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Photo Essay 惑星巡礼 角幡唯介

やっぱり中華が一番

更新日:2024/12/11

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 明日から狩猟で1カ月ほど北海道に行かなければならない10月某日、今日の夕食は餃子にしようと妻から言われた。
 餃子をやるときはいつも大量に作って冷凍庫で保存するのが、わが家の慣わしであるが、一人だと2歳半の息子にちょっかいを出されて作りにくい。私が出発する前に大量に作り置きして備えておきたいのだという。
 息子の旅人の大好物は餃子とラーメン、チャーハンである。乳離れする前は食が細くてなかなか食事が進まなかったが、この3つだけは別でむしゃむしゃ食べる。畢竟(ひっきょう)、わが家の食卓、とくに昼食は餃子、ラーメン、チャーハンが中心となった。そのためにも餃子を用意しておかないといけない。
 私のほうはちょうど麻婆豆腐を食べたいところだったので、じゃあ中華パーティーにしようということになり、分担して調理をはじめた。私の担当は餃子のタネ作りと麻婆である。いつもは豚のひき肉にニラとキャベツ、あとはニンニク、生姜を入れるだけだが、今回はそれに玉ねぎを加えてみた。前に余った鶏のひき肉と玉ねぎを妻が餃子にしたところ、予想外に旨かったからだ。塩、コショウ、醤油にガラスープとラードを加えてタネは完成。妻がそれを次々と皮につつんでゆく。
 麻婆豆腐のほうは豆鼓醤、豆板醤、ラー油、ごま油等々でじっくり煮込んだ本格四川風である。私たち夫婦は昔から四川料理が大好物で、子供ができる前は池袋西口にたちならぶ中華料理店を何軒も回った。デートといえば池袋中華が定番、というかそこしか行ったことがなかった。娘ができてからはすっかり足が遠のいていたが、その娘も10歳となって徐々に辛いものを食べられるようになり、最近は家でよく麻婆系料理を作る。
 出来栄えのほうは、麻婆豆腐は合格点。まあレシピを見て作っているので基本間違いはない。娘も「ちょっと辛いけど味は美味しい」と一皿完食した。餃子のほうはというと、予想以上の旨さ。思ったとおり玉ねぎの甘味と肉汁がじゅわっと染みだし、味に深みが増している。息子の旅人も大判餃子をパクパクと口に入れて、破裂しそうなほど腹が膨張している。これからしばらく玉ねぎ餃子がわが家の定番になりそうだ。

著者情報

角幡唯介(かくはた・ゆうすけ)

1976年北海道芦別市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、同大探検部OB。2010年『空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む』(集英社)で第8回開高健ノンフィクション賞、11年同作品で第45回大宅壮一ノンフィクション賞、第1回梅棹忠夫・山と探検文学賞。12年『雪男は向こうからやって来た』(集英社)で第31回新田次郎文学賞。13年『アグルーカの行方 129人全員死亡、フランクリン隊が見た北極』(集英社)で第35回講談社ノンフィクション賞。15年『探検家の日々本本』(幻冬舎)で毎日出版文化賞書評賞。

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