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Shueishagakugei

謹んで「熊本地震」災害のお見舞いを申し上げます。

熊本地震により甚大な被害が発生いたしました。
お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りいたしますとともに、
被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。
一日も早く平穏な日々が戻りますよう、そして復旧がなされますよう心よりお祈り申し上げます。

(株)集英社

  • 集英社・熊本地震災害被災者支援募金のお知らせ

謹んで地震災害のお見舞いを
申し上げます。

東日本大震災により被災された皆様に、心からお見舞い申し上げます。
また、被災地等におきまして、救援や復興支援など様々な活動に全力を尽くしていらっしゃる方々に、深く敬意と感謝の意を表しますとともに、一日も早く復旧がなされますよう心よりお祈り申し上げます。

(株)集英社

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Nonfiction

読み物

しない。 群ようこ

第1回 通販

更新日:2017/11/22

 私が通販をはじめたのは、早いほうだったと思う。それまでは本を購入するのに、ほぼ毎日、書店に通って、そこで何冊も買って、ふうふういいながら家に帰ってきた。インターネットで注文して宅配便で届くと知って、これで重い本を抱えて歩かなくても済むと、喜んだのを覚えている。最初に注文したのはやはり書籍だった。それと並行して、海外通販も利用するようになり、日本では入手しにくい手芸の洋書、バービー人形のデッドストックの洋服、生活用品を購入していた。支払いはカードである。
 英語は堪能(たんのう)とはほど遠いので、注文、問い合わせの仕方、クレームの文章のひな形などをいつもパソコンの横に置き、そこの商品部分の単語を入れ替えて使っていた。それでも商品が着かなかったのは、絵本が届かなかった一度だけで、それも先方の書店が保険に入っていたようで、代金は全額返金された。当時は、国内で書店に書籍を頼んで届く日にちよりも、海外に注文したほうが、早く到着することも多かった。システムがまだうまく機能せず、時間がかかっていたのだろう。
 通販で洋服を買うようになったのは、三、四年後だった。インターネットで見て、いいなと思った服が、地方のその店でしか販売されていなかったため、手に入れるには通販で買うしかなかったのだ。もしもそれで「イメージが違う」などの問題が起きたら、以降、通販では買わなくなったと思うのだけれど、届いたのは画像で見た以上のものだったので、洋服も大丈夫と買うようになった。
 通販をしない人からは、
「よく現物を見ないで買えますね」
 といわれたけれど、サイズや色で失敗したと後悔したことはない。サイズがとても重要な、体のラインが出るような衣類は購入しないし、画像で表示されているサイズや色が微妙で、現物と違う恐れがあるものは買わなかった。サイズは自分がいちばん着やすい服の寸法を手元に控えておいて、それに近いものであれば購入していた。
 どうして通販で洋服を購入していたかというと、店頭で試着するのが疲れるようになったからだ。着たり脱いだりは思いの外、疲れる。もともとウィンドーショッピングが好きではなかったし、事前に調査をして、この店で買うと決めたら迷わずそこに行って、一直線に家に帰ってきていた。一着の服を購入するのに店を渡り歩いて、あれこれ迷うのが嫌いなのである。目星をつけた店に目当ての商品がなかったり、印象が違っていたら買わないで帰ってきた。思いがけず似合うものがあったらそれを購入したが、店に行って購入するのは楽しい面もあるのだが、歳を重ねるにつれて負担に感じるようになったのだ。
 私は着物が好きなのだが、プレタの着物は買わない。試しにどんな素材、作りなのかと二度、買ったけれども、両方とも満足できなかった。誂(あつら)えの着物は店に行って反物を選んで「お願いします」といったら、自分の体に合ったものが仕立て上がってくる。肩幅、バスト、ウエスト、アームホール、ヒップ、着丈、身幅など、チェックしなくてはならないポイントが多い洋服に比べて、本当に楽なのだ。洋服にもオーダーメイドはあるが、それは目玉が飛び出るほど高い。着物は十年、二十年と着られるけれど、せっかくオーダーしても洋服の場合は難しい。
 通販で買っていたのは、ほとんど普段着だった。たまに外出着も買ったけれども、高価なものはない。最初は失敗するんじゃないかと、不安はないわけではなかったが、問題もなくスムーズに事が進むと、通販で衣類を買うのが当たり前になっていった。店の中を歩き回って服を見なくても、画面にはずらっと在庫の画像が映し出される。その中から選ぶので十分だった。これまで先方が注文を間違えて、同色の別の素材の商品を送ってきたときに取り替えてもらったのと、メーカーの内部調査で商品の色落ちの不備がわかり、交換か返金かと問い合わせがあったので、返金してもらった二回しか、トラブルはなかった。

 以来、私は通販をずっと便利に使ってきた。配達もスピードアップされてきて、実際に店頭で購入する商品の数よりも、通販で購入する数のほうがずっと多くなっていき、本のほとんどを通販で購入するようになっていた。その他、大型のものはもちろん、ちょっと買いに行くのが面倒くさいものも、不精をして買っていた。週に一度、食材の通販も頼んでいた。通販がなければ生活が滞るくらい、利用していたのである。ところがそれまでほとんどミスもなく、順調に通販を利用できていたのに、あれっという出来事が起こるようになった。
 あるとき帯を収納するため、組み立て式のシェルフを大手の通販会社に土曜日指定で注文した。しかしその日に届かなかった。当時はまだインターネットで配送状況を確認できるシステムはなかったと思う。通販会社に連絡すると、担当の若い女性が出た。いったいどうなっているのかとたずねると、彼女は、
「そうですか」
 と黙ってしまった。
「どうなっているのか状況を知りたいんですけれど」
 というと、彼女は、
「平日指定だったら、こんなことにならなかったのに」
 といったのである。
(はあ?)
 一瞬、私は受話器から流れてきた、彼女の言葉を反復し、
「ということは、私が土曜日指定にしたのが悪かったということですね」
 と静かにいった。すると、
「いいえ、そういうことではありません」
 という。
「でもさっきのあなたのいったことは、そういう意味ですよ」
 また彼女は黙った。客の対応係なら腹の中でそう思っていなくても、
「申し訳ございませんでした」
 のひとことで、何とかなるものである。それがいえないのは、仕事として×である。結局、月曜日にシェルフは無事届いたけれど、通販の着いた、着かないという、こういうところが面倒くさいなあと思ったのも事実である。しかしこういうトラブルはまれだと考えていたのだ。
 ところが特にここ六、七年でトラブルが多発するようになった。食材を宅配してもらっていた会社はひどかった。配達してくれていたのは「ネコ」だったのでそれについては何の問題もなかった。利用した当初は問題がなかったのに、注文回数が増えるにつれて、注文したのと違う商品が入るようになった。すぐに会社に電話をすると、調べてみるとはいうけれど、箱詰めをした人が別の商品を入れたのは間違いないわけである。そして不足しているのなら後で送ってもらえればいいのだが、間違って送られてきた商品を、返品せずにお詫びとしてそのまま納めて欲しいといわれるのがいちばん困った。
 その間違われた食品は、私がほとんど興味もないし食べる気もない、生クリームが入った冷凍のたいやき三袋だったりする。食材の通販を利用している人は、子育て中の家庭が多いと思われるので、そういった人たちが子供のために買うようなものが入っている。しかし私の周囲ではそのような子持ちの人はおらず、また食べられる人、食べたい人は誰もいなかったので断腸の思いで捨てた。
「今後、このようなことはないようにいたします」
 担当者はそういったが、半年後にも違う品物が入っていた。今度は冷凍の甘いパンである。また電話を入れると、先方の話は前と同じだった。そしてすぐに品物は送るので、お詫びとして返品せずにそのまま納めて欲しいという。
「うちで食べられないものをいただいても、困るのですが」
「そうおっしゃらずに、とにかく納めていただいて……」
 担当の男性は小声になった。私は持病はないけれど、何かしら禁止されている食品がある人に間違ってそれを送り、お詫びとして納めて欲しいといっても迷惑なだけである。といってもそれをまた返品すると、衛生上の問題が起こるので、それよりも相手に食べてもらったほうがよいという考えが、先方にはあるのだろうけれど、私は、
「これで二度目なので、もし、次があったら契約を考えます」
 といって電話を切った。
 ところが三か月後、その三回目が起こった。今度もまた子供用の冷凍のお菓子が届いた。
「私が頼んだ、冷凍鶏もも肉はどこへ」
 と悲しくなった。きっと誰かのところに送られて、その人たちはまあ食べられるだろうからいいかもしれないが、私はまたもったいないと思いつつ、これを廃棄しなくてはならない。今回は二個口のうち、一つは間違いなく届いているので、冷凍用の箱の住所ラベルを貼り間違えたらしい。
 またまた会社に電話をかけると、担当者は前と同じことを繰り返すだけだった。
「いい加減にして欲しいです。これ以上は我慢できないので契約を解消します」
 といって、すぐに解約した。解約理由もこれまでのいきさつを全部書いた。この会社を利用していた人の感想をインターネットで見てみたら、間違った商品が届いたという人が多く、社内のチェックシステムに問題があるようだった。多少、価格が高めなのも、こういった無駄な経費の分が上乗せされているのではないかと疑いたくなった。この件で食材を通販で購入するのはやめにした。

 トラブルがあった会社と関わるのをやめれば、当然、トラブルは減るわけだが、次には宅配会社とのトラブルが多発した。不思議なことに「ネコ」はまったく問題がないのに、「人間」はとてもひどく、民営化になったところにも、日時指定の荷物を何度か放置された。周囲に聞くと、
「うちのほうは『ネコ』はだめで、『人間』のほうがちゃんとしている」という人がいたり、「特にどの会社ともトラブルはない」という人がいたり、私と同じように「『人間』には困っている」という人がいたりなど様々だった。その地域によってずいぶん違っていた。
 これまでは本を購入するために利用していた書店が、どこも「ネコ」を使っていたので、特に問題もなく受け取っていた。「人間」にも運んでもらってはいたが、時間的にルーズなのは把握していた。しかし私の場合はたいてい家にいるので、午前中が午後になっても、配達され受け取れればまあ仕方がないと考えていた。当時うちの飼いネコが、とても気に入っていた外国のネコ缶があり、それを取り扱っている店舗が、「人間」の配送だった。そしてその店は即日配送で、注文してすぐに届くのを売りにしていた。都内の店だったので、注文して翌日に届くと思っていたのだが届かない。まあそういうこともあるだろうと、鷹揚(おうよう)にかまえていたのだが、その翌日も届かないのである。これはおかしいと、その店のメールに付記してあった、伝票番号で追跡検索してみた。このときが追跡検索システムを使った最初だったと思う。結果はここ何日かの間、ずっと配達中になっていた。ということは、配達されるのだろうと待っていたのに、その日も夕方になっても配達されなかった。
 そこで「人間」の管轄の営業所に連絡をして、
「ずっと配達中になっているけれど、今、荷物はどこにあるのですか」
 と聞いたら、電話に出た男性は、
「さあ、配達中なのでドライバーの車の中だと思うんですけど」
 という。
「ここ何日も配達中のままなんですが、大丈夫なんですか」
「さあ、それはこちらではわかりません」
 私はあまりの責任のなさに、むっとして、
「荷物を預かっておいて、わからないってどういうことですか?」
 と怒ると、彼がいうには、すべてドライバーにまかせているので、こちらではわからないという返事だった。そして調べてすぐに電話をするというので、ここでうまくまるめこまれてはたまらないと、
「結果がわかってもわからなくても、一時間後に必ず電話をください」
 といった。
 案の定、一時間後に電話は来なかった。また営業所に電話をして、さきほどの男性の名前をいうと電話に出た人は、
「今、いません」
 といった。はあ? と呆れながら、これまでの事情を話し、
「あなたたちに頼んでも埒(らち)があかないから、私が直接電話をするので、ドライバーさんの携帯番号を教えてください」
 と番号を教えてもらい、ドライバーに電話をかけた。すると、
「はあい」
 と面倒くさそうな声が聞こえてきた。そこで、
「荷物がいつまでたっても配達中で届かないのですが、どうなっているのでしょう」
 となるべく平静を装って話すと、
「あっ」
 と彼の声が変わった。営業所との連絡だと、あのような応対になるのだろうか。とても関係がうまくいっているとは思えなかった。私が住所と名前と伝票番号を告げると、
「あのう、車に積んだまま忘れてました。すみません」
 と謝ってきた。
「それでいつ届けてもらえるんでしょうか」「これからすぐにうかがいます」
 三日間放置されていた荷物は四十分後に届けられた。受け渡しのときには、私はドライバーにはクレームめいたことはいわず、ただ「ご苦労様」といっただけで他に何もいわなかった。ただ、即日配送を売りにしているペットフード店には、この件は伝えたほうがいいと思い、
「配送会社の問題で、御社とは直接関係ないことですが」
 と一連の話をメールで連絡しておいた。するとその店の担当者が、
「とんでもないことを」
 と激怒してしまい、店の管轄営業所に報告するので、こちらの担当ドライバーの名前を教えて欲しいという話になってしまった。私のほうは荷物が届いて、とりあえずは一件落着しているのだが、店としては信用問題に発展するので、見過ごせなかったのかもしれない。そして後日、
「うちの管轄の営業所からも、きっちり話を通しておきました」
 と連絡をいただいた。これでちゃんと配送されるようになるかしらと期待していたのに、「人間」は相変わらず、ぐずぐずだった。それからしばらくして、そのドライバーは配達に来なくなった。
 日時を指定しないと、またずっと車に積まれたままになるのではないかと心配になったので、この件以来、日時指定扱いにしてもそれは完全に無視。午前中指定でも、
「こちらに到着するのが遅かったので」
 と午後に持ってくる。
 また夜に荷物が届けられ、本が届くはずだったのに、箱の大きさが変だなと思いつつよく見てみたら、ご近所の住所の女性宛のケーキだった。日時指定がしてあったので、あわてて営業所に電話をして、
「たった今、配達してもらった荷物が間違っていた」
 と連絡をした直後、ドライバーの若い男性が間違いに気がついて戻ってきた。
「この人、きっと待っていると思うから、早く持っていってあげたほうがいいわよ」
 というと彼は、
「あ、そうですね。申し訳ありません」
 と走って帰っていった。
 不在票がマンションの他の部屋の郵便受けに入っていて、その方がわざわざ持ってきて下さらなかったら、私はずっとわからないままだったこともあった。その日、私はずっと家にいたが、配達にはこなかった。インターフォンで部屋番号を間違えて押し、そのお宅が不在だったので不在票を入れて帰ってしまったらしい。このドライバーはトラブルがあると、きちんと謝ってくれるので、感じは悪くなかった。朝から晩まで配達し続けて、大変だと思う。これは配達をまかされているドライバーの、責任感のなさと段取りの悪さもあるかもしれないけれど、根本的に会社のシステムの問題があるのではないか。
「ネコ」がちゃんとできているのに、どうして「人間」にできないのかが理解できなかった。ただ「ネコ」の営業所は近所にあるのだが、「人間」のうちの営業所はそれに比べてとても遠方にあった。歩いて五分ほどのところに、隣区の営業所はあるのだが、管轄はそこではない。そういうところも問題がありそうだった。
 それから何度、荷物が放置されたことだろう。タイミングの問題なのか、営業所に電話をしても、営業時間中なのにもかかわらず、誰も出ないで連絡がつかないことも多くなった。インターネットで追跡検索しようとしても、「瞬時にどこに荷物があるかわかる」と書いてあるが、一昨日、昨日の日付で北、東、西、と複数あるらしい、関東中継センターに輸送中などというわけのわからぬところで止まっていたりして、現在、荷物がどうなっているのか見当がつかない。こういう思いをするのはいやなので、通販でものを買おうとして、配送会社が「人間」のみだと、買うのをやめるようになった。
 荷物が配達されず、こちらでは把握できないところにあったことが、それから三回あった。一度は営業所の電話に女性が出て、この人は丁寧に謝ってくれて、これから三十分後に届けるといい、そのとおりにいつものドライバーではない男性が届けてくれた。また編み物のために大量に毛糸を購入したら、これもまた届かず、追跡検索もできなかった。そこで購入した毛糸店に、三日経過しているが届かないとメールを送ると、すぐに荷物が届いた。伝票を見てみると、私は日時を指定しなかったが、先方が気を利かせて翌日の日時を指定してくれていたのに、それでも届かなかった。
 そして予約注文していた衣類が出来上がり先方が送ってくれたのに、三日経っても配達されず、それもまたどこかに行ってしまった。こちらも送り主の会社に連絡をして、管轄の営業所から連絡をしてもらったら、その日の夜、配達された。個人で営業所に連絡するよりも、営業所同士で話をしてもらったほうが、スムーズに行くような気もした。しかしあまりに連続でトラブルが続くため、ネコ缶、重いものの購入などの、どうしてもやめられない通販以外は、やめたほうがいいかもしれないと思うようになった。

 その後、「ネコ」の受け付けている荷物が大量で、対処できないというニュースを見て、利便を追求しすぎて、彼らに負担をかけていたのだとわかった。きちんと給料を支払われ、休みも取らないと人としての生活が成り立たない。うちに配達してくれる「ネコ」のドライバーの方々とは、雑談をしたりするのだが、
「忙しくて大変」
 という話はよく聞いていた。正月も休むのは一日だけで、二日から配送していたのではないだろうか。こちらは家にいたままものを買い、そして「ネコ」や「人間」に、雨、雪、大風の日でも玄関まで配達してもらえる。それが当たり前になってしまった。
 その「ネコ」の労働問題がニュースになってから、どういうわけか「人間」の配送が信じられないくらい、スムーズになってきたのは不思議だった。仕事先や知り合いが送ってくれた日時指定もきちんと守られ、これまでのトラブルの連続が嘘のよう。会社がシステムを変えたのか、何かを改善したのだろう。しかしインターネットで追跡をしてみると、朝、七時前から配達に出ている。以前、午前中指定なのに午後に配達されていたときは、配達の開始時間がもっと遅かった。荷物は届いていたのに、配達に出るのが遅かったのだろう。しかしどちらにせよ、ドライバーには負担がかかる。一個運んだらいくらという、歩合制ではないと思うので、なるべく彼らの負担にならないほうがよい。現在の宅配便の環境はとてもスムーズで最高なのだが、私は物品をバザーに出すとか、飼いネコの缶詰を箱買いするとか、最低限の用事以外には、もう宅配便を使わないようにしようと決めた。
 そして現在は衣類も本も通販では購入していない。買っているのはネコ用の物品だけで、あとお願いしているのは、バザー品の発送、出版社とのゲラの受け渡しくらいだ。配送のトラブルがなくなったのと同時に通販をやめたのは、タイミングが悪かったとしかいいようがない。と思っていたら、最近また「人間」が元の状態に戻りつつある。どうなっているのだろうか。またもうひとつ、通販は楽だったが梱包してある段ボール箱の処理が、だんだん面倒くさくなってきていた。通販を利用していた当時の私にとっては、外に出て店をまわって買い物をするよりも、家の中で段ボール箱をつぶして、ビニール紐で縛ってまとめるほうが楽だった。
 しかし今はそうではない。通販の回数が減れば、それだけその作業をしなくてもよくなる。ほぼ毎日、複数の通販の荷物が届いていたときは、資源ゴミの日に段ボール箱をつぶして紐でくくった束を、毎週、大量に集積場に運んでいたけれど、今は月に一度で済むので、本当に楽になった。ひとつやめると、芋づる式に楽になるのがよくわかった。これからもこの方式で、歳を重ねていく自分に負担がかからない方法を見つけていきたいと思っている。

次回は12月13日の更新予定です。

著者情報

群ようこ(むれ・ようこ)

1954年東京生まれ。日本大学芸術学部卒業。
広告会社などを経て、「本の雑誌社」勤務の傍ら、1984年にエッセイ『午前零時の玄米パン』を刊行。
同年に同社を退職し専業作家となる。
小説に『無印OL物語』などの<無印>シリーズ、『かもめ食堂』『ネコと昼寝 れんげ荘物語』『優しい言葉 パンとスープとネコ日和』『ついに、来た?』、エッセイに『ゆるい生活』『欲と収納』『よれよれ肉体百科』『衣にちにち』『かるい生活』、評伝に『贅沢貧乏のマリア』『妖精と妖怪のあいだ 評伝・平林たい子』など著書多数。

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