が考え出されていきました。
メソポタミアの天体観測や星座の知識は、やがてギリシャに伝わり、こんにちの星座の原型になっていきました。
星座は、時代や地域によっていろいろなものがありましたが、1928年に国際天文学連合が、乱立していた星座を整理して、現在では88の星座と名称が決められています。
- 星占いの星座と夜空の星座のちがい
-
私たちにもっとも身近なのは、星占いの12星座でしょう。
この星占いで使われている、おひつじ座、おうし座、ふたご座、かに座、しし座、おとめ座、てんびん座、さそり座、いて座、やぎ座、みずがめ座、うお座の12星座を「黄道(こうどう)十二星座」と呼びます。
「黄道」とは、なんでしょうか。地球上から1年間の太陽の動きを見ていると、同じ時刻に見える太陽は、毎日少しずつ天球を西から東へと移動していき、1年で1周し、元に戻るように見えます。これは、私たちがいる地球が太陽の周りを回っていることで起こる、見かけ上の動きです。
この天球上の太陽の通り道を「黄道」といいます。
太陽の通り道である黄道に沿って、季節ごとの目印として考え出されたのが、「黄道十二星座」です。
この12星座の起源は星座の中でももっとも古く、古代メソポタミアの神官たちによって定められたといわれています。
星占いの星座は、実際の星座とは、同じものではありません。
一般に「○○座生まれ」という場合、その人が生まれたときに太陽が位置していた星座を意味しています。たとえば5月22日から6月21日に生まれた人は、その間、太陽が「ふたご座」を通過しているので「ふたご座」生まれ、というわけです。
星占いで使われている12星座は、正しくは「黄道十二宮(きゅう)」といいます。
黄道十二宮とは、太陽が春分の日(3月20日か21日)にある位置(春分点)を起点として、黄道に沿って1周360度を、30度ずつ12等分したものです。
太陽は、ひとつひとつの宮を、それぞれ約1カ月かけて移動します。
黄道十二宮は、それぞれ白羊(はくよう)宮、金牛(きんぎゅう)宮、双子(そうし)宮、巨蟹(きょかい)宮、獅子宮、処女宮、天秤(てんびん)宮、天蠍(てんかつ)宮、人馬(じんば)宮、麿羯(まかつ)宮、宝瓶(ほうへい)宮、双魚(そうぎょ)宮と呼ばれています。
これらの宮は、「白羊宮→おひつじ座」、「金牛宮→おうし座」など、それぞれ12星座に対応しています。
しかし12宮と12星座には、さまざまな違いがあります。
まず、12宮は黄道を12等分したものですが、12星座には、大きなものも小さなものもあり、実際に太陽がその星座の中を通過する期間もまちまちです。
また地球の自転や公転は常に一定ではなく、太陽や月、惑星の引力によって、コマが回るときに首を振るような運動をしています。この運動を「歳差(さいさ)運動」といいます。
歳差運動によって、地球の地軸の向きは少しずつ変化していき、長い時間のうちに春分点の位置もずれていっています。
春分点は、12星座や12宮の起点です。今から何千年も前の12星座が考え出された頃は、春分点は、おひつじ座にありましたが、現在では地球の歳差運動によって、うお座にずれています。
12宮と太陽が位置している星座は全体的にずれており、「私の誕生日は○月△日だから××座」という場合でも、実際に太陽が位置しているのは、その隣の星座ということが多いのです。
この地軸のぶれは、約2万6000年で元に戻るので、春分点が再びおひつじ座に戻ってくるのは、約2万年後のことです。
また黄道に沿って存在している星座は、12星座以外にもうひとつあります。
それが「へびつかい座」です。
88の星座が決められ、星座と星座の境界線がはっきりすると、黄道がへびつかい座の一部を通っていることがわかりました。当時はあまり気にされていなかったのですが、天文学的にいえば、厳密には「黄道十三星座」が正しいことになります。
星占いには、へびつかい座を入れて占うものもあります。
このように天文学と似た星座を扱っているけれど、実際の星座や天体の動きと星占いとでは違うところがあるのです。 -
(写真:田中重樹/アフロ)
冬の代表的星座オリオン座。左上の星がベテルギウス。
- 星座も永遠ではない
-
星座も未来永劫、不変のものではありません。
昔、星は「天球」に張りついているもので、星座を形づくっている星の位置関係は、永遠に変わらないと考えられていました。
つまり、地球から星までの距離は、すべて同じだと考えられていたのです。
しかし、実際には星には遠いものも近いものもあり、しかもそれぞれがバラバラの方向に動いていることがわかっています。
星座は、現在の地球から見て、たまたまその形に見えるというだけのことなのです。
星は非常に遠くにあるので、数十年や数百年では、星座の形はほとんど変わりませんが、数万年後、数十万年後には、その姿を変えてしまいます。
たとえば北斗七星の場合、両端の星を除く5つの星は、地球から同じような距離にあり、同じ方向に動いています。
しかし両端の星はもっと遠くにあって、別々の方向に動いています。そのため、数万年後には現在の形ではなくなっています。
数十万年後に星空ガイドがあるとすれば、現在とはずいぶんと違った星座が書きこまれていることでしょう。
星座を形づくる星そのものが、なくなってしまうこともあります。
冬の代表的な星座であるオリオン座、ギリシャ神話の狩人オリオンの肩で、赤く輝くのがベテルギウスです。
ベテルギウスのように赤く輝く星は、年老いた星です。ベテルギウスは近年、急激に暗くなったり、いびつに変型したりする様子が観測され、最期が近づいているのではないかといわれています。
ベテルギウスのように太陽の約700~1000倍もあるような大きさの星が最期を迎えると、超新星爆発という大爆発を起こします。
ベテルギウスが超新星爆発を起こせば、夜空では半月ほどの明るさで輝き、昼間でも見えるようになるでしょう。その輝きは数カ月間続きますが、徐々に暗くなって見えなくなっていきます。そしてひとつの星が失われたことによって、星座の形が変わってしまうことになります。
数万年後、数十万年後というはるか未来のこととはいえ、星座も永遠ではなく、その姿を変えていくのです。
バックナンバー
- 著者プロフィール
-
村沢譲(むらさわ ゆずる)
青山学院大学卒業。ライター、作家。宇宙関連の著作の他、JAXAウェブページのインタビュー記事や「オデッセイ」「宇宙兄弟」など宇宙を舞台にした映画の解説を執筆。主な著作に『宇宙を仕事にしよう!』(河出書房新社)、『世界一わかりやすいロケットのはなし』(KADOKAWA)、『月への招待状』(インプレスジャパン)などがある。
-
高田エミ(たかだ えみ)
1963年生まれ。北海道出身。漫画家。1982年「りぼんオリジナル早春の号」(集英社)に掲載の「スーパー☆レディ」でデビュー。以後、少女漫画雑誌「りぼん」で長く連載を続ける。代表作に「ねこ・ねこ・幻想曲(ファンタジア)」「ジェニファー」他。子供の頃から大の星好きで、星の図鑑や星座盤を片手に、よく夜空を見上げていた。