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Photo Essay 惑星巡礼 角幡唯介

地図をつくる

更新日:2022/11/09

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 地図なし登山の醍醐味は、まったく未知の山域にとびこみ、一から山域概念を獲得して自分の手で世界をつくりあげてゆくところにある。
 ただ、沢を歩き、尾根を越え、その向こうの沢をくだり……ということをつづけるだけでは、なかなか山域全体の概念は把握できない。踏査した沢と、それ以外の沢、そしてそれをわけへだてる尾根が、どこでどうつながっていくのか、有機的な位置関係がつかめないからだ。
 有機的に把握するための最大のチャンスが、ピークから周囲の地形を俯瞰してしまうことだが、ガスって何も見えないことも多い。登頂の日に晴れるかどうかは運次第、幸運にめぐまれれば新たな山域概念を獲得することができる。
 その意味で今年の地図なし登山は運にめぐまれていた。去年、踏査した戸蔦別川(とったべつがわ)を遡り、1967峰というピークに登頂したときに絶好の晴天にめぐまれた。1967峰から北は完全に未知の地域であるが、周囲の峰々の様子がわかったことで、かなり先まで予想することができた。
 この晴天で登山は一気に進展し、今年は山脈のほぼ北端まで踏査することとなった。

著者情報

角幡唯介(かくはた・ゆうすけ)

1976年北海道芦別市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、同大探検部OB。2010年『空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む』(集英社)で第8回開高健ノンフィクション賞、11年同作品で第45回大宅壮一ノンフィクション賞、第1回梅棹忠夫・山と探検文学賞。12年『雪男は向こうからやって来た』(集英社)で第31回新田次郎文学賞。13年『アグルーカの行方 129人全員死亡、フランクリン隊が見た北極』(集英社)で第35回講談社ノンフィクション賞。15年『探検家の日々本本』(幻冬舎)で毎日出版文化賞書評賞。

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