生命の起源に始まり、人間の性の仕組みや本能が生まれてくる混沌とした進化の道をたどり、人類史の各段階を掘り下げ、セックスが人間社会のほぼすべての側面にどれほど大きな影響を刻み付けたかを明らかにする旅だ。（中略）セックスについて私たちが知っていると思っていることは、氷山の一角にすぎない。読者はこれから人類史上最も頻繁にひそひそ話のテーマになってきた広大な世界を知ることになるのだ。（「まえがき」より）

第１部　進化する前戯
1 　ファックできない宇宙　　20億年前
最初のスノーボール（全球凍結）現象が起き、
地球全体が凍結。平均気温は摂氏マイナス50度になる。生き残るために細胞の核内にDNAを保持する真核生物が誕生。
過酷な状況下に個体数を制限するため互いのDNAを交換するセックスが始まる。


2　水面下の暗中模索　６億3500年前
ミミズなど蠕虫に似た雌雄同体の脊椎動物の祖先がお互いの口と肛門がつくようにしてくっつく”シックスナイン“を発明。

３　ティラノサウルスのセックス　6800万年前
それまでは旧態依然とした生殖法を続けていたティラノサウルスのような恐竜が進化し、オスは総排出腔に収納した内部ペニスを変化させた。メスを見るとドタドタと近づき、後背位でメスにまたがり、メスの総排出腔に接触した。


第２部 霊長類のオーガズム

４　オーガズム時代の夜明け　１億2500万年前
有胎盤類と有袋類の共通祖先の時代、オスの外性器が徐々に進化し、メスのクリトリスが「オープンエア型の」突起になったことで、より多くの快楽を得られるようになった。6600万年前～315万5000年まえのあいだに性的刺激は非常に強くなった。


５　モンキー・ビジネス　5500万年～1000万年前
新世界ザル（4000万年前に南米に現れた霊長類）のうちティティモンキーやヨザルは一夫一婦の関係を結んだ。
旧世界ザル（アジアやアフリカに生息した）は一夫多妻制をとり、近親交配を防ぐために雌雄どちらかが出生集団を離れる「配偶者分散」がなされた。

６　火星から来たチンパンジー、金星から来たボノボ　600万年～800万年前
チンパンジーの群れでは複数のオスとメスが複雑なヒエラルキーを作った。オスのヒエラルキーは食べ物や交尾の相手をより多く得られる複数の幹部を中心に構成。順位の高いアルファオスは交尾の相手に恵まれるが、ベータオスは機会も相手も限定された。

７　直立を始める　400万年～200万年前
人類の祖先であるアウストラロピテクス類が二足歩行へ移行し、メスのヴァギナはお尻の方から前方の腰の間に押し出され、オスのペニスは陰茎骨がさらに縮小し、体位の自由度が増した。
第３部 文化の残光

８　森のフェチ　20万年～10万年前
ホモ・サピエンスの進化の過程で、抽象的思考を得たとされている。目の前にないものを想像しストーリーを組み立てる思考は、現代の私たちの性行動においてＳＭやロールプレイ、フェチなどにつながっている。

９　セックスと文明　１万2000年～550０年前
農耕時代が始まる。初期は、農場の手伝いや年老いた両親の世話、高い乳児死亡率の埋め合わせのために、できるだけたくさん子供を持つことが有益だった。家族が生きていくには農地が欠かせないことから、財産相続制度が編み出された。ほとんどの農耕文化では土地は男系の家族が相続し、父方の血筋が重要な要素になっていった。女性の性行為が徐々に制限され、管理されるようになった。女性の婚外セックスは禁止され、不貞はきわめて不名誉な行為とされた。

10 近代革命 19世紀

●産業革命
食物の輸入増加によって、農業従事者が減り、人口の60パーセントが農業から解放された。1900年になる頃には、産業化で人口の約45パーセントが中産階級に。夫一人の収入で生活できるようになったため、「主婦」という存在が誕生した。農耕時代に生まれたセックスや結婚をめぐる因習的な考え方は根強く残り、女性の性行動は相変わらず厳しく規制され、性的に「節操のない」女性は家族からのけ者にされた。

●第二次世界大戦前後
戦時中、出征した男性の仕事を引き継ぐため、女性が再び労働市場に出たことで、女性の性的自由が回復。婚前交渉が増え、未婚の10代女性の妊娠も急増。終戦後、戦地から男性たちが戻った後、女性が家庭や昔ながらの女性の仕事に戻った後も、婚前交渉する人の数が目に見えて減ることはなかった。

●20世紀後半
夫婦間レイプに関する法律が70年代、80年代に各国で成立。先進国で無過失離婚が増加。婚姻率が減少。

11 セックスの未来

セックスレス、少子化、離婚率の上昇
マッチングアプリの普及、オンラインポルノの台頭