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Photo Essay 惑星巡礼 角幡唯介

糞食

更新日:2022/06/08

 犬といえば糞食である。犬は糞が大好物である。しかしよく観察していると、糞食いがはげしいときと、あまり気の進まないときがあるようだ。また糞にも旨い糞とマズい糞があるようで、犬たちは糞に鼻面を近づけて丹念に臭いを嗅ぎ、旨そうな糞を集めて後で楽しむために取っておく、などというような高等な知能を見せつけることもある。
 今年は皆、よく糞を食う。今までこんなに食っていただろうか、というぐらいひっきりなしに食っている。出した瞬間に自分の糞を食うやつもいるし、犬橇から村にもどったら我慢できずにすぐ糞の物色に出歩くやつもいる。メンバーは変わらないので、変化したのは糞のほう、ということになる。
 今年は海象(セイウチ)肉が大量に手に入った。これまではドッグフードをやることが多かったが、今年はほぼすべて海象肉である。糞食がはげしい原因はこれしか考えられない。餌が変わると肉の味はかわる。いい餌を食っている動物の肉は旨い、というのは常識だが、じつは肉だけでなく糞も旨くなるらしい。

著者情報

角幡唯介(かくはた・ゆうすけ)

1976年北海道芦別市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、同大探検部OB。2010年『空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む』(集英社)で第8回開高健ノンフィクション賞、11年同作品で第45回大宅壮一ノンフィクション賞、第1回梅棹忠夫・山と探検文学賞。12年『雪男は向こうからやって来た』(集英社)で第31回新田次郎文学賞。13年『アグルーカの行方 129人全員死亡、フランクリン隊が見た北極』(集英社)で第35回講談社ノンフィクション賞。15年『探検家の日々本本』(幻冬舎)で毎日出版文化賞書評賞。

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