『SPY×FAMILY オペレーション〈着彩(イロヌリ)〉』
遠藤達哉

<刊行記念インタビュー>

SPY×FAMILY オペレーション〈着彩(イロヌリ)〉
連載担当編集者・ 林士平氏インタビュー

遠藤達哉先生の“生きた”線画!〈着彩(イロヌリ)〉第2弾登場!!

『SPY×FAMILY』公式ぬりえ第2弾となる「オペレーション〈着彩(イロヌリ)〉-ODEKEKE-」が3/26(火)に発売された。第1弾「-FAMILY-」と同様、遠藤達哉先生の線画をそのままぬりえ原稿として使用しており、さらにユーリ、フィオナ、ダミアン、ベッキーなど収録キャラクターも大幅拡大。
今回、『SPY×FAMILY』連載担当編集・林士平氏にぬりえ企画の意義や、作家・作品の魅力について聞いた。

(構成/中嶋竜 撮影/井上果音) 本文中イラストすべてⓒ遠藤達哉/集英社

  • Twitter
  • Facebook
  • Line


■遠藤先生の線画に着彩できる“贅沢ぬりえ”!

――初めて「SPY×FAMILY〈着彩〉(イロヌリ)」の企画打診があった際、どのように感じましたか?

ぬりえのような商品はずっと出したいと考えていましたし、遠藤先生にも「『SPY×FAMILY』で子ども向けの本を出したい」とお伝えしていました。『SPY×FAMILY』は小さいお子さんも楽しまれているので、ご家族で好まれる企画なのでは、と。だから企画にまったく異論はなく、遠藤先生も賛同してくださいました。
ただ、遠藤先生は連載とアニメ監修で非常に多忙なので、線画を整えていただく時間を確保するのが大変かもしれないと……(笑)。
今ではぬりえの他にも教育本(ワークブックシリーズ)が3冊出ていますが、今後も拡大していきたいジャンルですね。ただ教育本は他の作品から既に色々と出ているので、後発ならではのクオリティや新しい着眼点が必要だと思っています。

――そういった意味では、『オペレーション〈着彩(イロヌリ)〉』はいかがですか?

“遠藤先生の線画をそのままぬりえにする”ということが圧倒的な魅力ですね。しかも線画をご提供いただく際、遠藤先生は一部の線を手直しされているんですよ。不要な線を消してクオリティを高めたりして。
ぬりえは線そのものを、読者がじっくり観察する商品でもあります。原作の遠藤先生ご自身の線だからこそ、絵の魅力が十分に伝わってくる。本当、贅沢なぬりえですね(笑)。

――原作の線画は基本的には表に出ないものなので、資料としても貴重ですね。

昨年夏から巡回中の「SPY×FAMILY展」では第1話のネームも展示していますが、そこからも分かる通り、遠藤先生は線画の時点でクオリティが非常に高いんですよ。しかもぬりえに使われている原稿は、遠藤先生が外に出しても良いとご判断されたものばかり。見ごたえも相当あると思いますよ。

■線画からも窺える遠藤先生の魅力!

――林さんから見て、遠藤先生はどのような作家さんですか?

ネームも絵も設定も、作品の隅々まで深く配慮して描かれる作家さんです。本当に細かいところまで考えを巡らせていらっしゃるので、とてもスムーズに楽しく読み進められます。これだけ全体に気を配っているからこそ、これだけ多くの方に楽しまれる作品になっているのだと思います。

――線画において、遠藤先生の魅力はどこだと思いますか?

遠藤先生の絵は大量に線を描き込むというより、どちらかというとシンプルですよね。それなのにこれだけ見応えがあって魅力的な絵であることが驚きです。この線の精度をどう説明すればいいのか……ちょっと言語化できませんね(笑)。
実際『SPY×FAMILY』の原稿は、どのコマを抜いてもグッズにできるくらい、全ページに華があるんですよ。コマの隅々まで魅力を出せる、すごい作家さんです。

――今回、遠藤先生の線画を改めて見返してみて、気づいたことはありますか?

言い方が難しいですが、遠藤先生の線は“柔らかくて生きている線”ですね。
新人さんの中には、デッサンもきちんとしているのに、どこか人形のような硬い印象の線を描かれる方もいます。でも遠藤先生の線は手触りも感じられて、キャラクターが生きている感じがします。
あとは改めて、デザイン面でも凝っていて素晴らしいですよね。

――イーデン校の制服も作品を象徴する、かなり目を引くデザインですね。

デザインは凝っていますが、一方で手間を掛け過ぎないように工夫されているそうです。イーデン校の制服は黒地にステッチが特徴ですが、これはデジタル仕上げで破線が描きやすくなったから採用されたのかもしれません。昔のフルアナログの頃だったら、これを何枚も描くのは大変だったはず。
こういった部分からも、常に発想や技術をアップデートされている方なんですよね。ご自分が楽しめて、連載で描き続けられる塩梅を模索されているのだと思います。

■林さんのお気に入り&オススメ!

――今回の「-ODEKEKE-」に収録されている絵で、林さんのお気に入りのイラストを教えてください。

まずは宇宙遊泳の絵です。本編では絶対に見られないであろう、楽しい絵です。
正装してシャンパンを持つ3人は、色々なお祝いの広告や宣伝に使えて便利ですね。

 アーニャのファッションショーも大好きです。
 ドッジボール回の扉絵は某児童漫画っぽいテイストで、ノスタルジーに浸れて大好きです。

 お盆イラストや毎年の年賀状など、世界観に囚われず自由に描かれたものも気に入っています。遠藤先生は「私用の年賀状なので、急いでラフに描いた」と仰っていましたが、全然ラフに感じませんでしたし、年末進行の疲弊明けなのに、楽しんで描かれたのでは(笑)。

――ぬりえのオススメの遊び方はありますか?。

前巻ではぬりえコンテストが開催されて、遠藤先生に審査していただいたのですが、まず投稿者の年齢層に驚きましたね。小さいお子さんの思いのままに塗りたくっている感じの絵も可愛いですが、70~80代のご高齢の方で、すごく上手い方もいらっしゃいました。
あらゆる年齢の方に、とにかく自由に楽しんで欲しいです。もちろんお手本通りに塗って、遠藤先生の配色センスの素晴らしさを確認するのもいいと思います。

――先ほどのお話にも挙がりましたが、「まんがノベライズ」「ワークブックシリーズ」などの企画が展開されています。漫画編集以外の『SPY×FAMILY』のお仕事はどうでしたか?

どの企画も「少年ジャンプ+」の読者層とは違いますが、いずれも『SPY×FAMILY』に連なるファンアイテムでもあるので、子供向けでもデザインコンセプトなどはずらさないようにしたいですね。遠藤先生がすべて描かれていなくても、本物感をどう出していくか、とか。
ちなみに遠藤先生セレクト・特別カラーの色鉛筆(ホルベインアーチスト色鉛筆12色セット)も発売されますが、こちらは遠藤先生のご希望です。すごく時間をかけて、1本1本の色を選んでいただきました。こういった幸せな仕事もできる作品になりましたね。

――主なターゲットが低年齢層というのも、普段の読者と異なりますね。

僕にはちょうど6歳の息子がいて、よく遠藤先生に幼稚園の話をお伝えしています。友人の家族と遊んだり一緒に旅行に行ったら、そのときの子どもたちの振る舞いとかも。
今6歳ということは、去年はアーニャと同じくらいの年齢、そして今はダミアンやベッキーと同じくらいの年齢です。そう考えるとダミアンたちは頭がいいなぁ、さすがエリートだと(笑)。
低年齢向けの漫画誌の仕事もやってみたいです。子どもたちに何かを届ける仕事というか。おもちゃを自分で開発するのも楽しそうですね。

――それでは最後に、「オペレーション〈着彩(イロヌリ)〉」を楽しんでくださる読者へメッセージをお願いします。

ご家族皆さんで楽しんだり、お孫さんを喜ばせたり、イラストレーター志望の方が遠藤先生の線画に塗って勉強したりと、どんなモチベーションでも結構ですので『SPY×FAMILY』の着彩(イロヌリ)を楽しんで欲しいです。 遠藤先生の絵は本当にすばらしく、“今の読者に刺さっている線”です。この線画をじっくりと見る機会は貴重なので、そういった楽しみ方もしていただけると嬉しいです。

遠藤達哉
2000年、『西部遊戯』で第5回ストーリーキング漫画部門準キング賞受賞。2007年、「ジャンプSQ.」創刊号より『TISTA』連載開始。2019年より「少年ジャンプ+」にて『SPY×FAMILY』連載開始。「次にくるマンガ対象2019」Webマンガ部門1位、「このマンガがすごい!2020」オトコ編1位、「全国書店員が選んだおすすめコミック2020」1位、第52回日本漫画家協会賞コミック部門大賞(2023)などに選ばれる。現在シリーズ累計3500万部突破(2024年3月)。

林士平
1982年生まれ。東京都出身。2006年に集英社入社。入社後は「月刊少年ジャンプ」に配属。入社2年目に「ジャンプSQ.」に異動し、雑誌の創刊に携わる。2018年より「少年ジャンプ+」編集部スタッフ。『SPY×FAMILY』のほか『チェンソーマン』『ダンダダン』など、数々のヒット作品を手掛ける。また、アニメ・舞台・イベントの監修やプロデュース、アプリ開発など多岐にわたって活躍中。過去立ち上げ作品として、『青の祓魔師』『ファイアパンチ』『左ききのエレン』『地獄楽』『ルックバック』などがある。

本ホームページに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
(c)SHUEISHA Inc. All rights reserved.