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Photo Essay 惑星巡礼 角幡唯介

仕事ができない夏の苛立ち

更新日:2024/09/25

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 犬橇をはじめてから、1月上旬から6月上旬の5カ月間はシオラパルクに滞在するため、執筆の時間はほとんどない。旅や登山の費用および家族が生活するための収入は、基本的に日本滞在中の7カ月間にどれぐらい執筆できるかにかかっている。なので、夏の間は頑張って書くぞ! といつも気合をいれるのだが、夏は夏で色々と忙しくて結局、満足に仕事の時間を確保できないのである。
 忙しい理由は子供たちの遊びや習い事に巻き込まれるからである。
 なかんずく今年の夏はすごい。7月下旬に小学校が夏休みになると、小学5年生の長女は理性のタガが外れたかのように遊びまくっている。私と登山に出たことは前回記したが、そのほかの日は熱中症アラートなどどこ吹く風で、連日友達とプールに出かけ、海で遊び、花火をし、お泊り会に出かける。休憩日は一切なし。1時間の空き時間があればじっとしていられず友達とラインで連絡をとりあい、またプールに出かけるという日々で、それ以外は習字にダンスに体操と習い事で埋まっている。
 もう小学5年生なのだから勝手に遊ばせておけばいいと思うかもしれないが、そうもいかない。子供たちだけで海で遊ぶのは危険なので、海水浴には親が同伴しなければいけないし、習い事の大会があれば会場まで付き添わないといけない。鎌倉という土地柄、親戚の子供が海に遊びに来ることもある。さらに2歳の長男はかわいい盛りで、晴れて天気のよい日は私自身がじっとしていられず、ついつい子供を海だの公園だのに連れ出し、また一日がつぶれてしまう。そして夜は疲れ果てて子供と一緒に眠りこける。
 明日からは東北の朝日連峰に10日間ほど沢登りに出かけ、月末は去年ぎっくり腰で流れた家族旅行をぜひとも実現させたい。そしてあともう1回、娘と沢登りに出かけたい。
 欲張りな私はその瞬間の夏を全力で楽しみたいという衝動に抗えないのである。
 もう執筆なんかどうでもいいわ!

著者情報

角幡唯介(かくはた・ゆうすけ)

1976年北海道芦別市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、同大探検部OB。2010年『空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む』(集英社)で第8回開高健ノンフィクション賞、11年同作品で第45回大宅壮一ノンフィクション賞、第1回梅棹忠夫・山と探検文学賞。12年『雪男は向こうからやって来た』(集英社)で第31回新田次郎文学賞。13年『アグルーカの行方 129人全員死亡、フランクリン隊が見た北極』(集英社)で第35回講談社ノンフィクション賞。15年『探検家の日々本本』(幻冬舎)で毎日出版文化賞書評賞。

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