宇宙作家・村沢譲と星が大好きな漫画家・エミ先生の楽しい宇宙講座です。予備知識は一切不要!
今回の話題は、「私たち地球人は、宇宙人と出会えるか?」
第2回
宇宙人はどこにいる?
更新日:2024/10/09
将来、人類の活動領域を火星へ拡大した場合のイメージ図 ©JAXA
- 宇宙人にあてたメッセージ
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2017年に実施された世界的な調査によると、24カ国の2万6000人以上の回答者のうち約半数が「宇宙には知的生命の文明が存在すると信じている」と答えたといいます。
そもそも宇宙人とはなんでしょうか? 私たちが住んでいる地球以外の天体、惑星や衛星などに存在している生命を「地球外生命」といいます。その中で、人間と同じように知性を持つ生命を「地球外知的生命」といいます。他の天体から地球にやって来ている宇宙人がいるとしたら、地球外知的生命です。
「世界中でたくさんのUFOが目撃されているのだから、いるに決まっている」と考えている人もいるでしょう。確かにUFOは存在しています。しかしUFOとは「Unidentified Flying Object(未確認飛行物体)」という意味で、それが「宇宙人の乗り物である」というのとは別の問題です。2023年に発表されたNASA(アメリカ航空宇宙局)の報告書では、正体不明の現象の多くは「気球や航空機、自然現象など地球上の現象」として説明できる、としています。
では、科学者たちは宇宙人の存在を信じていないのでしょうか。そんなことはありません。1974年には、天文学者のフランク・ドレイクやカール・セーガンなどが中心となって、プエルトリコにあるアレシボ天文台から、ヘルクレス座球状星団という天体に向けて太陽系の絵などを含むメッセージが送信されました(アレシボ・メッセージ)。その後も、宇宙人に向けてメッセージを送る試みは何度か行われています。
また1960年代からは、宇宙からやって来る電波を大きなアンテナでとらえて解析し、文明を持った宇宙人からの信号を見つけようというSETI(Search for Extra-Terrestrial Intelligence 地球外知的生命体探査)という試みも行われています。しかし、宇宙人が発信した電波だと確認できたものは、まだありません。
宇宙人へのメッセージとして1972、73年に打ち上げられたNASAの探査機パイオニア10号・11号には地球のさまざまな情報を記録した金属プレートが、1977年に打ち上げられた同じくNASAの探査機ボイジャー1号・2号には,地球上の言葉、音楽、画像などを記録したゴールデンレコードが搭載されています。ただし探査機が太陽系を飛び出して他の星の近くまで行くには、数万年かかるといわれています。
- 宇宙人はどこにいる?
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生命が誕生するには、液体の水、体をつくるたんぱく質の材料となる有機化合物、エネルギーの3つが必要です。
古くから、太陽系で地球以外に生命がいるとすれば、火星だと考えられてきました。火星は、地球のひとつ外側を公転している、地球と同じように、おもに岩石でできた惑星です。
1877年、大接近した火星を観測していたイタリアの天文学者スキャパレリは、火星の表面にいくつもの筋を発見し、その筋を溝か水路だと考え、イタリア語で「溝」を意味する「カナリ(canali)」と名づけました。ところが英語では「カナリ」が「canals(運河)」と翻訳されたため「火星には、大規模な土木工事によって運河を建設できる文明が存在している」と解釈されることになりました。中でもアメリカの天文学者ローウェルは、アリゾナ州に天文台を作り、「火星には高度な文明社会が存在している」という説を広めていきました。 -
しかし、1960年代になってソ連(現在のロシア)やアメリカの探査機が送り込まれ、火星の様子がわかってくると、火星の表面は多くのクレーター(隕石の衝突痕)に覆われ、乾燥した不毛の土地であることが明らかになってきました。火星人も高度な文明も存在しなかったのです。
現在、火星には、NASA(アメリカ航空宇宙局)や欧州宇宙機関(ESA)、インド、UAE、中国など数々の探査機が送り込まれ、探査が続けられています。不毛の土地である火星でなぜ探査が続けられているのかというと、数十億年前、火星には海や川があったと考えられているからです。火星にかつて豊富な水があったのなら、原始的な生命が誕生していたかもしれません。まだ火星で生命は発見されていませんが、火星の地下に水があれば、微生物が生きている可能性があります。
2024年7月、NASAは、火星探査車「パーシビアランス」が、数十億年前、火星の表面に液体の水があった頃、微生物がエネルギー源としていた可能性がある化学物質を発見した、と発表しました。これが確かなら、初めて地球外生命の存在を裏づける発見になります。NASAとESAは、2030年代に「パーシビアランス」が採取した試料を地球に持ち帰る「マーズ・サンプル・リターン(MSR)」を計画しており、地球に届いた試料の詳細な分析を行う予定になっています。
太陽系には、他にも生命の存在する可能性がある場所がいくつかあります。
そのひとつ、木星の衛星エウロパは、表面は厚い氷に覆われていますが、その下には液体の水の海があると考えられています。氷の下の海には生命がいるかもしれません。
また土星の衛星エンケラドゥスは、探査機「カッシーニ」によって厚い氷に覆われた表面の「タイガーストライプ」と呼ばれる割れ目から大量の水蒸気や氷の粒、有機化合物が噴き出しているのが観測されています。厚さ30~40㎞に達する氷の下には液体の海があると見られており、エンケラドゥスから噴き出した水蒸気には、熱、液体の水、有機物という生命誕生に必要な要素が揃っているため、生命がいるかもしれないと考えられているのです。
土星最大の衛星タイタンの表面には、湖や川があることがわかっています。ただしタイタンの表面温度はマイナス180℃前後なので、液体の水は存在せず、あるのはエタンやメタンといったマイナス180℃でも凍らない有機化合物の湖や川です。タイタンは、エタンやメタンを豊富に含む濃い大気を持っており、内部にも海がある可能性があることから、生命が誕生しているかもしれません。
このように太陽系には、地球外生命がいそうな場所がいくつかありますが、残念ながら、高度な文明を持つ宇宙人がいる可能性はなさそうです。
- 地球外生命発見の期待が高まる系外惑星
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太陽系がダメなら、その外に目を向けてみましょう。
太陽のような星(恒星)は、私たちの銀河系の中に約2000億個もあるといわれ、それぞれの星の周りを惑星が回っています。そのどこかに生命が存在していても不思議ではありません。
太陽以外の恒星を回っている惑星を「太陽系外惑星(系外惑星)」といいます。系外惑星は、1995年に初めてその存在が確認され、NASAによれば、2024年8月現在、5700個以上が見つかっています。
最初は、木星のようなガスでできた惑星が、恒星のすぐ近くを回っている「ホット・ジュピター」、彗星のような細長い楕円軌道を描く「エキセントリック・プラネット」など、太陽系の惑星とは大きく違ったものが見つかっていました。しかしその後、地球よりやや大きい「スーパーアース」、地球サイズの「アース」といった、岩石でできた地球型惑星も見つかっています。
生命が存在するのに必要なのは、まず液体の水です。恒星から惑星までの距離が近すぎると水は蒸発してしまい、遠すぎると凍ってしまいます。恒星からの距離がちょうどよく、水が液体の状態で存在でき、生命の生存に適した惑星の軌道の領域を「ハビタブルゾーン(生命居住可能領域)」といいます。現在は、地球外生命を探して、ハビタブルゾーン内にある「スーパーアース」「アース」といった系外惑星の観測が続けられています。その中には、想像もつかないような生命や、地球人のように知性を持った生命が住む惑星が、見つかるかもしれません。
私たち地球人は、まだ地球外生命に出会っていません。
しかし、ある日突然、宇宙人からメッセージが届いて、世界中がビックリ! なんてことが起こるかもしれません。それは、私たち地球人も、他の星に住む宇宙人に向けて行っていることで、驚くべきことではないのかもしれません。
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- 著者プロフィール
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村沢譲(むらさわ ゆずる)
青山学院大学卒業。ライター、作家。宇宙関連の著作の他、JAXAウェブページのインタビュー記事や「オデッセイ」「宇宙兄弟」など宇宙を舞台にした映画の解説を執筆。主な著作に『宇宙を仕事にしよう!』(河出書房新社)、『世界一わかりやすいロケットのはなし』(KADOKAWA)、『月への招待状』(インプレスジャパン)などがある。
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高田エミ(たかだ えみ)
1963年生まれ。北海道出身。漫画家。1982年「りぼんオリジナル早春の号」(集英社)に掲載の「スーパー☆レディ」でデビュー。以後、少女漫画雑誌「りぼん」で長く連載を続ける。代表作に「ねこ・ねこ・幻想曲(ファンタジア)」「ジェニファー」他。子供の頃から大の星好きで、星の図鑑や星座盤を片手に、よく夜空を見上げていた。