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Photo Essay 惑星巡礼 角幡唯介

特別編 北極便り ※角幡氏は現在北極探検中です。通信事情により内容はコンパクトですが、不定期で、現地からのお便りをアップします

シオラパルク空撮

更新日:2017/03/08

 北緯77度47分、西経70度38分にあるシオラパルクはグリーンランド最北の集落だ。ご覧のとおりの小さな集落で人口は三〇人ほどだろうか。本来なら〈世界最北〉と書きたいところだが、じつはノルウェー北方のスピッツベルゲン島の居留地のほうがいくぶん北に位置するため、正確にはそちらが世界最北となる。
 シオラパルクにはカナックから週に二便、ヘリコプターの定期便が飛んでいる。天気や視界次第で簡単に欠航したり延期したりするのでフライトスケジュールは無きに等しく、実際、今回の旅でもカナックで五日間待たされた。途中の土日などは風もなく素晴らしい天気に恵まれ、「今日は飛べるだろ」と思ったものの、金曜の時点で「月曜までフライトは順延となった」と聞かされたとおり、やはりヘリは飛ばず、「オレたちは週末は仕事はしないんだ」というエアグリーンランドのパイロットの強固な意志を知らされる結果となった。結局、二〇一六年一一月二日到着予定が七日に到着。日本を出たのが同一〇月三〇日だったので、シオラパルクまで一週間かかったことになる。
 グリーンランド最北の村まで一週間。それが近いのか遠いのか……微妙なところではある。
 一九九一年に隣のカナックに飛行場ができるまで、この地域に入るには特別な許可をとってデンマークのコペンハーゲンからカナックの南にある米軍のチューレ空軍基地に直接乗り入れなければならなかったそうだ。それは地元住民も同じで、グリーンランドの首都ヌークに行くのに、一度チューレ空軍基地からコペンハーゲンを経由しなければならなかったらしく、カナックやシオラパルクのあるチューレ地区は事実上、陸の孤島だった。当時に比べると、フライトスケジュールが不安定とはいえ、はるかにアクセスしやすくなったことは間違いない。ただ、交通の便が発達するということは地元の人も簡単に豊かなグリーンランド南部に移動できるようになったわけで、飛行場の開設以来、伝統的な猟師文化も崩壊の危機に立たされているという。
 今回の極夜の探検はシオラパルクが出発地点だ。村からさらに北に向かって旅をするには、写真奥の黒々とした岩壁の左の谷に入りこみ、その奥の氷河を登って内陸氷床を越えなければならない。氷河まで約一五キロなので、いつも旅をする春であれば凍った海氷のうえをスキーで五時間も歩けば到着する。ところが今回はまだ初冬なので海は黒々と波を漂わせており、凍りつく気配は微塵も感じられない。海岸沿いにできる定着氷もまだ不十分なように見える。こりゃ、いつになったら出発できるんだ? と不安をかかえての到着となった。

著者情報

角幡唯介(かくはた・ゆうすけ)

1976年北海道芦別市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、同大探検部OB。2010年『空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む』(集英社)で第8回開高健ノンフィクション賞、11年同作品で第42回大宅壮一ノンフィクション賞、第1回梅棹忠夫・山と探検文学賞。12年『雪男は向こうからやって来た』(集英社)で第31回新田次郎文学賞。13年『アグルーカの行方 129人全員死亡、フランクリン隊が見た北極』(集英社)で第35回講談社ノンフィクション賞。15年『探検家の日々本本』(幻冬舎)で毎日出版文化賞書評賞。

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