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Shueishagakugei

謹んで「熊本地震」災害のお見舞いを申し上げます。

熊本地震により甚大な被害が発生いたしました。
お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りいたしますとともに、
被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。
一日も早く平穏な日々が戻りますよう、そして復旧がなされますよう心よりお祈り申し上げます。

(株)集英社

  • 集英社・熊本地震災害被災者支援募金のお知らせ

謹んで地震災害のお見舞いを
申し上げます。

東日本大震災により被災された皆様に、心からお見舞い申し上げます。
また、被災地等におきまして、救援や復興支援など様々な活動に全力を尽くしていらっしゃる方々に、深く敬意と感謝の意を表しますとともに、一日も早く復旧がなされますよう心よりお祈り申し上げます。

(株)集英社

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  • 集英社・東日本大震災被災者支援募金募金状況とご報告

情報・知識&オピニオン imidas

加藤由子のガチ猫談義

Columns

猫好き同士が顔を合わせれば、猫談義は花盛り。やっぱり猫はたまらない!! 動物ライターの加藤由子と猫好き著名人が、猫の魅力についてとことん語り合います。

川上麻衣子さん(女優)
人生は猫がいるかいないかの2通り。猫のいない人生は考えられません。
 川上麻衣子さんの著書『彼の彼女と私の538日』(竹書房)は、猫との日々をつづったエッセーですが、他の猫エッセーとは少し違う読後感がありました。川上さんの死生観が伝わってきたからです。冷静で毅然(きぜん)とした、それでいて優しい死生観でした。女優という職業故に、生とは何か、死とは何かについて自分なりの答えを求め続けているからなのかもしれません。会うのが楽しみになりました。

猫の模様の不思議

加藤 こんにちは。あら、お出迎えしてくれたのね。人なつこいコですね。いいモデルさんになってくれそうです。おお、もう1匹来てくれた。ありゃまあ、デカイですね。

川上 白黒の大きい猫が「アクア」。スコティッシュ・フォールドの男の子で、3月で17歳になります。こっちは「ココロ」で女の子。同じく3月生まれでもうすぐ2歳です。ココロの母猫は野良猫で、虐待されて瀕死(ひんし)の状態で保護されたそうです。そのとき、おなかに4匹身ごもっていて、帝王切開で生まれた中の1匹がココロです。当時、私は舞台公演があり面倒が見られなかったので、舞台が終わったころに引き取り手がなければ考えようと思っていたんです。そうしたらまだ2匹いて、知り合いが1匹引き取ってこのコだけ残ってしまったから、これも縁だと思って私が引き取りました。うちに来たときは生後4カ月でした。

加藤 あっ、ココロの特徴、見つけちゃった! シッポの先端がポチッと白い。

川上 そうなんです。あと脇の所にもちょっとだけ白いのがあります。

加藤 自分の猫の顔って飼い主はよくわかっているつもりでも、万が一迷子になって「この猫、お宅のですか?」って顔写真だけ見せられたら、案外わからないと思うんです。うちにもココロに似た柄の「ちび」という猫がいて、顔の特徴を覚えているつもりなんだけど、白い毛があるのは右だっけ? 左? と迷うときがある。だから、体のどこかにわかりやすい特徴があるといいですよ。絶対に顔だけでわかるというのは、飼い主の過信(笑)。

川上 動いている姿を見ればわかるかもしれないけど、顔写真だけだと確かに難しいかも。ココロは生まれた動物病院では「腕までキジちゃん」って呼ばれてたんですよ。他の3匹は足先だけが白くてソックスをはいているみたいだったのに、ココロのキジトラ模様は腕までなので。

加藤 猫の柄や色の発生って、背中側から下に伸びていくんですって。だから、どこまで伸びるかで柄に違いが出るんでしょうね。ココロはちょっとアンバランスにソックスをはいてしまったのね(笑)。

川上 へえ〜、面白いですね。背中からマントを羽織ったような感じですかね。ココロは背中からキジトラが伸びて、足先までは届かなかったってことですね。

加藤 顔も濃い色は上から下に伸びるんですよ。アクアみたいな白黒も上が黒くて下が白。上が白くて下が黒いっていう柄はまず見かけないでしょ。あっ、ココロの特徴、もう一つ見つけた。鼻の周りに模様があって、ちょっと鼻クソ猫ですね(笑)。

川上 そうなんですよ。きょうだいはもっと鼻クソ猫でした(笑)。ココロは鼻の模様がちょっとハート形に見えるので、「ココロ」って名前にしたんです。

加藤 ホントだ、ハートに見える! かわいいですね。


猫3匹はちょうどいいバランス

加藤 ココロが来たときのアクアの反応ってどうでしたか?

川上 アクアはどうでもいいのか、ほとんど反応しなかったですね。

加藤 猫が好きな猫と、猫が嫌いな猫がいるんですよね。

川上 アクアは猫よりも人間が好きで、人にはすぐなつきます。ココロが遊んでほしくてアクアに近付くけど、アクアは面倒くさそうにして、ときどきシャーって怒ってます。

加藤 ココロはまだ若いからよく遊びますね。

川上 オモチャはシンプルなものでいいんです。うちの猫は髪の毛を縛るゴムとかにじゃれて遊ぶのが好き。高価なオモチャにはあんまり興味がありません。

加藤 うちも。買ってきて3秒で燃えないゴミ(笑)。お部屋にすてきなものがたくさん飾ってありますが、猫に落とされませんか?

川上 飾ってあるものは倒さないけど、ココロはちょっと目新しいものがあると、とりあえず落とさないと気が済まないみたいです。で、落としたときに私の顔をちらっと見て反応をうかがう。これ、ダメなやつ? みたいな(笑)。

加藤 うちは猫がものを落とすから、もう最初から落としておくしかない(笑)。で、だんだんものを置かなくなって部屋が殺風景になっていったけど、川上さんはすてきにものを飾っているので感心しました。

川上 しばらく子猫もいませんでしたからね。ココロが来るまで、アクアと去年の夏に19歳で亡くなった「リッカ」の2匹で、15年以上子猫と接していなかったので、猫ってこんなに跳ねるんだって、久しぶりに思い出しました。

加藤 うちの猫たちも10歳と18歳だから、子猫や若い猫の姿を見ると、猫ってこうだったって思い出しますよ。

川上 オモチャに向かってお尻振って飛びかかる姿とか、まだ子どもだなって思います。

加藤 もう1匹子猫がいるとココロの遊び相手にいいかもしれませんね。

川上 そうなんですよ。うちはずっと3匹体制だったので、3匹がバランスいいと思うんです。猫を飼い始めた最初の7年間は1匹だけで溺愛(できあい)していたんですけど、2匹になったときにこんなにいいものなんだと思いました。数は倍になったけど、気持ちや手間は半分で楽になった。そのときの2匹がすごく仲が良かったので、寄り添ってグルーミングし合っている姿を見たら、自分がそこに加われなくても見ているだけで幸せなんです。

加藤 わかる! 1匹だと「人間」対「猫」になって、「人間代表です」「猫代表です」「どうぞよろしくお願いいたします」って感じになるでしょ。2匹になると猫の社会を築きつつ人のほうも向いてくれて、より猫らしさが見られる。そこが面白いなあと思います。2匹だとうまくいかなくても3匹いると緩和されてうまくいくということもあるでしょ。

川上 ありますね。

加藤 やっぱり十猫十色でそれぞれ違うから、面白いんですよね。


猫から教えられる死生観

加藤 川上さんが書かれた『彼の彼女と私の538日』というエッセーを読みました。当時おつき合いしていた彼から預かった15歳の「グリ」という老猫と過ごした日々が写真とともにつづられていましたが、最初は警戒していたグリの顔付きがどんどん穏やかに変化していく様子が伝わってきました。

川上 私もグリがあんなになれてくれるとは思いませんでした。最初は本当にふてぶてしくて怒ってばかりいたのに、私の胸の上にちょこんと座ったときは感動しました。その後、どんどんかわいくなっていきました。

加藤 彼とのお付き合いがうまくいかなくなってもグリだけが残り、グリの最期を川上さんが看取るという不思議な縁でしたね。

川上 私はグリに対してはどこかでずっと申し訳ないという気持ちがありました。もともとは彼の猫だったのに私のところに残してしまったこともそうですし、グリがいたことで彼との距離を保っていたようなところもあったし、病気になってしまったのも、もしかしたらストレスからじゃないかとか、いろいろ考えていたので。

加藤 そんなことないんじゃないかな。川上さんと一緒にいられて、グリは幸せだったと思います。

川上 そう思ってくれていたらいいんですけどね。

加藤 川上さんは猫たちの最期に立ち会って、ちゃんと看取っているのがすごいですよね。外出していて間に合わなかったということも考えられるし、仕事の合間とか、どうなるかわからないですよね。うちにもヨボヨボの18歳がいますから、今、死んでてもおかしくないといつも思っています。

川上 もう絶対に見逃すもんかというくらい集中して私が見ているからじゃないでしょうかね。それに、逝くタイミングは猫が決めるんです。猫はうまい具合にこっちを見ていて、タイミングを合わせてくれているんじゃないかと思っています。それから、猫はそう簡単には死なない。うまく生きるということもわかりました。15歳を超えて17、18歳になった猫は、根本的な生命力が強いので、そう簡単には死なないって獣医さんに言われたんです。19歳で亡くなったリッカには甲状腺機能亢進症の持病があって、具合が悪くて危ない状態になったときと舞台の大阪公演が重なってしまい、覚悟して大阪に連れていったんです。でも持ち直して、その後1年も生き延びたので「あれ?」って。ごめんね、死ぬなんて言ってしまってって感じで(笑)。

加藤 せっかく心の準備もしてたのにね(笑)。

川上 本当にそうですよ。残りの1年間は、リッカからのプレゼントだったという気がしています。

加藤 川上さんのエッセーの中に、猫から死生観を学んだとありましたが、同感です。私は団塊世代の最後のほうで、そろそろ自分の死の迎え方についても考え始める年代ですから、身近にいる猫は死生観を教えてくれる存在でもあります。

川上 猫って最終的には餓死だと思うんです。自ら食べることを拒絶しますよね。

加藤 人間の医師も言っていましたが、だんだん食べられなくなって餓死するのは死に方としてはいちばん楽なんだそうです。食べられないということは体が受け付けないということ。

川上 生きる力がもうないということなんですよね。

加藤 うちの前の猫は腎臓が悪くなって18歳で死んだんですが、だんだん食べなくなったとき、友人の獣医師から自宅での補液を勧められたけど私はやらなかったのです。息を引き取ったと報告の電話をしたら、「何で補液をしなかったの?」と言われて、「苦しんでなかったから」と答えたら、「あんたにわかるはずはない」と言われたんです。だから、今18歳の「まる」には補液を試していて、確かに体力が落ちていくのがガクンとではなく緩やかになった感じはします。どこまでやるかは飼い主の判断次第ですが、猫が苦しまずに逝けるのがいちばんだと思います。

川上 私も過度な延命は反対です。自分が死ぬことを考えると、やっぱり放っておいてほしいと思うし。

加藤 でも猫を残しては死ねませんよね。

川上 もちろんです。周りに猫好きの友達が多いので、もしも私に何かあったら引き取ってね、と約束してあります。


猫は師匠のようなもの

加藤 猫のいない生活って想像できますか?

川上 人生には2通りの生き方があって、一つは猫のいる人生でもう一つは猫のいない人生だって言葉を聞いて名言だと思ったんですが、私は猫がいない人生なんて考えられないですね。

加藤 ほんとに名言ですね。最後にいつも皆さんに聞いてるんですけど、川上さんにとって猫とは何ですか?

川上 え〜、難しいですね。私にとって猫……、何ですかね。何だろう? ともに生きているものなので、当たり前すぎて考えたこともなかった。うーん、猫から教わることも多いという点では、師匠みたいなところもあるかな。

加藤 いろいろ教えてくれるのは確かですよね。うちの猫が窓からぼーっと外を眺めている後ろ姿を見ていて、私も生きるって何だろうなんて深いことを考えてしまいました。私たち人間って、生きるためにクリアをしなくちゃいけないものがいっぱいあるような「錯覚」に陥っているでしょ。でも猫はもっとシンプルで、動いて食べて寝る。もし、明日食べるものがなくなってても、あたふたしないでしょうね。ただ「いる」ことが「生きる」ことだという感じですよね。

川上 私たちが生きていて迷うこととか、死んだらどうなるのと思う不安などを超えたところにいてくれる、そういう生き物がそばにいるという安心感みたいなものもあるかもしれません。それに、猫は野性の部分を残しながら、人間とともに生きてくれているのも魅力的です。猫って自分の体の5倍以上の高さまでジャンプできるって言われますけど、人間だったら絶対にそんなに跳べないじゃないですか。違うっていうことはとても神秘的に感じます。

加藤 違う世界がちょっと垣間見えるところも猫と暮らす醍醐味ですよね。すてきなお話をありがとうございました。
 



◆一筆御礼 ~対談を終えて

「猫は逝くタイミングを合わせてくれる」という言葉に同感です。猫との絆がそう信じさせてくれるのでしょう。冷静な死生観は猫への深い愛情故に生まれるのだということも改めて実感しました。私たちは死というものから目を背けて暮らしがちですが、死は生の延長線上に自然に存在すること、幸せな生があれば死は否定すべきものではないことを、私も常々感じています。人にも猫にもいずれ死が訪れることは紛れもない事実、だから今の幸せを大切にし、楽しむのだという川上さんの気持ちがよくわかりました。

 ところで、帰りしなに日本酒がズラリと並んだキャビネットがふと目に入り、思わず「川上さんってのんべなんですか?」と聞いたら、ちょっと恥ずかしそうに「ええ」。あら、私も大いなるのんべです。いつか、ほろ酔いで死生観を熱く語る川上さんに、ぜひまたお会いしたいものです。

写真:慎芝賢


川上麻衣子 (かわかみ まいこ)
女優
1966年スウェーデン・ストックホルム生まれ。14歳で女優デビューし、『3年B組金八先生』(TBS)の生徒役で注目される。以降、数々のテレビ、映画、舞台などに出演。2005年より、ガラスデザイナーとしても作品を制作し、各地で個展も開催。16年10月、スウェーデン直輸入の小物や家具などを販売するショップ「SWEDEN GRACE」を東京・谷中にオープンさせた。また、猫好きのために情報を発信するWEBマガジン「にゃなか」に、「にゃなか市長」として参加、フォトエッセーを連載中。
にゃなか http://nyanaka.com
SWEDEN GRACE https://swedengracestore.com

加藤由子 (かとう よしこ)

動物ライター
動物ライター、エッセイスト。「ヒトと動物の関係学会」監事。1949年生まれ。日本女子大学卒。大学では生物学(動物行動学)を専攻。移動動物園などを経てフリーライターになる。動物、特にネコの生態や行動学に精通し、ネコに関する書籍などを多数執筆している。ネコ関連の著書に、『雨の日のネコはとことん眠い』『ぬき足、さし足、にゃんこ足』(共にPHP研究所)、『ネコを長生きさせる50の秘訣』(サイエンス・アイ新書)、『猫の気持ちを聞いてごらん』(幻冬舎文庫)、『猫式生活のすゝめ』(誠文堂新光社)、『猫とさいごの日まで幸せにくらす本』(大泉書店)、『猫の気持ちは見た目で9割わかる!』(大和書房)ほか多数。現在は、まる(17歳)、ちび(9歳)の2匹の猫と暮らす。

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