まるごとバナナが、食べきれない 大久保佳代子

第6回

四十路の恋と後悔と

(『Marisol』2021年10月号掲載)

更新日:2022/10/26

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―女が変化し分岐点を迎える、私の40代が詰まった連載―

 エッセイの連載がスタートしたのは私が42歳の頃。50歳までの約8年間、40代を共に歩んだ存在でもありました。

 ガムシャラに突き進む時期を経て、勢いだけでは乗り越えられない壁や老いにもぶち当たる40代は、女性が大きく変わる世代。
 振り返ると、私自身にも沢山の変化がありました。
 他人の結婚式の披露宴では常に泥酔。駅のホームで一人、引き出物の巨大な鯛の形のアップルパイにかじり付いた夜も。

 元気な頃は酒量も多ければ酔い方も酷くてねぇ。
 そんな酒の力を借りて男にジワジワとアプローチするのが当時の私の恋愛攻略法だったのに、今ではすっかりお酒も弱くなっちゃって。
 呑まない、酔わない、自分を見失わない。おかげで何も始まらない。気付けば、恋愛から遠のくばかりの日々。

 40代、男性の好みもだいぶ変わりました。
「麻薬のような危険な男が好き」と言っていた私はどこへやら。
 今の私が求めるのはとにかく健康な男。もうね、体力は衰えるばかりだし、関節も痛いし、自分のことで精一杯。
 危険な男に振り回される余裕なんて、大人の女にはありませんからね。
 
 私にとって、40代は人生の分岐点でもあったと思います。
 というのも、私の最後の恋愛は40代前半で。たまに思うんですよ。あそこで一発逆転を決めていれば、結婚していたかもしれないし、子どももいたかもしれないなって。
 40代はまだそんなラストチャンスが残されているんですよね。
 でも、私はそのチャンスを摑もうとしなかった。仕事も楽しかったし、変なプライドもあったしね。それを50歳になった私は少し後悔している。「あそこでもう少し足掻けばよかったな」と……。
 全ては自分が選んだこと。一人で生きている今の自分は「しょうがないよね」と受け入れています。

 そんな私を〝独身の星〟と言ってくれる人もいる。
 確かに、一人は気楽で楽しいこともある。しかし、私は言いたい、ここで言いたい。一人はしんどくて辛いこともあるんだよと。
 仕事が早く終わった日、その後に訪れる長い夜が怖くて。一人でモスバーガーに寄り、オニポテをつまみつつ「今日も若いマネージャーに強くあたってしまったな」と反省しながら時間を潰すこともあるし。
 休みの日も暇を持て余して、さほど興味のない「恋愛リアリティーショー」なるものを〝無〟の感情で長時間見続けたり……。
 辛いでしょ、しんどいでしょ、怖いでしょ~‼
 
 年齢を重ねるたびに、足掻く気力も体力もどんどん減っていくのが現実。
 また、性欲も徐々に減少傾向に。性的衝動に突き動かされ恋愛をしてきた私としては「どこから恋愛を始めたらいいのか」わからなくなっているのもリアルな本音。

 50歳になっても訪れる変化に戸惑うこともありますが、私がひとつ心がけているのが「ここで終わりだ」とは思わないようにすること。
 ラストチャンスは逃したかもしれないけれど、一人で生きていくと決めたわけでもない。
 この先、カタチの違う幸せに出会うことだってあるかもしれない。
 諦めたらそこで試合終了。『スラムダンク』にもそんなセリフがあるじゃないですか。って、一度も読んだことないんだけどね(笑)。

文/石井美輪

まるごとバナナが、食べきれない

大久保 佳代子

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©三山エリ

著者プロフィール

大久保 佳代子 (おおくぼ かよこ)

1971年5月12日生まれ、愛知県出身。千葉大学文学部卒業。幼なじみの光浦靖子と「オアシズ」を結成。『めちゃ×2 イケてるッ!』でのブレイク後、数多くのバラエティ番組などで活躍中。

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