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Photo Essay 惑星巡礼 角幡唯介

瀬戸内カヤック紀行③

更新日:2020/01/22

 国内の海をカヤックで旅するときに一番注意しなければならないのは他船の存在だ。瀬戸内海は、漁船はいうにおよばず、タンカー、フェリー、大型客船、各種運搬船等々の航路になっているため、つねに周囲に気をくばり、衝突しないように気をつけねばならない。
 大型船からみたらカヤックなど広大な海にうかぶ一葉の木の葉のようなものであり、目の前にいても気づかれない可能性は高く、したがってカヤック側の人間が衝突をさけなければならない。これはルールではなく、法的にカヤック側に避ける義務があるわけではない。単に衝突して死ぬのはこちら側なので、自分の命は自分でまもらなければならないということである。
 とくに瀬戸大橋の下は大型船が頻繁に通行する。図体のでかい船は悠然としているのであたかもゆっくり進んでいるように見えるが、それは錯覚で、じつは速度ははやく、ええ、のろのろしているように見えたけど、もうあんなに近づいてるの?! と驚愕することもしばしば。なので、よくよくその動きを観察する必要があり、大型船がこないタイミングでこそこそと島から次の小島にわたり、そして航路を横切り、また次の島にすすむ、という隠密行動をとらねばならない。
 海は弱肉強食の修羅場、なので、つねにこそこそし、いつ何時もこそこそする心構えをうしなってはならない。堂々と王者のように海を漕げば大型船の餌食になるだけ。こそこそすること、それが弱者が強者の世界でいきのびるための極意である。

著者情報

角幡唯介(かくはた・ゆうすけ)

1976年北海道芦別市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、同大探検部OB。2010年『空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む』(集英社)で第8回開高健ノンフィクション賞、11年同作品で第45回大宅壮一ノンフィクション賞、第1回梅棹忠夫・山と探検文学賞。12年『雪男は向こうからやって来た』(集英社)で第31回新田次郎文学賞。13年『アグルーカの行方 129人全員死亡、フランクリン隊が見た北極』(集英社)で第35回講談社ノンフィクション賞。15年『探検家の日々本本』(幻冬舎)で毎日出版文化賞書評賞。

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