〈 刊行記念インタビュー 〉

しらの国のアリス
田村セツコ式 紙とえんぴつハート健康法

田村セツコさん(著者)×小泉晃子さん(絵本作家)

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田村セツコ(著者)さん

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小泉晃子(絵本作家)さん

ボケるのは怖くないわ!がモットー、軽快で元気いっぱいのエッセイ本を上梓した田村セツコさん。今日は、助手役の小泉晃子さんにも、刊行祝いの女子会という名目でいらしていただきました。お二人には内緒のどっきり企画もあります。

――本が出来上がって、久しぶりに三人で揃いましたね。

田村
連載中は、毎月2回、絵日記教室で会っていたのにね。

<解説>この本が生まれるきっかけになったのは、田村さんが講師をしている絵日記教室です。小泉さんは、生徒として長年通っています。 第1章は、月刊誌に共作連載した「白髪のアリス絵日記教室」12回分のカラーページをまとめました。

――12回分の絵と文章は、毎月どのようにアイデアを考えていらっしゃったのですか。

田村
私の場合は、毎月、前もって考えるというよりは、その都度、ポロって浮かんだ絵を描かせていただいた。多少は季節感とか、ちょっとは考えるんですけど。

――先生、だいたい早く仕上げてくださいましたよね。お教室が月2回あるうちの、後の方の回が締め切りのはずなのに、先の回で先生が持ってきてくださるから、小泉さんがあせって。

小泉
あはは……。
田村
絵はね、私はカラー1枚だけだし、もうちょっと丁寧に仕上げたいな、と思いながら、まいいかな、とお渡ししたり。スピード感も大切だから。その代わり、(小泉)あっこちゃんが、真面目に1色3ページの絵日記でフォローしてくださるので安心して。カラーの所は、パーっと描いて、後はお任せ、って感じ。毎回きっちり締めくくってもらえるから、すごい楽しみだし、いいコンビにさせていただきました。
小泉
私は、セツコ先生のことを描くためにお教室で観察していると、ネタはいくらでもあって……楽しかったです。
田村
私がありがたかったのは、記憶ボケてて、え、そんなこと言ったっけ?って覚えていないことを描いていただけるから。無難に褒めていただくだけでなくね。だから、自分が不完全な仕上がりでも、安心してお渡しできたの。


第1章「アリスのポエム」より

<解説>第3章「アリスの魔法練習帳」は、紙とえんぴつを使ってハッピーになる様々な工夫を、読者が実際描き込んで練習できる章です。先程から話題の「絵日記教室」、ひとりごとを言うのではなく書いてみる「ひとりごと」など。白髪のアリスこと田村さんのお手本つきで、全部で10テーマあります。

――第3章では、どのページが一番お好きですか。

田村
先日、(帯文をお願いした)荒井良二先生と対談した時、あっこちゃんとのコラボで作った「わがままかるた」のページを褒めてくださったのが、とても印象に残りました。それが嬉しかった。いいよねー、って言われたので、(対談を中断して、小泉さんに)思わず電話しちゃった。
小泉
突然荒井先生からお電話をいただいて、びっくりしたのと嬉しさとで、腰が伸びて、おかげで腰痛が治りましたよ。私は、セツコ先生と共作できたから、同じく「わがままかるた」が好きです。

<解説>「わがままかるた」は、犬棒かるたをシニアの人がわがままに変えて作ったら、という設定で、笑ってもらおうというページです。小泉さんの御母堂、小泉フサコさん(雑誌『りぼん』の漫画家さんでした)が田村さんと共作した、「いじわるかるた」(1968年『りぼん1月号』に掲載)という記事を再現しました。元の記事は、今ではNGのネタがいくつもあるので、ちょっとマイルドに変えています。

――このページは、セツコ先生と小泉さんの師弟共演であり、フサコさんとの親子共演でもあるんですよね。

田村
担当編集者のトマトちゃん(第3章のナビゲーター)に昔の記事を見せてもらって、描いた時のことを思い出しました。フサコさん、すごい華奢でおとなしい方なのに、描く人物は活発で、ギャグは強烈だし、誰にもマネできない漫画なの。やっぱりDNAに入っているのかな、あっこちゃんの絵にも、くすっと笑えるのがあるのよね。だから、大助かり。いつも登場する黒猫ダイちゃんが突っ込むセリフも面白くて。
小泉
うちで飼っている黒猫です。突っ込み役で出しています。

――セツコ先生の絵にも、黒猫がつきものですね。先生の帽子や手には猫のお人形がくっついていますし。

田村
元々、私がフサコさんに猫をあげたのよね。ダイちゃんより前の話。しばらくして、うちの猫元気?って聞いたら、元気だけど、変な物ばかり拾ってくわえてくるから困るわ。そんな猫って知ってたの?って言われて。環境に合わせてるんじゃない?って答えといたけど(笑)


「絵日記」執筆中の田村さん

(ここで、突然雨が降り出す)

小泉
あ、雨が。
田村
予想もしなかった。大粒よ。

――カフェの中なので、気にしないで本題にいきます。今日集まっていただいたのは、3章の読者参加のページを、お二人に即興で描いてもらおうと思ったんですよ。

田村
何? 絵日記?

――今日のことでも。妄想日記でも。一応、ペンと色えんぴつは持ってきたんで。小泉さんには、「わがままかるた」を。本では使わなかった文を書くので、絵をつけてもらおうかと。

小泉
はい……。どうしようかな?

――すいません、ムチャ振りで。どっきり企画ということで。

(雷の音)

田村
雷……。

――落ちたような音でしたね。あと、「ひとりごと」のページ、「大人のぬりえ」もあります。

(しばらく無言で描く)


「わがままかるた」執筆中の小泉さん

田村
(ぬりえを見せて)できた。

――こっち側に、日記を書いていただけますか。

田村
ペンある? この日記、あっこちゃんが描いたの?
小泉
このペンです。
田村
あ、もう日が出てきた。
小泉
床に釘、どういうシチュエーションなんですか?

――……ただのダジャレです。

小泉
え? 床に釘がささっている?

――意味がわかんないですよね。雨、すっかりやみましたね。

田村
あ、間違えた。「ひとりごと」の所に、こう書こうかしら「まさか、こんな目に遭うとは思わなかった」。

――あはは。

田村
または、「油断大敵」。かるた、全部私のこと言ってるみたいね。

(ここで時間切れ)


完成した「絵日記」

――ありがとうございます! 読者の皆さまに、参考にしていただきます。最後に、ここまで読んでくださった方に向けて、メッセージをお願いします。

田村
参加型エッセイ本、是非お手に取ってください。この本のテーマ、「気楽に」お好きなページからどうぞ。私も、毎日ドキドキしながら、ゆるく楽しく過ごしています。皆さまもお元気でお過ごしください。
小泉
一緒にセツコ先生の教室にいるような雰囲気で、楽しんでいただけたら嬉しく思います。


完成した(?)「ひとりごと」

イラスト©田村セツコ・小泉晃子/集英社
著者撮影/イマキイレカオリ

著者プロフィール

田村セツコ(たむら・せつこ)

イラストレーター、エッセイスト。1938年東京生まれ。1960年代に『少女ブック』『りぼん』(集英社)『なかよし』(講談社)の表紙や“おしゃれページ”で活躍。その後、“セツコグッズ”と呼ばれるキャラクターグッズで一世を風靡。現在は絵日記教室の講師、個展、講演会他。画業65年、好きで入った道を貫いている。

小泉晃子(こいずみ・あきこ)

1971年東京生まれ。『りぼん』の漫画家を経て、現在は、絵本作家、イラストレーター。絵本に『アイアイじまとユウユウじま』『おにわのピクニック』(学研)等。田村セツコの絵日記教室には10年以上通っている。

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田村セツコ

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