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Photo Essay 惑星巡礼 角幡唯介

新しいテント

更新日:2026/07/22

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 今年のグリーンランドの旅では新しいテントを用意した。
 いままでは本体の生地にポールをさしこんで立てる、自立式のドーム型テントを使っていた。極地旅行用に特別に設計したものではあるが、型としては登山で一般的に使われるものとおなじだ。風にも強いし、それなりに広く、基本的に不満はなかったのだが、普段は地べたに直接座るので2カ月近く犬橇(いぬぞり)で旅をしているとどうしても疲れが出てくる。
 そこで今年はイヌイットの人たちがつかう住居型のテントを新調してみることにした。このテントの特徴は橇のうえに立てることで、寝るときは橇をベッドとして使い、また長イスのように橇のうえに腰をかけてすごすことができる。これまでイヌイットの友人と旅をしたときに何度か泊まったが、その快適さには驚かされたものだ。
 テントを立てるたびに橇のうえの荷物を全部どかさないといけないことや、隙間風がはいるので家で使うような灯油式ストーブがないと寒いことなど、デメリットも多く、これまで躊躇っていたが、ものは試しということで、いつも世話になっているM社に依頼して作ってもらった。
 これが思った以上に良い。本番となる春の長期旅行で使用したが、地べたに座らずに橇のうえに腰かけられるため、とにかく疲れが溜まらない。食料を入れているアルミの箱をテーブル代わりにすれば、テントというよりちょっとした小屋で過ごす感じだ。慣れたら立てたり撤収したりするのも思っていたほど時間がかからない。トウという氷を砕くための鉄の棒をポール代わりにするので、持っていくのはテントの生地だけでよく軽量でもある。今年の旅は約50日におよび、歩いて後ろから橇を押すことも多かった。肉体的にはいつもよりハードだったが疲労の蓄積が少なかったのはテントのおかげだと思う。
 ただ今回のテントはあくまで試作品。生地がうすくて寒気が入りこむなど改善すべき点も多かった。また強風に耐えられるかどうかが心配だったが、幸か不幸か今回の旅ではそれほど強い風が吹くことがなく、その点は未知数である。ともかく来年は改善点を修正した完成版のテントでまた旅に出たい。新しい装備が手に入ると旅のモチベーションが高まるのは不思議なものだ。

著者情報

角幡唯介(かくはた・ゆうすけ)

1976年北海道芦別市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、同大探検部OB。2010年『空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む』(集英社)で第8回開高健ノンフィクション賞、11年同作品で第45回大宅壮一ノンフィクション賞、第1回梅棹忠夫・山と探検文学賞。12年『雪男は向こうからやって来た』(集英社)で第31回新田次郎文学賞。13年『アグルーカの行方 129人全員死亡、フランクリン隊が見た北極』(集英社)で第35回講談社ノンフィクション賞。15年『探検家の日々本本』(幻冬舎)で毎日出版文化賞書評賞。

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