まるごとバナナが、食べきれない
大久保 佳代子
第1回
冷水をぶっかけて取り戻したい、女の鮮度と賞味期限
(『Marisol』2020年4月号掲載・単行本未収録)
更新日:2022/10/26
一人暮らしをしていると、困るのが食材の賞味期限。
家族でもいれば使い切れるんだろうけど、一人だと食ベ切れないから、どうしても余っちゃうから。
冷蔵庫の中に賞味期限切れの食材が増え始めると気持ちがソワソワと無性に焦り始め。まあ、一人だし「お腹を壊したらどうしよう」と心配する家族もいないし。結果、普通に食べちゃうんだけど。
「賞味と消費の期限は違う」と自分に言い聞かせながら。
台所で「腐りつつあるヤツらをどう料理してくれよう」と考える。それはワクワクする瞬間でもあります。
最近はね、賞味期限切れの納豆とカットされてパックに入ったネギをやっつけてやりました。ネギに関してはクターッと水っぽくなっちゃって、危険な香りを放ち始めていたんだけど「火を通せばどうにかなるだろう」と。臆することなく、これまた賞味期限が迫った卵で包んで一気に焼いてやりました。
たいていのものは卵でとじればどうにかなりますからね。
今まで、腹痛で病院のお世話になったのはインドを訪れた時だけ。
強靭な胃腸を持つ私が「イケるかどうか」の判断基準にしているのがニオイ。酸っぱいニオイがしたり、嗅覚で危険を察知するようであればアウト。
あと、私くらいのレベルになると手触りで判断できるようにも。
手で触って粘り気があるかどうか……スーパーで数日前に買ったお惣菜とか、主に指先で確認していますからね、職人のように(笑)。
食材の賞味期限は明確に記されているけれど、女の賞味期限は不明確。
40歳と言う人もいれば、45歳だと言う人も、それは人それぞれ。
個人的には性欲に心が動かなくなり、もういいやと諦め始めた時、賞味期限へのスピードが加速するような気がします。
今の私がまさにそれ。残された時間は3年くらいでしょうか……。
だがしかし、それも全ては自分次第。諦めたらそこで終わりだけれど、延ばそうと思えば延ばせると思うんですよ。
女の鮮度を保つ秘訣は気力です。
重い腰を上げて白髪を染める、スキンケアやダイエットに力を入れる、気力次第で賞味期限を延ばすことはできる。
40代女子の鮮度を例えるならば、冷蔵庫の中でしおれかけている野菜。
まだ腐りきってはいない、冷水にさらせばシャキッと鮮度を取り戻すことができる、大丈夫、今ならきっとまだ間に合う!!
できることなら、気力と努力という名の冷水を自分で必死に浴びるよりも、目の前に素敵な男性が現れて、〝愛〟という名の冷水をバシャバシャとぶっかけてくれればいいのにと願う……。
そのほうが、女性ホルモンで肌が艶々になり、骨盤もキュッと締まり、一気に生き返ると思うんですけどね。
冷蔵庫でたまに見かける、腐って溶けて「これ、なんだっけ?」状態になった野菜達。そうなる前に……まだ女の原型をとどめている今のうちに……。
かくいう私も最近は自分に冷水を与えるようになりました。
そのひとつが、朝起きたボサポサの状態で床においた鏡を覗き込むという作業です。すると、恐ろしいほどのおばあさんが鏡の中に現れるっていう。
寝起きのブス効果と重力が教えてくれる今の自分のリアルな現実。それを目にすれば、あまりの恐ろしさに間違いなく「このままじゃまずい‼︎」「何かしなければ‼︎」とやる気が起きてきますから。
恐怖とという名の冷水も、なかなかオススメですよ♡
野菜も女も冷水をぶっかければシャキッとする。最近は私も自分の心を引き締めるべく、お風呂上りにクリームを身体中に塗り込んでいますからね。その作業がまた「女としてまだイケる」という気持ちにさせてくれるから、不思議よね。冷蔵庫でしおれかけた野菜。それが40代のリアルな現実。
文/石井美輪
バックナンバー
©三山エリ
大久保 佳代子 (おおくぼ かよこ)
1971年5月12日生まれ、愛知県出身。千葉大学文学部卒業。幼なじみの光浦靖子と「オアシズ」を結成。『めちゃ×2 イケてるッ!』でのブレイク後、数多くのバラエティ番組などで活躍中。
本ホームページに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
(c)SHUEISHA Inc. All rights reserved.