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Photo Essay 惑星巡礼 角幡唯介

初の狩猟山旅

更新日:2023/12/27

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 北海道が狩猟解禁となり、友人と日高の奥山にむかった。
 日本での狩猟初年度となる昨年は鹿を獲るだけで精一杯で、鉄砲担いで山旅をするほどの余裕も実力もなかった。しかし十月と十一月の二度、北海道に行き、山中にベースキャンプを設けて、のべ二十日近く山のなかをうろうろするうち、鹿がどのような場所にいつく傾向があるのか、なんとなくわかるようになった。そして二度の出猟で鹿六頭、羆(ひぐま)一頭を獲った。
 思った以上の数の獲物がとれたこともあり、今年は行けばおそらく獲れるだろうという自信があった。そこで今回はベースキャンプ方式ではなく、鹿を獲りながら広い山域を旅することにした。
 日高の奥山は想像以上に鹿の数が多く、狩猟者がほとんど来ないことから里山の鹿より擦れてない感じがした。林道の脇でのんびり草をはむ雄鹿は、われわれに気づいてもじっと見るばかりで、逃げようともしない。雌鹿など、去年はピーピー喚いて散々逃げられたが、今年は容易に獲れる。牧場のなかで狩りをしているようで、むしろ獲物を探す面白味に欠けるほどだった。
 それでも、狩猟しながらの山旅とはこういうものかと、いい経験になった。鉄砲と鹿肉で荷物は想像以上に重くなり、今回は足回りも登山靴だったのでルートはかぎられた。日高は登山道はほとんどなく、沢が登路となる場合が多いのだが、この装備で沢登りはきつい。そのため、今回は林道歩き主体となったが、林道歩きはただつらいだけなので、次に来るときはラバーグリップの靴底を採用した専用の沢靴で動くのがいいかもしれない。

著者情報

角幡唯介(かくはた・ゆうすけ)

1976年北海道芦別市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、同大探検部OB。2010年『空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む』(集英社)で第8回開高健ノンフィクション賞、11年同作品で第45回大宅壮一ノンフィクション賞、第1回梅棹忠夫・山と探検文学賞。12年『雪男は向こうからやって来た』(集英社)で第31回新田次郎文学賞。13年『アグルーカの行方 129人全員死亡、フランクリン隊が見た北極』(集英社)で第35回講談社ノンフィクション賞。15年『探検家の日々本本』(幻冬舎)で毎日出版文化賞書評賞。

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