知と創意のエンタテイメント 集英社 学芸編集部

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開高健ノンフィクション賞

開高健ノンフィクション賞 受賞作リスト

第22回 2024年

『対馬の海に沈む』

  • カバー
  • 窪田新之助
    窪田新之助
  •  長崎県対馬市で地元のJA職員が、自ら運転する車ごと海に落ち、溺死した。西山義治、享年44。彼はJAの共済事業で日本一の営業マンとして知られていた。だが、当初から自殺の噂が絶えなかった。横領の疑惑があったからだ。JAが調べたところ、西山は建物の被害を捏造。その共済金の振込先を、自分が管理する口座に設定していた。そこから引き出された金は22億円以上。事故の当日、彼は疑惑に関して職場から呼び出しを受けていて、その直前、観念し、自殺したのでは、と。その後、不正の責任は故人一人に負わされた。だが、違和感が残る。事件の闇から浮かんできたのは、組織の構造上の問題だけではなかった。不気味なまでの深く重い沈黙が、国境の島と巨大組織を覆っていた。
第21回 2023年 MOCTモスト 「ソ連」を伝えたモスクワ放送の日本人
  • 青島 顕
    青島 顕
  •  かつてモスクワ放送という謎めいたラジオ局があった。東西冷戦下、鉄のカーテンを越えて日本へ届くこの放送はプロパガンダの色あいが濃かった。そして実は、少なくない数の日本人が現場での業務を担っていた。彼らはどんな人物だったのか。目的は何だったのか。広大な大地を舞台に揺れ動いた人生模様を描く。(「MOCTモスト」とはロシア語で「橋」「架け橋」の意味)
第20回 2022年 『虚ろな革命家たち―― 連合赤軍森恒夫の足跡をたどって
  • 佐賀 旭
    佐賀 旭
    (撮影/幸田 森)
  •  大学院で学生運動について研究していた著者は、ある手紙に出合う。父から子への想いが綴られたその手紙は、12人の同志を殺害し、拘置所で自殺した連合赤軍リーダー森恒夫によるものだった。残酷な事件を起こした犯人像と、手紙から受ける印象が結びつかない著者は、森の足跡(そくせき)を追い、その実像を探し求める……。
第19回 2021年 『ソ連兵へ差し出された娘たち』
(『ソ連兵へ差し出された娘たち ―― 証言・満州黒川開拓団』改題)
  • 『ソ連兵へ差し出された娘たち ――証言・満州黒川開拓団』
  • 平井美帆
    平井美帆
  •  1945年夏。崩壊した「満州国」に取り残された黒川開拓団(岐阜県送出)は、引揚船が出るまで入植地の陶頼昭に留まることに決め、集団難民生活に入った。しかし、暴徒化した現地民の襲撃は激しさを増していく。団幹部らはソ連軍に助けを求めたが、今度はソ連兵が“女漁り”や略奪を繰り返すようになる。悩んだ団長たちが取った手段とは……。世に沈んできた女たちの声を追った、異色のノンフィクション。
第18回 2020年 『デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場
  • 『デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場』
  • 河野 啓
    河野 啓
  •  新時代の登山家と称された栗城史多さん。単独無酸素でのエベレスト登頂に挑むも失敗を続けた彼は、2018年5月、8回目の挑戦で最難関の絶壁を選んだ。そして滑落死した。なぜ登り続けたのか? 最期の瞬間に何があったのか? 彼はどんな人生を送ろうとしていたのか? そしてわかった。本当の「デス・ゾーン」は栗城さん自身の中にあった。
第17回 2019年 『聖なるズー』 (『聖なるズー 動物性愛者、種も暴力も超えるセックス』改題)
  • 『聖なるズー』
  • 濱野ちひろ
    濱野ちひろ
  •  本書の主人公は、ドイツに暮らす動物性愛者たち。彼らは動物を愛し、動物とときにセックスをする。動物性愛者は、自らを「ズー」と称する。19歳から10年にわたってドメスティック・バイオレンスと性暴力に苦しんだ筆者の個人的経験を踏まえながら、動物と人間の性的関係を通して、人間にとって愛とはなにか、また、暴力とはなにかを考察する。
第16回 2018年 『空をゆく巨人』
  • 『空をゆく巨人』
  • 川内有緒
    川内有緒
  •  国籍も職業も生き方も異なるふたりの男。現代美術界の巨星・蔡國強(ツァイ・グオチャン)と、福島県いわき市の志賀忠重。ふたりで手掛けた最大の作品が、東日本大震災の翌年の「いわき回廊美術館」だ。加えて、99,000本の桜を250年かけて植樹する「いわき万本桜プロジェクト」を進める。ふたりの足跡を辿りながら、美術や文化の底力を問う。
第15回 2017年 『黙殺 報じられない"無頼系独立候補"たちの戦い
  • 『黙殺 報じられない"無頼系独立候補"たちの戦い』
  • 畠山理仁
    畠山理仁
  •  選挙の現場で何者にも頼らず独自の戦いを続ける無名の新人候補(=無頼系独立候補)たち(たとえば、スマイル党総裁・マック赤坂など)。しかし彼らは、メディアから無視され続ける。にもかかわらず、何度選挙に敗れても、また新たな戦いに挑む底抜けに明るい候補者たち。本稿はそんな彼・彼女らに密着取材。その人生を追いかけた記録である。
第14回 2016年 『マラス 暴力に支配される少年たち』
  • 『マラス 暴力に支配される少年たち』
  • 工藤律子
    工藤律子
  •  中米ホンジュラス。2010年以降、5年連続で殺人事件発生率世界一の国。そこで犯罪を繰り返す凶悪な若者ギャング団「マラス」。メンバーになる条件は、誰かを殺すこと。そしてそこから抜ける時は、死を覚悟しなければならない。元マラスや現役メンバー、軍警察、そして若者ギャングの人生を変えようと奮闘する牧師などを追ったノンフィクション!
第13回 2015年 五色ごしきの虹―― 満州建国大学卒業生たちの戦後
  • 『五色の虹〜満州建国大学卒業生たちの戦後〜』
  • 三浦英之
    三浦英之
  • 日中戦争の最中、旧満州(現中国東北部)に設立された最高学府「満州建国大学」。日本、中国、朝鮮、モンゴル、ロシアの五民族から選抜された若者たちが共同生活を送りながら、日夜議論を戦わせていた。満州国崩壊後、母国へと戻った学生たちはどのような戦後を送ったのか。知られざる「もう一つの戦後」に迫ったドキュメント。
第12回 2014年 『ジャスミンの残り香―― 「アラブの春」が変えたもの
  • 『ジャスミンの残り香 ――「アラブの春」が変えたもの』
  • 田原 牧
    田原 牧
  • 宗教勢力の反動を呼び、中東を未曾有の混乱に陥れた「アラブの春」は徒労だったのか? 革命の意味を模索しつつ、3.11後の日本を考える。
第11回 2013年 『誕生日を知らない女の子 虐待 ―― その後の子どもたち (『壁になった少女 虐待 ―― 子どもたちのその後』改題)
  • 『誕生日を知らない女の子 虐待——その後の子どもたち』
  • 黒川祥子
    黒川祥子
  • 虐待を受けた子どもたちは、成長するにつれ、心身ともに障害を生じ、問題行動に苦しんでいた。そうした被虐待児が暮らす多人数養育施設「ファミリーホーム」を密着取材。心の傷と闘う子供たちと彼らを支える人々の現実と育ち直しの時を、あたたかく見つめる。
第10回 2012年『エンジェルフライト 国際霊柩送還士
  • 『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』
  • 佐々涼子
    佐々涼子
  • 国境を越えて遺体を家族のもとへ送り届ける国際霊柩送還士。海外における邦人の事件・事故の陰には必ずといっていいほど彼らの活躍があるが、今まで表だって報道されることはなかった。遺族、新入社員、創業者、ドライバー、二代目、そして取材者。国際霊柩送還に関わるそれぞれの立場から、死とは何か、愛する人を亡くすとはどういうことか、が語られる。
第9回 2011年 『日本を捨てた男たち フィリピンに生きる「困窮邦人」 (『日本を捨てた男たち─フィリピンでホームレス─』改題)
  • 『日本を捨てた男たち ──フィリピンでホームレス──』
  • 水谷竹秀
    水谷竹秀
  • 居場所を失った日本を捨て、彼らはフィリピンに飛んだ。待っていたのは究極の困窮生活。しかし、フィリピンは彼らを見捨てなかった・・・・・・。今や社会問題として話題になりつつある「困窮邦人」の実態をフィリピン〜日本にかけての綿密な取材から描く渾身のノンフィクション。
第8回 2010年 『空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む (『空白の五マイル 人跡未踏のチベット・ツアンポー峡谷単独行』改題)
  • 『空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む』(『空白の五マイル 人跡未踏のチベット・ツアンポー峡谷単独行」』改題)
  • 	角幡唯介
    角幡唯介
  • その空白地帯を埋めんとする古今の探検家たちの旅を追い、やがて筆者も谷を踏破。もう一度訪れたいと仕事をやめて挑むが、想定外の出来事の連続に、最後の旅は必死の脱出行の様相を帯び始める。
第7回 2009年 『インパラの朝 ユーラシア・アフリカ大陸 684日 (『バックストリートの星たち』改題)
  • 『インパラの朝 ユーラシア・アフリカ大陸 684日』(『バックストリートの星たち』改題)
  • 中村安希
    中村安希
  • 新しい才能による次世代ドキュメンタリー誕生!
    47カ国、約2年間にわたる旅を今までにない清新な手法で描く。アジア、中東、アフリカ…現地の生活に密着した旅をクール&詩情豊かに活写!!
第6回 2008年『最後の冒険家』
  • 『最後の冒険家』
  • 石川直樹
    石川直樹
  • 「どうやって生きのびるか。それが最大の課題だった」太平洋横断飛行に挑戦する彼らの生き方は、なぜわれわれの心を揺さぶるのか。北太平洋に消えた熱気球冒険家・神田道夫と過ごした4年半の記録。
第5回 2007年『ねじれ 医療の光と影を越えて
  • 『ねじれ 医療の光と影を越えて』
  • 志治美世子
    志治美世子
  • 隣の病院で始まった〈人間復興〉の闘い。
    今、医療の現場では何かが起きている。「そのとき」我々はどうすればよいのだろうか? 闘うことで事態を変えようとした人々を丹念に描く。
第4回 2006年 『さよなら、サイレント・ネイビー 地下鉄に乗った同級生 (『さよなら、サイレント・ネイビー』改題)
  • 『さよなら、サイレント・ネイビー-地下鉄に乗った同級生』(『さよなら、サイレント・ネイビー』改題)
  • 伊東 乾
    伊東 乾
  • 衝撃のノンフィクション・ミステリーの登場!
    選考会騒然、評価二分。刊行前から各メディア取材殺到。現役東大助教授・伊東乾が存在をかけて追いつめた「同級生の大罪」。裁かれるべきは、はたして誰なのか。
第3回 2005年『絵はがきにされた少年』 (『遠い地平』改題)
  • 『絵はがきにされた少年』(『遠い地平』改題)
  • 藤原章生
    藤原章生
  • 日本人が忘れた清涼な魂の物語。
    今なお、被差別、貧困に満ちたアフリカ。しかしそこには、足ることを知る、純朴な人々が生きている。放っておけば砂塵のように消えてしまう彼らの存在を、言葉を、著者は温かい目で掬いあげ描く。
第2回 2004年『ウーマン アローン』
  • 『ウーマン アローン』
  • 廣川まさき
    廣川まさき
  • 伝説の日本人の足跡を訪ねるため、女一人、初めてのカヌーを繰ってアラスカ・ユーコン川下りに挑んだ著者。様々な表情を見せる自然、人々との交流。それは楽しい学びの時でもあった。
第1回 2003年『虎山へ』
  • 『虎山へ』
  • 平岡泰博
    平岡泰博
  • 零下30度にもなる激寒の季節、まだ誰も撮影したことのない絶滅寸前の幻のシベリアタイガーの映像を得る為に、TV局のカメラマンである著者は、ロシア沿海地方の、文字通り虎の棲む山に挑む。
(優秀賞)
『越境人たち 六月の祭り』
  • 『越境人たち 六月の祭り』(優秀賞)
  • 姜 誠
    姜 誠

日韓共催W杯で定住外国人草の根ボランティアを立ち上げた著者。その経過と自分史、在日コリアンやブラジル人の実情を語りつつ「多文化共生」実現を提案。国家をまたいで生きる越境人の姿がここに。

『ダッカへ帰る日-故郷を見失ったベンガル人
  • 『ダッカへ帰る日-故郷を見失ったベンガル人』(優秀賞)
  • 駒村吉重
    駒村吉重

10年以上滞在のバングラデシュ人兄弟と同じ目線でつきあい、送還された故国まで追いかけた力作。全編に兄弟の作ったカレーの匂いが立ちこめる!

開高賞詳細 集英社 四賞

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