観る将注目! 棋士と着物の深~い関係【2024SUMMER】
白瀧呉服店で髙見泰地七段と佐々木大地七段がトークショー
3年目となった【棋士と和服】プレミアムトークショー((株)ねこまど・白瀧呉服店共催)に今回登壇したのは髙見泰地七段と佐々木大地七段。プライベートで一緒に旅行に行くなど普段から仲が良いことで知られるふたり、くつろいだ雰囲気の中で「着物」を中心にとっておきのエピソードの数々が披露された。
初タイトル戦の着物と師匠の想い
イベント当日の2024年7月21日、会場の白瀧呉服店(東京都練馬区)2階大広間には、着物姿で来場する女性ファンの姿も目立った。中でもひときわ注目を集めていたのは、第5期新将棋会館建設プロジェクトクラウドファンディングの返礼品として話題になった、イラストレーターのヒグチユウコさんと羽生善治九段・将棋連盟会長、藤井聡太七冠のコラボレーションイラストをデザインした半幅帯を身につけたグループだ。【棋士と和服】がテーマのこのイベントに寄せる、ファンの熱い想いが伝わってくる。
会場内には、髙見七段と佐々木七段がタイトル戦で着用した着物と羽織が展示されている。こちらは髙見七段が第3期叡王戦第2局(於宗像大社)で着た羽織と長着。羽裏は「虎」の柄。
写真左は佐々木七段が第94期棋聖戦第2局(於ホテルニューアワジ)で着用。同右は第64期王位戦第4局(於和多屋別荘)で対局した時の羽織と長着。棋聖戦、王位戦は夏のタイトル戦のため、裏地をつけない「単衣(ひとえ)」仕立てにする場合が多い。写真の羽織は、盛夏向きの透ける素材で仕立てられている。
司会は前年に続き、将棋イベントでもお馴染みの福山知沙アナウンサー。開会の挨拶に続き、髙見七段と佐々木七段が登壇、撮影タイムが設けられ、会場から一斉にスマホが向けられる。ふたりが着用していたのは、それぞれの初タイトル戦で身に纏っていた羽織と着物(長着)だ。
髙見七段、佐々木七段の紹介後、撮影タイムに。福山アナの着物は、叔母さまから受け継いだという紺の絽の小紋。
- 髙見七段
- 今日は、第3期叡王戦第4局で着た着物と羽織を、白瀧さん(白瀧呉服店店主・白瀧佐太郎氏)に揃えていただきました。叡王戦はこの第3期からタイトル戦に昇格して、準決勝の2局では対局する4人全員、和服を着ることになったんです。そのときに着付けてくださったのが白瀧さんで、着物に慣れていない僕たちがよけいなことに気を使わなくてすむように、細やかな心遣いをしていただきました。
このとき、「もし勝ち上がったら、着物のことはぜひお願いしたいです」と白瀧さんに頼んでいたという髙見七段、見事、本戦出場を決め、お母様と一緒に白瀧呉服店に足を運んだ。
- 髙見七段
- 珍しく、母はおとなしかったですね(笑)。僕も着物は完全に素人なので、白瀧さんに色々教えていただきながら、自分の好みの色などを話して、その日のうちに何着か作らせていただいた記憶があります。対局のときの着物のコーディネートも、白瀧さんにお任せしていました。美容院で髪を切ってもらうときと一緒で、やっぱりプロに任せるのが間違いないですから。
富岡製糸場で行われた叡王戦第4局(2018年5月26日)、会場には髙見七段の師匠、石田和雄九段もお忍びで訪れた。石田九段自身はあと一歩のところまで行きながらタイトル挑戦がかなわず、ここまで3連勝と勢いに乗った髙見七段のタイトル獲得を前に、いてもたってもいられなかったのだろう。
第3期叡王戦第4局の髙見七段(当時六段)。
- 髙見七段
- 暑い中、わざわざ群馬まで来てくれた師匠に、いいところを見せられました。もし負けていたら、師匠の寿命が縮まっていたかもしれない(笑)。一門のタイトル獲得は師匠の悲願でもありましたから。
一方の佐々木七段の着物と羽織は、ベトナム・ダナンで行われた第94期棋聖戦第1局(2023年6月5日)で着ていたものだ。師匠の深浦康市九段が愛弟子の初タイトル挑戦に際し、自身が初めて王位を獲得したときの着物をプレゼントしたことが話題となったが、まさにその着物である。
- 佐々木七段
- (タイトル挑戦が決まったとき)「好きなもの、何でも選んでいいよ」と、師匠の着物のデータがまとめられたファイルを見せてくれたんです。そのとき、これともう一着、着物をいただきました。
福山アナウンサーから「初めて師匠がタイトルを獲ったお着物を自分の初めてのタイトル戦でいただくって、これはもう、すごい想いがあったんじゃないですか」と問われた佐々木七段は、「そんな重々しく言われても(笑)。ありがとうございまーす(笑)って感じです」と、意外にもあっさりした答え。隣で聞いていた髙見七段が「若者らしいですね」と笑う。とはいえ、その後に語った「(師匠の)初タイトル獲得という縁起のいい着物でもあるわけですから、タイトル戦に向かう気持ちがより強くなりました」もまた、本心だっただろう。
棋聖戦はフルセットまでいけば五番勝負となるため、深浦九段から譲られた着物だけでは数が足りない。自身でも着物をあつらえる必要があった佐々木七段が白瀧呉服店を訪れた際、付き添ったのは深浦九段夫妻だったという。
- 佐々木七段
- 奥様が「これ、いいんじゃない」「これはどう?」とおっしゃってくださるのを、師匠が「ちょっと黙っときなよ」と制したりする感じで(笑)。初めてということで、師匠から袴も1枚買っていただきました。
佐々木七段は、贈られた和服のお礼として、深浦康市九段に高級旅館の宿泊券をプレゼントしたという。その微笑ましいエピソードを師匠が一門のSNS(X)に投稿していた。
羽織と袴のプレゼントはまさかのサプライズ
プレゼントと言えば、棋聖戦に続けて第64期王位戦挑戦も決めた佐々木七段が着物を買い足した際、髙見七段と三枚堂達也七段が羽織と袴の代金を支払ったエピソードも将棋ファンの間では知られている。
- 佐々木七段
- 番勝負が終わってから会計をするはずだったんですけど、僕の誕生日に髙見さんと三枚堂さんから「その支払いは済んでる」みたいなことを言われて……ほんとに驚きました。
誕生日に髙見七段はじめ仲のいい友達7、8人との思い出の写真をコラージュしたパネルを贈られた佐々木七段、その中にさりげなく白瀧さんの写真が入っているのをみつけ、「もしや……?」と気づいたという。
- 佐々木七段
- 髙見さんと三枚堂さんだけじゃなくて、将棋界とは関係ない友人達も一枚噛んでいたんです。白瀧呉服店で着物を選んでいたとき、彼らとテレビ通話をしながら、「この色どう?」みたいな感じでアドバイスをもらっていたんですけど、テレビ通話では白瀧さんと初対面みたいなふりをしていたのに、彼らは事前に白瀧呉服店に行って代金を払っていたんですよ。白瀧さんからは「あまり大人を信じちゃいけないよ」って言われました(笑)。いやもう、恐ろしかったです(笑)。髙見さんたちにも還元したいんですけど、なかなか隙を与えてくれなくて。
いくら仲が良くても棋士同志は基本、ライバル。それでもこんなサプライズを贈らずにはいられない、佐々木七段の「愛されキャラ」が伝わってくる。「普段も、LINE通話で話している最中に髙見さんからウーバーで食べ物が届いたりするんです」と話す佐々木七段に、「いい子だから食べてほしいんですよ」と、髙見七段はにっこり。もちろん、この「愛」は一方通行ではなく、トークでは佐々木七段の髙見七段への「愛」を感じさせるエピソードも披露された。
- 佐々木七段
- 髙見さんが出場された第3期叡王戦第1局は名古屋だったんですが、僕は東京から検討室に向かったんです。
- 髙見七段
- 対局が終わってから彼が来ていることを知って、打ち上げに連行しました(笑)。わざわざ来てくれて、すごく思い出深いですね。
髙見七段から佐々木七段への数々のサプライズエピソードに、観客も大爆笑。
着物の所作と「自分で着付け」はプレッシャー?
深浦九段だけではなく、白瀧呉服店は顧客の棋士ごとに着用日や対局の勝敗など詳細なデータをまとめたファイルを作成している。写真では着物の色味が正確に伝わらないため、仕立てたときに出る端切れも添えられているなど、一目で「あのとき着た着物」の記憶が蘇るようになっている。そうしたことも説明しながら、髙見七段と佐々木七段がそれぞれのファイルを一部、観客に公開していると、髙見七段のファイルに「ステテコ」と書かれているのを、福山アナウンサーが発見した。昨年のトークイベントでも、中村太地八段が対局相手だった羽生善治九段を参考に和服の時にはステテコを履くようになったと語っていたが、さて髙見七段の場合は?
- 髙見七段
- 対局のときに緊張感があるのか、すごく汗をかくんですよね。第3期叡王戦のときも、苦しくなってから粘るので、発汗が凄まじくて。それで着物のクリーニング代が他の人の何倍もかかってしまうのが自分の特徴らしいです。白瀧さんのアドバイスで、汗取りをしてクリーニング代がかからないように、ステテコを履くことになりました。
盤上で繰り広げられているのは戦いであり、着物は棋士にとって文字通り「勝負服」であることを改めて実感する。棋士の着物姿は、そんな激闘に相まみえるだけの実力を持つ証明であり、髙見七段も子供の頃から「強者たち」の着物姿を見て、ある仕草に心を掴まれていたという。
- 髙見七段
- 渡辺先生や羽生先生がタイトル戦の終盤になると、(袂を捲る仕草をしながら)こう指すでしょう? 子供ながらに「いいなあ」って憧れました。でもワイシャツと違って、袂は捲らないと駒に当たってしまうわけで。
「盤面が乱れたら元に戻せないですからね」とうなずく佐々木七段は、洋服とは違う着物独特の所作に、最初はとまどいもあったという。
- 佐々木七段
-
棋聖戦第1局は、初めて着物を着てやる対局だったんです。所作も慣れていなくて、座り方が悪かったんでしょうね。足はしびれていないんですけど、正座から立ち上がるときに袴の裾を踏んで、けっこうつまづいたりしていました。対局を重ねるうちに、だんだんそういうことも減っていったんですけど、師匠からは将棋よりそのことを指摘されました(笑)。
あと、終盤になるとそういう余裕はないんですけど、2日制のタイトル戦で1日目は割と進み具合もゆっくりしているので、藤井(聡太七冠)さんが着崩れを直しているのを見て、「危ない危ない」と自分も慌てて直したりして(笑)。
- 髙見七段
- ネクタイ直してる人見たら自分も直す、みたいな感じですね。
そんな棋士たちのタイトル戦での装いをサポートする白瀧さんに対し、「着物のことはもちろん、将棋のこともよくわかっていらっしゃるので、本当にありがたい」と、髙見七段と佐々木七段は声を揃えた。
- 髙見七段
- 僕の場合、叡王戦の対局相手だった金井(恒太六段)さんも永瀬(拓矢九段)さんも白瀧さんのコーディネートだったので、着物の色が被らないようになど色々お気遣いいただいて、その点でも盤上に集中しやすかったですね。
- 佐々木七段
- たとえば、白瀧さんに着付けていただくとき、対局中ずっと畳の上に座っていても苦しくないよう、着物の裾を角帯に挟んでたくしあげた状態にしてくださるんです。足の可動域が広がって、動きが違ってくるんですよね。
白瀧呉服店店主・白瀧佐太郎氏が作成している各々の着物のファイルを手に。
だが、佐々木七段の初タイトル挑戦となった棋聖戦第1局の会場はベトナム。白瀧さんが同行することは難しく、佐々木七段は「初めての着付け」もマスターする必要に迫られた。
- 佐々木七段
- 3回ぐらい白瀧さんのお店に通って、着付けを教えていただきました。そのときに撮ってもらった動画も見返しながら自分でも練習して、全部一通りできるようにしたんですけど、ベトナムでは結局、会場のホテルが着付けの方を用意してくださったので、自分で着付けて対局に臨むという経験はまだありません。だいたい20分あれば、失敗してもやり直せるとは思いますが、来週のJT杯で初めて自分で着物を着ることになって、もう、何が起こるか分からないです(笑)。
そんな佐々木七段だったが、2024年7月27日、静岡県静岡市で行われた将棋日本シリーズJTプロ公式戦1回戦第4局では乱れのない着物姿で堂々と登場、対局でも羽生九段を相手に勝利を手にした。
2024年将棋日本シリーズJTプロ公式戦一回戦第一局(静岡市)での佐々木七段。手前、対戦相手は羽生善治九段。
ちなみに、髙見七段も白瀧呉服店で着付けの特訓を受けたことがある。着付けの中でも苦労する、とふたりが共に挙げたのが、袴の紐を正面で結ぶ際、結び目を十文字に整えることだ。
- 佐々木七段
- 2本の紐があって、それをなんらかの方法で十文字にするんですけど(髙見七段と一緒に、手をぐるぐると回す)、それで1本を丸めて人差し指くらいの長さにして……この十文字型をどう作るか、いつもわからなくなってしまうんですよね。
聞いているだけではまったくわからないが、ロジカルな思考が得意な棋士でさえ難しいという十文字結びは、袴の紐結びの中でも格調高い結び方なのだという。ちなみに、福山アナが白瀧さんから聞いたところによると、タイトル戦の記録係の着物を着付けるときは、袴の紐結びもカジュアルな結び切りにするのだそう。ただ、着物を日常で着ていた時代の棋士たち、たとえば升田幸三四代名人は結び切りで対局に臨む写真が残っているとのことだ。
お互いにプロデュースするならどんな着物?
「着物は基本、白瀧さんにお任せ」と語る髙見七段と佐々木七段だが、会場に並んだ着物を見ると好みの違いも浮かび上がってくる。
- 髙見七段
- 僕はけっこう羽織の裏に絵を入れてもらうんですけど、鷹とか虎とか強そうなものを背負って戦うという感じですね。今日展示されているグリーンの羽織は名古屋城での叡王戦第1局で着たもので、この羽裏の「一鷹、二富士、三なすび」は縁起ものの図柄です。鷹は自分の名前(髙見)と音が重なるのもいいなと思っています。
髙見七段が第3期叡王戦第1局(於名古屋城)で着用した羽織と長着。当時の叡王戦の協賛社(キリンビバレッジ)の「キリン 生茶」にちなんで、お茶をイメージさせる色調だった。
これに対し、佐々木七段は、棋聖戦、王位戦とも夏場のタイトル戦であったこともあり、羽織には(単衣仕立てなので)裏をつけていない。また、色も青、紺、白などシンプルですっきりした印象のものが多いようだ。
- 佐々木七段
- (柄のある羽裏つきの羽織なども)もう少し数が増えてきたら考えるかもしれないですけど、今はシンプルなものがいいなと思っています。
- 髙見七段
- 地力があるから必要ないんじゃないですか。こっちは、こういうのにも気持ちを込めていかないと、なかなか将棋にならないんで(笑)。
トークショーの現地観覧席から事前に募集した質問コーナーでは、着物に関する質問も多く寄せられた。「自分がプロデュースする機会があったら、どんな和服をデザインしたいですか」という質問を受け、福山アナが、髙見七段が佐々木七段にプロデュースしたい着物、佐々木七段が髙見七段のプロデュースしたい着物について尋ねた。
- 髙見七段
- オーソドックスなのはプロに任せればいいので、自分がプロデュースするなら、やっぱり裏地はめちゃくちゃいかつい、すさまじい絵を入れたいです。(佐々木七段は)普段優しいんで、むしろ勝負は鬼になってくれって。これを着た瞬間だけ、めちゃ攻め将棋みたいな感じになればいいですね。
- 佐々木七段
-
確かに、気合いが入るかもしれないです。自分の好みではオーソドックスなほうを選びがちなんですけど、親戚や友人の意見を聞くと、派手だなと思う着物でも反応が良かったりするので、そういう羽織もいいかもしれないですね。
逆に僕が髙見さんの着物をプロデュースするなら、必要なだけ何着でも作りますよ。髙見さんのイメージが紫なので、紫色とかいいかもしれない。
- 髙見七段
- ほんとですか? 紫って、昔で言うと位が高い人の色というイメージがあるので、ちょっと自分には早い感じがするんですけど。
「すさまじい羽裏」の佐々木七段、紫の着物の髙見七段、いつもとは違う斬新なスタイリングも、いつかぜひ見てみたいものだ。
続いては、これも将棋ファンならではの着眼点から生まれた「着物の色」に関する質問。非常に興味深い内容なので、ほぼそのままの文面でご紹介したい。「棋士の先生方がタイトル戦でお召しになる着物のお色は、師匠を思わせるお色だと感じることがあります。そして年齢も外見も違うのに、それが不思議とお弟子の先生方にもよく似合っているのを素敵に思っております。私のイメージでは石田先生、髙見先生はグレーやホワイトなどのモノトーン、深浦先生、佐々木先生は羽織と長着にコントラストのある渋いグリーンやブルーといった印象を持っています。着物のお色は師匠からの贈り物やアドバイスだったのかしら。それとも好きなものを自由に選んでも、子どもの頃からの情景が自然と師匠色を選ばせたのかしら。ぜひお着物のお色についてのお話をお聞かせください。」言われてみれば、確かに!とうなずいてしまう。
- 髙見七段
- あんまり考えたことはなかったですが、なるほどな、と思いました。僕は師匠から着物を譲られたり買ってもらったりしたことはないんですけど、師匠は親みたいなものですし、やっぱり子供は親を見て学びますから、知らず知らずのうちに影響を受けるということはあるのかなと思います。(佐々木七段に)師匠がまだ現役だし、影響は相当あるんじゃないですか。
- 佐々木七段
- いやあ、どうでしょうね。やっぱり将棋も見ますし、研究会で長年教わってるんで、どこか似てくるのかもしれないですね。
「言われてみれば」と、思い当たることがあるような表情でうなずく両棋士の姿に、師匠である石田九段と深浦九段の着物姿を思い出した将棋ファンもいたことだろう。
「あと30分ぐらい行けました(笑)」(髙見七段)という言葉も飛び出すほど、盛りだくさんの話題に及んだトークショーの最後、両棋士は締めの挨拶でこんな言葉を述べた。
- 佐々木七段
- 本日はありがとうございました。和服を着てのイベントというのもなかなかありませんし、自分は昨年着物を作ってから着る機会がそんなに多くなかったんですけど、こういうふうに髙見先生と一緒にお仕事ができたこと、和服を着ることができたのは非常に嬉しいです。来週のJT杯での初めての着付け、それから公式戦の方でも頑張っていきますので、応援のほう、よろしくお願いします。
- 髙見七段
- 和服を着るというのは棋士にとって光栄なことで、憧れでもあるんですけど、それをステップにして今の自分があると思っています。昨年は、後輩というより友人に近い佐々木君が2つのタイトルに挑戦して、「すごいな」と思うと共に刺激を受けました。自分も無理だとは思わないので、もしチャンスが来たらつかめるように、意識して頑張っていきたいと思います。
棋士にとっての着物の重みを想像させるふたりの言葉に、やはりタイトル戦での両棋士の着物姿を見たい!という想いが強くなった。そのとき、ふたりの着物はどんな「師匠色」と羽裏になるのだろうか。
(写真左より)髙見泰地七段、白瀧呉服店店主・白瀧佐太郎氏、福山知沙アナウンサー、佐々木大地七段。
- プロフィール
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髙見泰地七段
(たかみ・たいち)1993年生まれ。神奈川県横浜市出身。石田和雄九段門下。奨励会入会は2005年、プロ入りは2011年(18歳)。第3期叡王(叡王戦がタイトル戦となったのは第3期より)。タイトル戦登場は2回(第3期、第4期叡王戦)。現在順位戦B級1組、竜王戦2組。NHK Eテレ「将棋フォーカス」司会(2019~2022年)。第67回(2018年度)神奈川文化賞未来賞受賞。Instagram @takami_shogi
佐々木大地七段
(ささき・だいち)1995年生まれ。長崎県対馬市出身。深浦康市九段門下。奨励会入会は2008年、プロ入りは2016年(20歳)。タイトル戦登場は2回(第94期棋聖戦、第64期王位戦)。現在順位戦C級2組、竜王戦3組。将棋大賞2018年度最多勝利賞(46勝)、2019年最多対局賞(67対局)、2023年連勝賞(15連勝)。X(深浦一門合同アカウント)@Fukauraichimon
福山知沙
(ふくやま・ちさ)東京都出身、神奈川県育ち。フリーアナウンサー。2011年~2012年NHK Eテレ「囲碁・将棋フォーカス」の司会を務める。歌手としても舞台に立ち、また著作(絵)に『しょうぎの くにの だいぼうけん』(2017年、講談社刊、原作/中倉彰子)があるなど、幅広い活動をしている。X @chisa_fukuyama
(株)ねこまど
2010年、北尾まどか女流二段が、将棋の普及活動のために設立。将棋教室の主宰、将棋大会・イベント開催など。女流棋士による公開対局「知と美」は今年で第12回を迎えた。こども・初心者から大人まで大人気の「どうぶつしょうぎ」のイベントやライセンス事業を行っている。将棋フリーペーパー「駒doc.(こまどく)」を年4回発行。
ホームページ https://nekomado.com/
X(ねこまど将棋教室) @shogischool白瀧呉服店(しらたきごふくてん)
黒船が来航した、嘉永6(1853)年創業。店舗は練馬区にあり、「東京最大級の呉服店」と謳われ、振袖・七五三・訪問着などの礼装から紬・小紋など和服全般の販売やレンタル衣装を取扱っている。広大な敷地内には茶室や日本庭園も有する。先代(4代目)・五良氏の代より将棋界との縁が生まれ、2006年から女流棋戦「白瀧あゆみ杯争奪 新人登竜門戦(非公式戦、日本将棋連盟主催)」を後援。将棋以外にも、競技かるた大会「白瀧杯 女流かるた選手権大会」を主催。その他 茶道・能楽など和文化の継承発展に寄与。現当主・白瀧佐太郎氏は五代目。ホームページ http://www.kimono-shirataki.com/
【取材・文】
加藤裕子(かとう・ひろこ)生活文化ジャーナリスト、ライター。早稲田大学政治経済学部卒業。女性誌編集者を経て、1999年フリーに。同年渡米し、ヴィーガンの情報を発信するThe Vegetarian Resource Group(米国メリーランド州)に籍をおき、アメリカの食文化、健康志向などをテーマに取材・執筆。現在は日本在住。日本の伝統文化探究もライフワークのひとつ(将棋は観る将)。著書に『寿司、プリーズ!~アメリカ人寿司を喰う』(集英社新書)、『食べるアメリカ人』(大修館書店)、『「和の道具」できちんと暮らす すこし前の日本人に学ぶ生活術』(ポプラ社)等がある。