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Photo Essay 惑星巡礼 角幡唯介

瀬戸内海カヤック紀行①

更新日:2019/12/25

 四年前にグリーンランドの氷海を一緒に旅した友人と一緒に、冬の瀬戸内の海を漕いだ。広島の宮島をスタートして五日間プラスアルファで二百キロほど漕ぎ、瀬戸大橋をすぎた岡山県玉野市の渋川という地区にある海水浴場をゴールとした。
 使用艇はフォールディングカヤックという、アルミのフレームを組み立てて船体布をかぶせたもの。カヤッカーの世界では知らぬ者のいないフェザークラフトというカナダのメーカーの質の高い船を使っているが、いわゆる頑丈なプラスチック素材を使用したリジッド艇とはちがい、柔構造なので、風で波がたち海況が荒れると船体がきしみスピードがよりおちる。出発して三日目までは向かい風がつよく飛沫(しぶき)を浴びながらのハードな航海となったが、四日目、五日目と順調に潮に乗り、一気に距離をのばした。
 気温は低く、風に吹かれると寒くてぶるぶる震えがはしる。だが水は温かい。カヤックのスペシャリストである同行者によると、近年は風が強まり海が荒れることが多くなったが、その原因は海水温の上昇にあるのではないかという。今回も二日目が一番風が強く、風速十メートルほどの東風が吹いたのだが、天気図をみると西からの移動性高気圧におおわれ、本来なら風が強まる要素はなさそうに見える。たぶん、海水温が高いせいで上昇気流が発生し、それが海上での風が吹き荒れる要因になっているのではないかというのが彼の見立てだ。
 風が弱くなった頃、沖合に特徴的な形状の小島が見えてきた。三ッ子島という名前が地図には記載されていた。

著者情報

角幡唯介(かくはた・ゆうすけ)

1976年北海道芦別市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、同大探検部OB。2010年『空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む』(集英社)で第8回開高健ノンフィクション賞、11年同作品で第45回大宅壮一ノンフィクション賞、第1回梅棹忠夫・山と探検文学賞。12年『雪男は向こうからやって来た』(集英社)で第31回新田次郎文学賞。13年『アグルーカの行方 129人全員死亡、フランクリン隊が見た北極』(集英社)で第35回講談社ノンフィクション賞。15年『探検家の日々本本』(幻冬舎)で毎日出版文化賞書評賞。

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