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Photo Essay 惑星巡礼 角幡唯介

アッドの罠

更新日:2023/05/24

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 アッドとは海豹(あざらし)の呼吸口である。海豹は海のなかで暮らす海棲動物だが、肺呼吸をする哺乳類なので、ときどき鼻面を海面から出して息を吸わないといけない。氷山のまわりでも呼吸できるが、ナッゴ(クラック)やできたばかりの新氷など、氷の薄いところにも呼吸用の穴をあける。呼吸口でじっと待つ海豹猟を、こっちの言葉でニッパという。
 ニッパはかなり難しい猟で、うまくいかないことが多い。そういうときは呼吸口のまわりの氷を切り取り、三叉のフックでできた罠を穴にとおして垂らしておく。人間がその場を去ると、海豹は安心して息を吸いにやってきて、フックに引っかかるという単純なものだ。
 二月に入ってからニッパをはじめた。一人ではなかなか獲れないが、罠猟は今のところ(二月二十一日現在)四回やって一回成功した。ほかにも海豹がやってきたけどフックにうまく引っかからなかったのが一回あった。どうも呼吸口猟は銃猟より罠猟のほうが効率がよさそうである。

著者情報

角幡唯介(かくはた・ゆうすけ)

1976年北海道芦別市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、同大探検部OB。2010年『空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む』(集英社)で第8回開高健ノンフィクション賞、11年同作品で第45回大宅壮一ノンフィクション賞、第1回梅棹忠夫・山と探検文学賞。12年『雪男は向こうからやって来た』(集英社)で第31回新田次郎文学賞。13年『アグルーカの行方 129人全員死亡、フランクリン隊が見た北極』(集英社)で第35回講談社ノンフィクション賞。15年『探検家の日々本本』(幻冬舎)で毎日出版文化賞書評賞。

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