『家父長制の起源』刊行記念 上野千鶴子氏×佐藤文香氏対談【後編】
「家父長制」は決して無敵じゃない! 私たちが希望を持つべき理由

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家父長制から「ご褒美をもらう」女性たち

上野
ところで、『家父長制の起源』はさまざまな時代や社会について、本当に目配りよく論じてありますが、そのうえでなかなかリアルなことも書いてある。「女同士の連帯は難しい」ということにも触れていました。
佐藤
そうですね。分断線がとてもいっぱい引かれているので、単にジェンダーが同じだからというだけで、簡単に連帯できるものでもないということですよね。
上野
家父長制からご褒美をもらえる女たち、得をする女がいる。しかし他方では、そうじゃない女たちもいるわけです。
ケイト・マンという人が『ひれふせ、女たち:ミソジニーの論理』(小川芳範訳、慶應義塾大学出版会)という本で論じています。家父長制というのは、ご褒美とペナルティのセットであると。家父長制に貢献することによってご褒美をもらう女たちがいる一方で、家父長制から逸脱することで罰される女たちもいる。
日本では、ミスコン(ミスコンテスト)に反対した人たちに向かって、「お前たちはブスでミスコンに出られないから僻(ひが)んでいるんだろう」と言った人もいる。ミスコンで優勝した人たちのその後の人生はとても有利だとデータからわかっているので、その人たちのチャンスを奪うのか、というような声もあります。
佐藤
分断統治は支配の基本ですよね。
上野
その通り。よい話が出てきましたので、せっかくだから言っておきましょう。女が「初の×××」と言われて職場に入っていくとどうなるか。大体ふたつのパターンがあります。
ひとつは、「お前は女として認めないから」「男並みに扱ってやる」と言われて、男勝りで生きていく道。もうひとつは“職場のペット”になって、“女の子”になる道。どちらに行くのかは、大体はルックスによって左右されます。これが第一の分かれ道。
2人目が来ると、今度は何が起こるか。分断統治が始まるんです。男性が「〇〇さんと違って、きみは女子力高いね~」なんて言って、女の子たちふたりの間に楔(くさび)を打ち込んでいく。片方の女の子をもてはやし、もう片方の女を腐すようになる。
3人目が入ってくると、ようやく少し変わってきます。やっぱり集団の中で一定の数を占めないと、「初の」とか「2人目の」くらいでは、組織文化というものはなかなか変わらない。3人いると「女もいろいろだね」ということになってくるでしょう。
佐藤
そうですね。だから下手をすると、「やっぱり女の敵は女じゃないか」みたいな話になりがちなんですが、いやいや、そうではないんです。男の人たちだって連帯するのは大変じゃないですか。同じように女性だって、ただ単に性別が一致していたからといって、簡単に連帯できるわけではないのだ、ということですよね。
家父長制というのは女性たちを共犯に引き込みつつ、そして分断するというシステムなので、本当に難しいです。
上野
共犯者にはちゃんとご褒美が出ますからね。それがルッキズムに左右されるというか、ルックスによって露骨に扱いが変わったりもしますけど(笑)。

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