既刊情報
アメリカを動かす「ホワイト・ワーキング・クラス」という人々
世界に吹き荒れるポピュリズムを支える"真・中間層"の実態
ジョーン・C・ウィリアムズ
判 型:四六判ソフトカバー
頁 数:240ページ
ISBN:978-4-08-786090-0
価 格:本体1,800円+税
発売日:2017年08月25日
コツコツと真面目に働いて、国の経済発展を支えてきた労働者層の怒りが 既存政治へと向かい始めた!
「エリートやリベラル、さらには政治が一体どうあるべきかという
著者の根源的な問題意識は、日本にとっても確実に重みを増している」
(渡辺靖/本書解説より)
「トランプに票を投じた強い支持者の大部分はいまだに彼を支持している。
なぜなら、自分のアイデンティティへのプライドと、
リベラルエリートに対する不信感はもっと強いからだ」
(渡辺由佳里/「青春と読書」9月号より)
ハーバード・ビジネス・レビューで最多アクセスを達成した話題の記事が本になった。
2016年11月、アメリカ大統領選挙でトランプが勝利を収めた日の夜、著者のジョーン・C・ウィリアムズは、記事を書いていた。トランプ大統領誕生を実現させた原動力である、アメリカの中西部、北東部の旧工業地帯にすむ白人労働者たちの怒りと失望について、著者には書きたいことがあった。「アメリカのワーキング・クラスについて多くの人が知らないこと」とタイトルをつけたその記事がハーバード・ビジネス・レビューのWEB版に掲載されると大反響を呼び、同誌史上最大のアクセス数を達成したのだ。
ワーキング・クラスは、かつて、自動車・鉄鋼メーカー、石油会社の工場などに勤め、日々真面目にコツコツと働いて、アメリカの繁栄を支えてきた。豊かな暮らしをおくるのに十分な収入を得て"中流階級"として消費社会も支えてきた。彼らにとって大切なのは、体を使って真面目に仕事をすること、ルールを守ること、男性は家族を養うこと、地域と密着して地元の知人と親しくつきあって、助け合うことだった。
時代は変わって、ワーキング・クラスの勤め先である工場は海外に移転したり倒産して、地元に仕事はなくなった。政治家、メディア、大企業の管理職、弁護士、医師などのエリートは彼らを軽んじて、顧みようとしない。政府は、ワーキング・クラスよりも下の階級、貧困層を援助するプログラムは作るが、自分たちは税金をとられるだけだという怒りがますます大きくなる。彼らの不満、悲しみを上手にとらえたのがトランプだったのだ。トランプ政権誕生から数か月がたって、政府が迷走を続ける今でも、ワーキング・クラスのトランプ支持は揺るがない。トランプの政治手腕に対する不安よりも、自分たちが軽んじられてきたことへの不満の方が大きいからだ。
世界中に広がるポピュリズムの原動力の一つといえる、ワーキング・クラス(労働者階級)の怒りは、決してアメリカだけの問題ではない!
[目次]
第1章 なぜ、階級の話をするのか?
第2章 ワーキング・クラスとは、どんな人々なのか?
第3章 なぜ、ワーキング・クラスは貧困層に反感を抱くのか?
第4章 なぜ、ワーキングクラスは専門職に反感を抱き、富裕層を高く評価するのか?
第5章 なぜ、ワーキング・クラスは仕事がある場所に引っ越さないのか?
第6章 なぜ、ワーキング・クラスは大学に行こうとしないのか?
第7章 なぜ、ワーキング・クラスは子供の教育に熱心に取り組まないのか?
第8章 ワーキング・クラスは人種差別者なのか?
第9章 ワーキング・クラスは性差別者なのか?
第10章 ワーキング・クラスは製造業の仕事が戻ってこないことを理解していないのか?
第11章 なぜ、ワーキング・クラスの男性は「ピンクカラー」の仕事に就こうとしないのか?
第12章 なぜ、国からもっとも恩恵をうけているはずの人たちが、感謝しないのか?
第13章 リベラル派はこれまでの重要な価値観や支持者を捨てることなく、ワーキング・クラスを受け入れることができるのか?
第14章 なぜ、民主党は共和党に比べて、ワーキング・クラスの扱いが下手なのか?
©GAYLE JOSEPH
ジョーン・C・ウィリアムズ
カリフォルニア大学ヘイスティングズ校法科大学院労働生活法センター初代所長。過去四半世紀にわたり女性の地位向上に関する議論において中心的な役割を果たし、ニューヨーク・タイムズ・マガジンでこの分野における「ロックスター的存在」と紹介された。