
第1回
ごあいさつ
更新日:2026/06/17
53歳。「元祖・山ガール」イラストレーターの鈴木みきです。
これまで「元祖・山ガール」と自称したことはありませんが、憶えているでしょうか、かれこれ16、7年前、登山をはじめる若い女性(=山ガール)が山にも街にも湧き流行語にもなりました。当時私は登山専門誌で働く登山歴10年オーバーの30代後半、「山ガール」が瞬く間にブームになっていく様を驚き半分、嬉しさ半分で終始渦中から目撃したひとりです。
それまで登山は中高年の趣味。山に行ってもアウトドア業界にも圧倒的に男性が多い世界でした。そのなかで数少ない「山に登れる女性の書き手」だった私は、すぐさま「山ガール」にベンチ入り、ブームに乗って妙に忙しくなったわけですが、年齢的に明らかに「ガール」ではないし、突如カラフルになった登山ウェアも似合わないし、そう呼ばれることに多少の抵抗を感じていました。
しかし齢50を過ぎた今、なんということでしょう、久々に、今回タイトルにこのような肩書きを付けていただくことになったら意外に平気。むしろ、ネタみたいで面白いかも?なんて。にしても、ありがたいことですよね。あのブームのおかげで、今もこうしてお仕事を続けさせてもらっていますもの。
一方「元祖」に関しては、日本の登山史を切り拓いてきた諸先輩方や、当時ブームを駆け抜けた仲間たちを知っているだけに身に余りますが、「元・山ガール」だと今は山を登っていない感じになっちゃうし、「山・元ガール」ってのも侘しい……。ここは平成の「山ガールブーム」に限って、言ったもん勝ちということで「元祖」を名乗らせていただきますこと、とくに登山をしている方々、ご了承ください。すみません、ありがとう。
肩書きだけでこんなに言い訳がましいのは年代的なこともあるかもしれません。
「中堅」から「ベテラン」に移行しつつある50代というのは何とも中途半端。やたら元気な「ベテラン」と人生無双状態の「中堅」に挟まれてアイデンティティを失いがちです。そこで世間から見た年相応のイメージに自ら寄せて「おばさん」を自称したりしてポジションを作ろうとするけど、実は「まだイケるんじゃねーか?」と、以前の自分に一縷の未練が捨てきれていない。とはいえポテンシャルが下降しているのは自認しているわけで。
そんな状態だから、例えば、うっかり他人に見た目や体力、仕事のパフォーマンスが衰えたのを指摘されると図星がゆえ、カッとして、そのあと地味にずるずる落ち込んだりして……。だから、最初から自虐的に言い訳をするのは、自分から「言われたくないことを言われないように」先手を打って心を守っているのです。これは自信がない表れなんですよね。
「元祖・山ガール」ってくらいですから、さぞかし体力もあって元気に過ごしていると思われがちですが、時は戦国・更年期。「はつらつ」にはほど遠い日々を過ごしております。
自由に山の近くを転々としていた独身生活から一変、3年前に母の介護がきっかけで実家のある東京都心に戻ってきました。それが更年期のピークと重なり、ストレスフルMAX。更年期症状が強く出て、なにをすれば改善するのか騙し騙し、試し試し、探り探りの日々でした。
そんな私が今回この連載で綴っていくのは、そんな試行錯誤のなかでもとくに「体力維持」のためにしていること。
山にいつでも行けるように、更年期症状の緩和のために、やらないよりはマシをモットーに! 鬱々している割には積極的に! 持ち前の研究熱心さを味方に取り組んできたことを紹介していきます。
人生や女性ホルモンなどの体の機能を「登山」に例えるなら、私はいま「下山中」。
登山において「下山」ってすごく危ないんですね。脚も疲れてくるし、集中力も切れてきて、事故が起きるのはほとんど下山時といわれるほどです。登頂で力を使い切ってしまう人も少なくありません。
だから経験豊かな登山者ほど意識してペース配分し、疲れていなくとも休憩を入れたり、お腹がすく前におやつでエネルギー補給したりします。登山の「達成」は無事に下山することを指します。
登山をしない人でも「家に帰るまでが遠足」と聞いたことがあるでしょう? 登山も同じです。山から下りてからも登山は続きます。
なんなら家に帰るまでに温泉に寄って汗を流したり、山麓で地元食材を買ったり、駅前でおいしいビールを飲んだり……。もはや「下山後」をより輝かせるために登山したんじゃないかと思うときが多々あります。
私はいま、その下山後のために下山をしていると思い始めていて、「下る」というとネガティブに聞こえるかもしれませんが、その先の楽しみに向かっているんです。
具体的にいえば、更年期が明けてから、介護が終わってからの自分の未来に向かって歩いています。そのときにできうる限り健康で、できうる限り丈夫な足腰でいたら、できうる限り長く、また気ままに登山ができるかなと思って。
もし、私と同じようにいま上手く自分の時間が作れないとか、更年期の不調で自分が思い通りにならないというお悩みがある人は、あなたにとっての「好きなこと」を10年後もできるように「下山」していきませんか。それには「体力維持」がキモです。
別に若く見せたいわけではないけれど、下り道も若々しく、はつらつにいきたいじゃないですか。
私がまだはつらつとしていないということは、結果が出ていないってことですけど……、迷いながらぶつかりながら、でも挫けない。私のありのままの「下山道」をよかったら読んでいってください。
あとせっかく頂戴した「元祖・山ガール」の称号ですから、最後には皆さんを「山ガール」にすべく、登山の魅力もお伝えしていきます。どうぞよろしくお願いします。

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- 著者プロフィール
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鈴木みき(すずき・みき)
1972年東京生まれ。イラストレーター、執筆家、防災士、ウィメンズヘルスアドバイザーⓇ。24歳のときに訪れたカナダで山旅の魅力にはまり、帰国後に自ら登山専門誌の取材同行モデルに応募し本格的に登山をはじめる。山小屋やスキー場のアルバイトをしながら、全国の山に取材に出かけイラストや山行記を雑誌に寄稿。コミックエッセイ『悩んだときは山に行け!』(平凡社、2009年)以降、山に関する著書を多数出版。近著に『キャンプ気分ではじめる おうち防災チャレンジBOOK』(エクスナレッジ、2023年)、『知っている山からはじめよう! 大人の日帰り登山』(講談社、2024年)、『更年期の歩き方――アラフィフ山女子、不調と向き合う』(講談社、2026年)。国内外での登山ツアーの企画同行、講演、メディア出演なども行っている。
note「鈴木みきmagazine」note.com/mt_suzukimiki
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