集英社 知と創意のエンタテイメント 学芸・ノンフィクション

文字サイズを変更

  • Facebook
  • Twitter
  • 開高健ノンフィクション賞
  • 情報・知識&オピニオン imidas
  • 集英社創業90周年記念企画 ART GALLERY テーマで見る世界の名画(全10巻)
  • 渡辺淳一恋愛小説セレクション【全9巻】
  • 集英社国語辞典[第3版]
  • 集英社ビジネス書
  • e!集英社

Shueishagakugei

謹んで「熊本地震」災害のお見舞いを申し上げます。

熊本地震により甚大な被害が発生いたしました。
お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りいたしますとともに、
被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。
一日も早く平穏な日々が戻りますよう、そして復旧がなされますよう心よりお祈り申し上げます。

(株)集英社

  • 集英社・熊本地震災害被災者支援募金のお知らせ

謹んで地震災害のお見舞いを
申し上げます。

東日本大震災により被災された皆様に、心からお見舞い申し上げます。
また、被災地等におきまして、救援や復興支援など様々な活動に全力を尽くしていらっしゃる方々に、深く敬意と感謝の意を表しますとともに、一日も早く復旧がなされますよう心よりお祈り申し上げます。

(株)集英社

  • 集英社・東日本大震災被災者支援募金のお知らせ
  • 集英社・東日本大震災被災者支援募金募金状況とご報告

Nonfiction

読み物

Photo Essay 惑星巡礼 角幡唯介

夏のお濠は何の臭い?

更新日:2017/08/09

 毎日同じ時間に皇居の周りを走っていると、都心のど真ん中ではあるが、それなりに四季の移ろいを感じる。秋は枯葉が舞い、冬は日の暮れた都会のビル群に電灯がともり、春は桜が満開になる。では夏は?
 夏の皇居周辺で一番季節感を出しているのは、ミンミンゼミの鳴き声もけっこういい線をいってはいるが、何といってもお濠の水の汚濁だろう。真夏日のつづく最近はものすごいことになっている(七月十六日現在)。富栄養化というか、アオミドロ化というのか、水は緑茶色に濁り、薄気味の悪い藻類が繁茂し、もろもろとした感じの毒々しい緑素が一面に蔓延(はびこ)っている。底の様子はうかがいしることはできないが、おそらくヘドロ化が進み、水中生物の死骸が溢れ、メタンガスでも発生しているのではないかと危惧してしまう。これって放っておいてもきれいになるのだろうか。それとも役所が定期的にヘドロを除去して清掃しているのだろうか。あるいは見た目が汚く見えるだけで、別に汚くないのか。大手濠のあたりで〈コイなどに餌をあげないでください〉と書かれた看板を見つけたが、果たしてコイは生きているのだろうかと、その運命がしのばれた。
 と思っていたら、妻から「市ケ谷駅前のお濠がすごい汚れていて、魚の死骸が浮いていた。もうすごい臭いを発している」と教えられたので、数日後に見に行った。現場はいつもランニング中に見ている皇居周辺の内濠ではなく外濠のほうだったが、たしかにお濠の端っこに溜まった緑素やゴミに埋もれてコイらしき大きな魚の死骸が五、六匹浮いていた。都会の真っ只中で生き物の死骸が人目に晒されてプーンと腐臭を放つ光景は、いまどき貴重といえば貴重なので大事にしたいものである。
 三歳半になる娘はこの死骸を見たとき、「セイウチの臭いがする」と叫んだらしい。この連載でも以前に書いたが、大分の水族館ではセイウチショーの後に観客にセイウチの身体をペタペタと手で触れてもらうサービスがあり、そのときの猛烈な臭いをおぼえていたらしいのだ。
 夏のお濠はセイウチの臭いがする。
 どこか詩的な言い回しで、素敵だなと思った。多少は清涼を感じられるかと思い、汚濁したお濠の前で北極の浮き氷にいるセイウチを思い起こしてみたが、やはりクソ暑いだけで不快だった。

著者情報

角幡唯介(かくはた・ゆうすけ)

1976年北海道芦別市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、同大探検部OB。2010年『空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む』(集英社)で第8回開高健ノンフィクション賞、11年同作品で第42回大宅壮一ノンフィクション賞、第1回梅棹忠夫・山と探検文学賞。12年『雪男は向こうからやって来た』(集英社)で第31回新田次郎文学賞。13年『アグルーカの行方 129人全員死亡、フランクリン隊が見た北極』(集英社)で第35回講談社ノンフィクション賞。15年『探検家の日々本本』(幻冬舎)で毎日出版文化賞書評賞。

本ホームページに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
(c)SHUEISHA Inc. All rights reserved.