元祖・山ガール鈴木みきの50歳からの女の下山道

第2回

大大大前提に、私は更年期。

更新日:2026/07/08

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「体力維持」について書く前に、大大大前提に「更年期」のことを説明しようと思います。
体力がみるみる落ちるのも、トレーニングが続かないのも、中年太りも、我々中年女性のお悩みはすべて「更年期」が影響していることが大いにあります。

一般的に閉経の前後5年間のトータル10年間が「更年期」とされています。
平均的な閉経年齢は「50歳」、まぁつまり「アラフィフ」は自覚症状がなくても「更年期中」だと考えることができます。

「更年期」は「思春期」と同じ「女性のライフステージ」のなかの表現で、どちらも「生殖ホルモン(女性ホルモン)」の変動が大きくある期間です。この「女性のライフステージ」では女性ホルモンの分泌量の波形をもとにステージ分けされていて、それぞれの線引きは「生殖機能」の変化に伴います。もっと具体的に書くと、妊娠出産のための体の機能によって「~~期」と分類されます。

「思春期」は子供を産み育てるための準備期間、「更年期」は閉経により妊娠しなくなる前後の期間で、その2つに挟まれているステージは「性成熟期」と名前がついていて、妊娠出産に適した機能が充実している期間です。それぞれの期間にかかりやすい特有の病気もあるので、それを含めて女性はとかくこの「ライフステージ」に人生を振り回されがち。もっといえば「女性ホルモン」に振り回されて生きているといっても過言ではありません。

私は自分の更年期症状が思いがけず重く、それを何とかしたくて女性の体のこと、ライフステージのことを勉強して「ウィメンズヘルスアドバイザーⓇ」という資格を取りました。そこで学ぶ前は「更年期は閉経する前の3~4年間」というイメージでしたし、「更年期」が「思春期」と同列のライフステージにあるものとも考えたことがありませんでした。
月経についても「赤ちゃんをつくるためのサイクル」程度の認識しかなく、元々結婚願望も薄かったせいか、30代になるころには生理を「月々の面倒なタスク」くらいにしか思っていませんでした。お恥ずかしい話、50代になるまで自分の体に備わっていた生殖システムをほとんど知らなかったのです。

「子孫を生むためのサイクル」=「月経」が未来永劫なくなるのが「閉経」ですが、その数年前から女性ホルモンの分泌が大きく乱れながら減っていきます。閉経したあとは女性ホルモンがごくわずかしか分泌されません。その影響で人によっては、ほてり(ホットフラッシュ)やイライラに代表される「更年期症状」が出ることがあります。40代半ばから「原因が分からないけど、なんか今までと違う不調」が増えてきたら、女性ホルモンが乱れ始めた、すなわち「更年期」に突入した可能性があります。

私の場合は、幼少から成人まで患っていたアトピー性皮膚炎が再発したのが最初の変化でした。そのうちにほてりや寝汗が始まり(暑がりになったと思っていました)、何度も膀胱炎や中耳炎に感染したり(風呂キャン界隈を恥じました)、突然の神経痛で眠れない日があったり(これは怖かった)、妙に心が落ち込む日や倦怠感で起き上がれない日(こんな日もあるよな……)なんてのも出てきました。あとやっぱり今振り返ると、他人からのちょっとした言葉や態度に腹が立ちやすかったなと思います。

でもまだそれが女性ホルモンの乱れによるものという知識がなかったので、その都度不安に思っていただけでした。私の症状だけ見ても、これらの症状に関係性があるように思わないじゃないですか。痛さとかゆさと倦怠感、部屋となんちゃらと私ですもの。しかも病院に行くほどでもない症状の重さだったというのもいやらしいところです。

「更年期症状」は、「いわゆる」な症状のほかに数十種類、医師によっては200種類以上の症状があるといわれているため、もはやアラフィフの不調はすべて更年期症状だと言えなくもありません。しかし厄介なのは「そうではない病気」の可能性もあるということ。なので自分で判断せず、不調を放っておかないことが必要です。
私の経験上、更年期の知識がないうちは「そうではない病気」を疑いまくってネットサーフィン&病院ホッピングに陥ります。病名が特定できなければ慰め程度の処方箋をもらって、しばらくすればブリ返す。滅入るしかない悪循環です。

これは「更年期」かもしれないと疑いだしたきっかけは、「無気力」というか「無欲求」です。
誰かと喋りたいとか、なにが食べたいとか、これが飲みたいとか、いつの間にか頭に浮かばなくなっていたんです。ちょうど閉塞的だったコロナ禍でもあり、それもあると思うんですけど。ある日ひさしぶりにコンビニに行ったんですね。いつもなら新商品を物色したり、あれも食べたいこれも試したいとウキウキするはずなのに、何ひとつ、何ひとつですよ、欲しいものが見つからず退店したことがあって、それで「私、どうしちゃったんだろう?」って気付いたんです。そういえば、それまで仕事をサボってでも行きたいと思っていた山に行く気が起きていないなとか、もっと日常的なことでも、お風呂に入る気にならないなとか、今日も同じメニューでいいやとか。すべてに対して「したい」が消えて、とりあえず「そうしたほうがいいと思うから」やるけど、そこに意思はないみたいな感じ。
なかでもいちばんイヤだったのが、楽しいことをやっているはずなのに心の底から楽しめないことです。以前だったら間違いなく自分が喜びそうなことをしているのに、いつも頭上に邪魔な低い天井があって喜びがそれ以上にいかない。そんな感覚がその頃から最近まで長く続きました。

ここまで読んで心当たりのある状態がご自身にある方は、一度「婦人科」にかかってみてください。
「更年期症状」にはいくつかの治療法があります。どれも恐ろしいものではないですし、副作用も少ないです。私は無知ゆえに遠回りしましたが発症(仮定)から3年目の2年前にようやく「婦人科」に辿り着き、「ホルモン補充療法」という、名前はちょっとコワイですが、飲み薬とジェル状の塗り薬を処方してもらい治療をはじめました。その時はどの症状よりイライラ(常に怒りの熱い球が腹のなかにあるような感じ)が強かったのですが、薬を始めて数日で熱くて強ばった体が緩む感覚があって、鏡を見ると表情がやわらかくなっていました。「これは治せるものなんだ」と鏡の前で心からホッとした瞬間を今でも忘れません。

どの婦人科でも最初は血液検査をして女性ホルモン値をチェックします。
その数値で閉経が近いかどうなのか推測することができ、問診内容と併せて更年期症状と診断されれば治療方法が提示されます。その治療内容に気が進まなければ断ってもいいんです。更年期症状は病気であって病気でないので、緊急に治療が必要という場合以外、医師はこちらの要望に沿ってくれます。もし不安に思っている原因不明の不調があるのなら、重く考えず婦人科のドアを開けてみてはいかがでしょうか。いま現在の女性ホルモン値を知るだけでも気持ちの置き所が変わってくるはずです。

大なり小なりある更年期の不調は、女性内生殖器(子宮や卵巣)を持っているすべての人に起きる正常な体の変化です(近年は男性にも「更年期」および「更年期症状」があると認められました。理屈は女性と同じで、男性ホルモンの乱れにより起こります)。だから仕方がないと諦めるのもある意味大事ですが、あまりにも受け身だと奈落を見る可能性があるため経験者である私は心配です。医師でもない個人のアドバイスではありますが、ぜひ周りの人の力を借りて、少し無理してでも無理のない生活のルーティンをこれから築いていってほしいです。

例えば、お勤めの人なら仕事内容を変えてでもワークライフバランスを重視するであるとか、子育てや介護で自分以外のお世話に時間を割いているならお金を払ってでも家事を減らすであるとか、「やること」と「やること」の間の「のりしろ」を太くしてみてほしいのです。各々事情があって生活を変えるのが難しいのは承知の上ですが、更年期中の数年間と割り切って今こそメスを入れてもらえないでしょうか。いずれきっと今と同じリズムで生活していたら息切れするようになります。今のうちに、少しずつでも。お願いします。

だってね、更年期症状を抱えながら取り組む仕事や家事って結局イマイチ納得いかない出来になりがちですし、それを誰かに優しく慰められても逆に責められても、いちばんそれに納得できないのは自分なんですよね。更年期はそういうイマイチの自分に少しずつ慣れていく(周りにも慣れてもらう)期間でもあるのかなと思うんです。第一回に書いた「言い訳」の法則。あそこに陥っちゃう。自信がないからといって本当は身を削った言い訳を続けてはダメ。ご自愛しないと。

ってね、頭ではわかっちゃいるんですよ。私だって貴女だって。自分を大切に扱わなくっちゃって。でも実際問題『荒年期』はそれどころじゃないんですよね。年齢的にも色々重なって忙しいときですし。努力して「のんびり時間」や「甘いご褒美」みたいな、想像しやすい「ご自愛」を与えてみても、先般の事情で「焼け石に水」。一瞬で蒸気となっておわりです。人によっては逆効果でストレスになることだってある。

考えるに、真のご自愛は更年期の先にあるような気がするんです。自分を大切に扱うには、自分を許せるようにならないと。
「更年期」には終わりがあり、多くの更年期症状も治まってくるとされています。女性ホルモンに左右されなくなったとき、やっとそのときが訪れるんじゃないかって。だから私はいまご自愛の練習中です。

更年期症状の緩和には、治療のほかに生活習慣が大きく関わってきます。そのひとつが「運動習慣」ですが、私のように同世代のなかでは比較的体を動かしているほうでも抗えないことがあります。でも、登山をしてきたからこそ抗えたこともありました。もし私が登山をしていなかったら? 想像するだけでゾッとします。
次回からはそのあたりのことを……

著者プロフィール

鈴木みき(すずき・みき)

1972年東京生まれ。イラストレーター、執筆家、防災士、ウィメンズヘルスアドバイザーⓇ。24歳のときに訪れたカナダで山旅の魅力にはまり、帰国後に自ら登山専門誌の取材同行モデルに応募し本格的に登山をはじめる。山小屋やスキー場のアルバイトをしながら、全国の山に取材に出かけイラストや山行記を雑誌に寄稿。コミックエッセイ『悩んだときは山に行け!』(平凡社、2009年)以降、山に関する著書を多数出版。近著に『キャンプ気分ではじめる おうち防災チャレンジBOOK』(エクスナレッジ、2023年)、『知っている山からはじめよう! 大人の日帰り登山』(講談社、2024年)、『更年期の歩き方――アラフィフ山女子、不調と向き合う』(講談社、2026年)。国内外での登山ツアーの企画同行、講演、メディア出演なども行っている。

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