「僕は長野県茅野市の諏訪中央病院の院長として、
長年地域の「食生活」を健康的に改善する活動を行ってきました。
近年では東日本大震災の被災地の避難所や診療所を
定期的に訪れて、地元の管理栄養士チームと
健康を守るための食事を考案し紹介してきました。
そんな中で実感しているのは、何歳になっても元気に楽しく過ごすためには、
日々の”ふつうのごはん”をきちんと食べるのが何より大切だということ。
けれど、”ふつうのごはん”を１日３食作り続けるのは、大変だということ。

高齢者にとっては、野菜や肉を包丁で切る、
新鮮な食材をこまめに買う、といった何気ない作業がおっくうになってきます。
働き盛りのビジネスパーソンたちは、とにかく時間がない。
時間に追われて１日にやるべきことをこなしている中で、食事をいちから作るのは大変でしょう。
そして、長年家族のためにきちんとした食事を作り続けてこられた主婦の方も、
積極的に手抜きをしてほしいと僕は考えています。
家族の人数が減ったり、お子さんが大きくなって、家庭が新しい形態になったのなら、
自分が食べたいものを簡単に作る料理にシフトしていいのではないでしょうか。
浮いた時間を、ぜひ自分の趣味など好きなことに充ててほしいです。

最近は「個食時代」を反映して、カット野菜や冷凍野菜、少量の肉や魚の
パック、缶詰の種類が増えてきました。今回はそういった便利な食材を使い
電子レンジやオーブントースターも活用しながら、料理初心者でもおいしくできる
レシピを考えてもらいました。僕自身も、早速挑戦しています。

昨年（2020年）から続いているコロナ禍で、在宅勤務が増え、外食の機会が減りました。
家で食べることが多くなり、つい手軽なチャーハンやお好み焼き、麺類が増えている
という声も聞きます。そうなるとどうしても糖質過多の食生活になってしまう。
「手抜きごはん」であっても、健康的な内容にしたいと、日本人全般に不足しがちな
「野菜」と「たんぱく質」をたっぷり摂れるような料理を意識しました。
カット野菜や冷凍野菜、たんぱく質では卵や粉豆腐、缶詰の大豆などを積極的に
使っています。

料理は、旬の素材を取り入れたり、その日の気分で食べたいものを考えたり、
家にある食材をチェックして足りないものを買い足したりと、クリエイティブな要素が
たくさん含まれている作業です。時間や気力があるときは、もちろん手抜きせずに
凝った料理を楽しんでください。けれど、余裕がなかったり、料理を負担に感じている人は、
ぜひ「健康手抜きごはん」を参考にしてください。料理初心者の人は、この本のレシピを
何点か作ってみて、慣れてきたら、ぜひ自分でオリジナルのレシピを作ってみてください。

人生はまだまだ続きます。積極的な手抜きを取り入れて、健康なからだを作り、
毎日を楽しみましょう。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　鎌田實

●目次
第１章　包丁・まな板いらず　カット野菜とパックの肉・魚で　おいしい手抜きおかず　１０　

牛肉の大和煮缶と高野豆腐をレンジで加熱して作る「肉豆腐」

第２章　「冷凍野菜」を使って　毎日手軽に野菜のおかず　

冷凍ほうれん草をアーモンドプードルと塩昆布で和える「ほうれん草のアーモンド和え」

第３章　朝昼晩とこまめに「たんぱく質」を摂る　手抜き「たん活」おかず　

たんぱく質が豊富な鶏ひき肉に、やはりたんぱく質が豊富な粉豆腐を加えた、最強たんぱく質おかず「ごぼう入り鶏つくね　なめたけソース」

第４章　ヘルシー食材をプラスして栄養満点になる　手抜き一品ごはん・麺　

牛肉の大和煮缶を野菜ジュースで煮込む「ハヤシライス」

第５章　スーパー、コンビニで手に入る惣菜をカスタマイズ　市販品にひとくふうでバランス献立