<誕生3周年記念インタビュー>

『麗しのアンジー ネコよみくじ』

作者KaZooさん・Toro*Konさん

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KaZooさん・Toro*Konさん

SNSから新たなキャラクターを発信する集英社×DeNAのプロジェクト『きゃらくり!』から誕生して3年、オッドアイの白猫アンジーは、総フォロワー数10万超えの人気キャラクター。アンジーが、毎日をハッピーにするためにやっていることをまとめた1冊『麗しのアンジー ネコよみくじ』が2024年2月に刊行されました。

構成=永田さち子/撮影=徳山喜行

おしゃれが大好きで、ちょっぴりツンデレな白猫のアンジーに、「癒される」「クスッと笑えて元気が出る」という人が続出しています。「私たちが創り出しているというより、アンジーが自然に動き出してくれているんです」と話すのは、可愛らしいイラストを描くKaZooさん(右)と、短いけれど心に響く言葉を生み出しているToro*Konさん(左)。アンジーの日常とともに、二人の自然体にも見える創作スタイルからは、いろいろあっても毎日をハッピーにとらえるためのヒントが見えてきます。

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――おしゃれをしてさっそうとお出かけする日があれば、ジャージ姿でダメダメな1日を過ごすこともあるアンジー。まっ白な体に真っ赤なコートをまとって、ちょっとすました表情が印象的で、ネコ好きでなくても惹かれてしまいます。アンジーのキャラクターはどのようにして生まれたのでしょうか? 

KaZooさん:
 もともと私が大のネコ好きで、いつかはまっ白でふっさふさの白猫を飼ってみたいと思っていたということもあるのですが、デヴィッド・ボウイのデビューアルバムに収録されている「Sell me a coat」という曲の中に、小さなポケットのついた銀のボタンの赤いコートをイメージする歌詞があり、その曲を聴いている時に、赤いコートを着た白猫が、小さな手を小さなポッケにギュッと入れている姿が思い浮かんで、それをイラストに描き起こしました。その一枚のイラストがある方の目に留まり、『きゃらくり!』さんに提案していただいたのが始まりです。
 ただ、私は絵は描けるけれど、毎日素敵な言葉や文章を考えるのは難しい。相談してToro*Konさんと組んでいくことが決まりました。

Toro*Konさん:
 私のほうは、別のかたからその下絵を見せてもらい、「アンジーっていう、すごくかわいいキャラクターがあるんだけど、これで何かやってみない」と相談を持ち掛けられたのがきっかけです。その時点で具体的なことは何も決まってなかったのですが、一目見て「絶対に自分がやりたい!」と思いました。

――アンジーのキャラクター設定や投稿内容はどのようにして決めているのですか?
毎日夜9時にX(旧ツイッター)に公開される投稿は、3年間1日も欠かさず続いています。途中でキャラクター設定に迷ったり、ネタ切れになることはなかったのか心配になりますが……。

Toro*Konさん:
 最初の打ち合わせで、アンジーの背景や世界観を相談しました。例えばいくつくらいの子でどんなものが好き、どういう感じの生き方をしているとか。決めたのは、おしゃれが好きな女の子で、ネコなら2歳半くらい。人間の女性なら20代後半に差し掛かり、仕事のキャリアもそこそこあって、自立している。公表はしていませんが、ふんわりと職業も設定しているんですよ。そこからはアンジーが動き出して、自由に動いてくれています。私たちのほうがアンジーに引っ張られている感じでしょうか。細かいことを全部決めているわけではなくて、「そうそう、アンジーだったら、きっとこうするよね!」みたいな感覚です。

KaZooさん:
 アンジーが命をもっているみたいで、やりそうなことが自然にイメージとして湧いてきます。冒険をする日があれば、失敗はしょっちゅうのこと、寝ている間に日が暮れることもある。そのあたりの緩さは、ネコですから(笑)。基本的な精神年齢は20代後半の女性ですが、ときには中学生くらいの感覚を行ったり来たりして、時々は“おばちゃん感”も入ってくる。それもすべて、アンジーの日常なんです。
 季節のイベントや流行りものを取り上げたほうが分かりやすいこともありますが、そこにアンジーを当てはめることはありません。最初のうちは1週間とか10日分くらい描き貯めていたものの、今は多くてもせいぜい3~4日分。発信当日の朝になってようやく下絵ができ上がることも。さすがに焦りますが、毎日の出来事からイメージを膨らませていくほうが、見てくださる方もリアル感があっていいのかなと思っています。

――“アンジーらしさ”のイメージが、お二人の間できちんと共有されているのがすごいですね。その中で特にこだわっていることはあるのでしょうか? 毎日のファッションも素敵で、風景やインテリアに注目しているフォロワーも多いようです。

KaZooさん:
 洋服が大好きなので、アンジーにいろいろ着てもらって楽しんでいます。お出かけ用のドレスはなんとなく、花柄やフリフリのレース付きが多いかも。でも、おしゃればかりしていても疲れるから、お休みの日はジャージのまま、気が付いたら夕方になっていた……というのもアンジーらしいところです。見てくださっている人には、「私もこういう服を着てみたい」とか、「でも家の中ではダラッとしていたい」というリアル感を共有してもらいたいと思って描いています。可愛いしぐさや独特の表情、ときには変顔みたいな、ネコならではの独特の表情を描いているつもり。私自身が、「猫のこういうところがたまらない!」という部分を盛り込んでいるんですよ。
 他には、すべてというわけではないけれど、アクセントとしてコートと同じ赤をどこかしら取り入れることは意識しています。小物や背景も、じつはけっこうこだわって描き込んでいます。フォロワーの方たちは想像以上に細かく見ていてくださって、「これは私たちの間だけで分かっていればいいよね」といたずら半分に描いた雲の形とか、カップの絵柄も見つけてコメントくださることがあります。種明かしをしているわけではないのに、ちゃんと伝わっているのは、とてもうれしいです。

Toro*Konさん:
 “言葉”の部分でこだわっているのはネガティブにならないことです。悪口や人を傷つけることに繋がる行動はさせないし、そういう言葉は言わせないようにしています。というより、アンジーの性格から、そういう行動も言葉も出てこないと思うんです。失敗もたくさんするし、怒ったり、ダメダメなところもいっぱいある子ですけど、それも含めてポジティブに変えてしまうキャラクターがアンジー。やり遂げられなくても、落ち込んでも翌日には立ち直っているように、「ま、いいか」「頑張り過ぎなくていいかな」というメッセージが伝わるように心がけています。

――毎日投稿を重ねてきて、1冊の本にまとまることになったときの感想を聞かせてください。また、この本を手に取ってくださった読者には、どんなふうに読んでもらいたいですか?

Toro*Konさん:
 最初は、とりあえず3カ月くらいのつもりでスタートしたら、いつの間にか3年もたっていてびっくりしています。しかもそれが本になるなんて! お話をいただいた時は本当に嬉しかったです。SNSでは1日1コマ&ひと言の発信ですが、この本ではシーンごとにコラムを加えて、普段は見えない背景やアンジーが思っていることを伝えています。軽い気持ちでぱっと開いたページから、見たこと、感じたことを心のどこかに残してもらえたらいいのではないでしょうか。ずっと心にとめておいてもらいたい重たいメッセージではないので、すぐに忘れてしまっていいんです。また次に開いた時「そうだよね」と思ってもらってもいいし、同じ言葉が読む日の気分によって異なる感じ方があっていいと思うんですよね。“おみくじ”みたいな使い方をしていただきたいです。

KaZooさん:
 ルーティンのように毎日の暮らしを繰り返している人は多いと思いますが、この本を開いたら無意識で繰り返している日常から一瞬でも解放される、気分転換のスイッチのようになればいいですね。絵から見ても、コラムから読んでもいいから、1回読んで終わりではなくて、手元に置いて気が付いた時に何度も開きたくなる1冊になったらうれしいです。アンジーの変顔もなかなかいいので、ぜひ注目していただきたいです。

――現在、日本だけでなく台湾のSNSでも発信され、グッズも話題になっているアンジーですが、これからの展開を教えてください。

Toro*Konさん:
 SNSでは今年2月から台湾のInstagramでも発信されています。中国語は感情を表すのが難しいらしく、KaZooさんやスタッフとチェックはしていますが正直、どんな言葉に翻訳されているかはわかりません。でも、アンジーの表情だけで伝わるものがあるのではないでしょうか。色もきれいだし、イラストの隅々まで工夫があって、いい印象で伝わっていると思います。次はストーリー性のある絵本にしても楽しいかもしれないですね。

KaZooさん:
 アンジーは年月とともに成長していくキャラクターではなくて、ずっと猫年齢の2歳半のまんま。アンジーと親友のナミエちゃん、友だちのテオ君の3人に最近、薄いブチがある三毛ネコのキャリコちゃんが加わりました。Toro*Konさんとはもう少しキャラクターを増やしたいという話をしていて、近いうちにもう一人、増える予定があります。発信開始から3年間でアンジーのことを好きになってくださる方がどんどん増えてきて、そのこと自体が私たちにとって奇跡。大きなことは望んでないですが、じわじわとアンジー人気が広がって、長く愛されるキャラクターになってくれたらいうことはありません。

著者プロフィール

アンジー・ラ・コケット チーム
KaZooさん、Toro*Konさん。
Xの発信開始から3周年を迎える『アンジー・ラ・コケット』の中心的なメンバー。イラストレーターのKaZooさんがキャラクターのアンジーを、Toro*Konさんがアンジーの言葉とメッセージを担当している。

『麗しのアンジー ネコよみくじ』

作者KaZooさん・Toro*Konさん

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