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Nonfiction

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Photo Essay 惑星巡礼 角幡唯介

大橋開通

更新日:2016/10/26

 八月に発売した新刊本の挨拶をかねて家族で沖縄県の宮古島地方をおとずれた。宮古島のとなりには伊良部島(いらぶじま)という離島があり、新刊本はその島の佐良浜(さらはま)という漁村が主な舞台だったので、お世話になった方々に一言だけでもお礼を言いたかったのだ。
 佐良浜の取材をしたのは2013年から14年にかけてのことだ。つい先日のことのような気がするが、もう二年以上前になる。今回の訪問で一番の変化は宮古島本島から伊良部島に大橋が架かっていたことだ。宮古島でレンタカーを借りて、そのまま橋を渡る。以前は港でフェリーを待ち、三十分ほど海上を移動しなければならなかった。小型のパルテノン神殿みたいな頑丈な建物が急崖にびっしりと立ちならぶ漁村佐良浜の特異な景観が、昭和歌謡の流れる船からじわじわ見えてくるさまは、それはそれで風情のあるものだったが、今回はそういうのは一切なし。橋を十分ほど走っただけで、あっさりと島に到着した。見事に透き通った青いサンゴ礁の海に架かる大橋は早くも観光名所になっているらしく、バカンスに訪れた若者たちが車を停めてさらさらと髪をなびかせていた。
 島に入ると二年前には走っていなかった路線バスとすれ違った。宮古本島の人が夜に佐良浜で飲んでも、今ではタクシーで帰れる。考えてみると、私も伊良部島で宿をとる必要はなかったのだ。いつもの習慣で伊良部島のホテルを予約したが、べつに宮古本島のホテルに泊まって毎日、車で橋を渡ればいいだけだ。佐良浜の人からは土地を買ったほうがいいと勧められた。海のきれいな伊良部島は芸能人が秘かにバカンスに訪れる地として知られていたが、橋が開通したことで今後はさらにリゾート地として有望視されているという。
 それまで船でなければ渡れなかった伊良部島は橋が開通したことで、事実上、宮古本島と一体化し、離島ではなくなった。たしかに便利になったが、なにか重要なものが失われてしまったような気もする。旅人の無責任な感傷だろうか。
 あの煙草臭いフェリーから流れる昭和歌謡がすこし懐かしく感じた。

著者情報

角幡唯介(かくはた・ゆうすけ)

1976年北海道芦別市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、同大探検部OB。2010年『空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む』(集英社)で第8回開高健ノンフィクション賞、11年同作品で第42回大宅壮一ノンフィクション賞、第1回梅棹忠夫・山と探検文学賞。12年『雪男は向こうからやって来た』(集英社)で第31回新田次郎文学賞。13年『アグルーカの行方 129人全員死亡、フランクリン隊が見た北極』(集英社)で第35回講談社ノンフィクション賞。15年『探検家の日々本本』(幻冬舎)で毎日出版文化賞書評賞。

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