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Shueishagakugei

謹んで「熊本地震」災害のお見舞いを申し上げます。

熊本地震により甚大な被害が発生いたしました。
お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りいたしますとともに、
被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。
一日も早く平穏な日々が戻りますよう、そして復旧がなされますよう心よりお祈り申し上げます。

(株)集英社

  • 集英社・熊本地震災害被災者支援募金のお知らせ

謹んで地震災害のお見舞いを
申し上げます。

東日本大震災により被災された皆様に、心からお見舞い申し上げます。
また、被災地等におきまして、救援や復興支援など様々な活動に全力を尽くしていらっしゃる方々に、深く敬意と感謝の意を表しますとともに、一日も早く復旧がなされますよう心よりお祈り申し上げます。

(株)集英社

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情報・知識&オピニオン imidas

加藤由子のガチ猫談義

Columns

猫好き同士が顔を合わせれば、猫談義は花盛り。やっぱり猫はたまらない!! 動物ライターの加藤由子と猫好き著名人が、猫の魅力についてとことん語り合います。

海原純子さん(心療内科医)
猫が幸せそうにしていると、一緒にいる人も幸せな気分になれるんです。
 心療内科医として数々の著書を出してきた海原純子さんが、なんと猫本を出しました。でも、ご自分の猫の話ではありません。書名は『こんなふうに生きればいいにゃん』。副題は「心療内科医がネコから教わった生き方のコツ」で、"猫のように嫌なことはすぐに忘れ、無駄な労力を使わず、自分の感性を何よりも大切にして生きればいい"が本のテーマです。

 読みながら思いました。私は気づかないままに猫のように生きていました。猫好きたちは皆、同じではないでしょうか。猫好きに心療内科医は必要がないのかも!?

裏目に出た2匹作戦

海原 加藤さんの本は、以前から読ませていただいています。特に『雨の日のネコはとことん眠い』(PHP研究所、1990年刊)は大好きでした。だから、今日は楽しみにしていたんですよ。

加藤 ありがとうございます。光栄です。それでは、まず海原さんちの猫の紹介からお願いします。

海原 このコは「フー」ちゃん。10歳です。もう1匹、15歳の「ミー」ちゃんがいるんですが、とても人見知りで。

加藤 2匹の相性はどうですか?

海原 ダメです。私が出張がちなので、もう1匹いたほうが仲良く留守番できるんじゃないかと思ったんですが、ぜんぜん合わなくて(笑)。どっちもメスなんですが、性格がちがうんです。ミーはどちらかというと、ひとりでじっと空を見ているのが好きなタイプ。フーは遊ぶのが大好きで、初めの頃は遊ぼうってミーの側に近づいては怒られてた。いつもフーッて言われてたからフーちゃんって名前になったんですよ。

加藤 2匹作戦が裏目に出ましたか(笑)。ミーちゃんの人見知りは、元からですか?

海原 フーが来てから特に、かな。その前はじゃれたり遊んだりしていたんですよ。ミーは頭が良くて、人の気持ちが繊細にわかるんです。私が仕事で大変なときなどは察して、なんとなく側にいてくれる。フーはぼーっとしてて、まったくそういうのはないですね。

加藤 ミーちゃんはいつもどこにいるんですか?

海原 隣の部屋です。ふたりが顔を合わせると、追いかけ合って部屋中すごいことになっちゃうんで、動線を完全に分けて出会わないようにしています。お互い一歩も譲らずに攻めていく感じですから。

加藤 ミーちゃんはずっとひとりで過ごしているんですか?

海原 ひとりが好きなんですよ。でも、夜に私と一緒に寝るのはミーで、フーはこの辺で寝てます。

加藤 フーちゃん、お腹のところがたぷんとたるんでいるのが、アメショー(アメリカン・ショートヘアー)っぽくて、かわいいですね。でもこのコ、足が太いですね。あ、レディに向かってごめんね(笑)。

海原 確かに足が太くて短いんです。態度もデカイ。女のコっぽくないんです(笑)。


かなわぬ猫の恋の顛末

海原 ミーの前には「ダダ」というアメショーがいました。ダダはとても性格が良かったので、アメショーはみんなこうかと思ったら、ミーはちょっと気むずかし屋さんでした。

加藤 オスは飼ったことないんですか?

海原 ダダはオスでした。性格は良かったけど、壁にオシッコをひっかけるマーキングがひどかった。去勢手術をしたけど時期が遅かったみたいで、オトナになっても治りませんでした。部屋中がオシッコだらけになって、引っ越すときに賠償金がものすごくかかったので、それ以降はメスです。

加藤 マーキングの原因、何かあったんじゃないんですかね。

海原 ちょっと思い当たるのは、ベランダ伝いに隣の家の猫がのぞきに来てたんです。

加藤 その猫もオスだったんじゃないですか?

海原 オスでした。

加藤 原因はそれですよ! 隣のオスが来るから、何とか自分のなわばりを守らなくちゃって思ってマーキングしてたんですよ。

海原 そうだったんですかね。お隣の猫はダダがメスだと思っていたみたいで、夜這いに来てたんです。で、その猫が亡くなったときにお隣さんからキャットフードをたくさんいただいたので、お悔やみを言いに行ったら、飼い主さんに「お宅の猫ちゃんのことが大好きで、初めての恋でした」って言われたんです。腎臓が悪かったんだけど、無理をして毎晩、会いに行っていたんだと。だから、うちもオスだって言えなくなっちゃって(笑)。

加藤 アハハハハハ。もしその人がこの記事を読んだら、「ええーっ! あの猫、オスだったの!!」ってショックを受けるでしょうね(笑)。

海原 いやいや、もうずいぶん前のお話ですから(笑)。


几帳面な群れ生活者には猫マインドが必要

加藤 海原さんが書かれた『こんなふうに生きればいいにゃん』(海竜社、2016年刊)を読ませていただきました。改めて思ったのは、こういう自己啓発本って猫だから成立するんですよね。「犬に学ぼう」っていうのはあんまりないような……。

海原 犬って号令で人の言うことをきくけれど、猫ってそうじゃないところがいいんですよね。私が猫といてほっとするのは、猫が我慢していないからです。犬だと、もしかすると私が主人だから我慢して言うこときいているんじゃないかって、こっちが気を遣って疲れてしまうところがある。でも、猫はストレートで正直だから、安心できるんです。よく「お前は会社の犬だ」とか「○○は■■のポチだ」みたいな言い方をすることがあるけれど、「○○は■■のタマだ」とは言わないでしょ。タマだとなんだか上下の関係性がおかしくなっちゃう(笑)。

加藤 アハハハハ、確かに。でも、猫は単独生活者だから、猫としてこういう生き方が当たり前で、私たちがいろいろと気を遣うのは群れ生活者だからですよね。私たちが猫を見習って単独生活者のように暮らしていいのかなって気がしないでもないですが。

海原 人も単独生活者になりましょうということではなく、猫のマインドを多少取り入れつつ群れ生活をすれば、もっとのびのび自分らしく生きられるんじゃないかということです。

加藤 なるほど。私たちが群れ生活者として几帳面に群れのルールを守りすぎているということなんでしょうかね。

海原 特に日本人がそうなんだと思います。日本は「お上(かみ)」とか「みんな」という精神的な束縛がとても強く、そこから外れることを極端に恐れる。農耕民族の村社会、そのあたりの意識がずっと続いているような気がします。アーノルド・ミンデルという心理学者が、社会には見えない部分にゴーストがいて、そのゴーストに縛られている、と言っていますが、「みんな」というのは、世間と言ってもいいでしょう。「これがいいんだよね」という、世間やマスコミが作り上げた世界があって、そこに入らなければダメなんだと感じてしまう人が多いんです。

加藤 今の若者たちを見ていて思うのは、批判精神が足りないんじゃないのかということです。なんで疑わないのって思っちゃう。洗脳するのは、簡単じゃないですか? だとしたら、戦争だっていつ始まったっておかしくないですね。

海原 本当にそうなんです。お上に従っていればいい、みんなと同じでいいんですよね。一人で「ノー」と言うのも怖いし、みんなと同じようにできないときには、一人で引きこもってしまう若者が多いですね。

加藤 私は非常勤講師として大学で文章表現を教えているのですが、今の学生はボキャブラリーが貧困だと常々感じているんです。

海原 ボキャブラリーが貧困だと自己表現がうまくできなくて、ストレスを乗り切ることも苦手になるんですよ。外来で患者さんに「そのとき、どういう気持ちですか?」と尋ねると、「どう言っていいかわからない」と返ってくることが多い。自分の気持ちをうまく表現して伝えることができないので、もやもやしてストレスをためてしまうんです。

加藤 言葉が貧弱だと自分で考えが構築できなくて、気持ちの整理がつかず、解決策も見つけられないということなんですね。

海原 そうです。だから、感情と事実の区別がつかない。「傷ついた」と言う人が多いのですが、「仕事でダメ出しされて傷ついた」と言うので、「実際にその仕事はどうだったんですか?」と尋ねると、「確かに仕事の出来は悪かった」と言うのです。出来が悪いのは事実、傷つくというのは自分の感情、それを分けて整理して考えることもできないんです。

加藤 心療内科で猫を飼ったらいいんじゃないですか?

海原 本当にそう! 私、側にいますから、少し猫と遊んでみてくださいって。

加藤 猫カフェ兼心療内科みたいなの、どうでしょう?

海原 いいですね! それ、すごくハッピーですね。

加藤 私、猫好きってうつになりにくいように思うんですよ。だって、朝、起きなきゃと思ったときに、隣で猫が気持ち良さそうに寝ていたら、「遅刻してもいいからもう少し一緒に寝ていよう」って思いませんか? 世界中を敵に回してもいいって(笑)。

海原 そうそう! 思います(笑)。

加藤 猫がいると、「まあいっか」って思えることが多いんです。

海原 ちょっとした心のゆとり、別のものの見方というのが、猫と一緒にいるとできるんですよね。私は患者さんに猫を飼うことを勧めることがあるんですが、それで成功するケースも多いんです。母親との関係がうまくいっていなかった、ある引きこもりの女性の例ですが、病院の帰りにたまたま子猫を拾ったことが大きな転機になりました。母親が動物嫌いだったのですが、「この猫を捨てるなら自分も家を出て行く」と初めて母親に反抗し、自分の部屋の中だけで飼うという条件で、子猫を育て始めたんです。そしたら、猫のごはん代を稼ぐために週に2回、花屋さんでアルバイトを始め、そのうちフラワーアレンジメントの学校に通って資格を取り、さらには講師になったんです。

加藤 そのポテンシャルがあったということですよね。

海原 あるんです。みんな持っているんですよ。心療内科に来る、自分で「ダメな人」だと思っている人は、ぜんぜんダメではないんです。みんなと同じようにできないことがダメだと思っているだけなので、何かきっかけがあれば改善できます。


猫が無防備であるほど平和だと思える

加藤 最後に、海原さんにとって猫ってなんですか? ってこの質問、毎回しているんですけど、猫が側にいるのが当たり前の人にとって、あえてこれを取り出して表現するというのが案外難しいなってことが回を重ねてわかってきました(笑)。

海原 改めて問われるとなんでしょう? 当たり前すぎて、猫のいない暮らしそのものが考えられないですもんね。

加藤 私、最近切実に思うのは、自分が死ぬまで猫を飼い続けられるかどうかということなんですよね。

海原 それなんですよ、私も考えちゃいます。

加藤 今うちにいる猫たちがいなくなったら、もう飼うのはやめようと本気で思っているんです。

海原 でも、猫のいない暮らしに耐えられますか? 私は無理です。自分が死んだ後に猫の面倒をきちんと見てくれる人がいるか、引き取ってもらえる施設を見つけておけばいいんですよね。私が猫を飼い始めたのはまだ研修医だった頃ですから、それから本当にずっと側に猫がいる。当時、ものすごく忙しくて、何か側にいないとおかしくなりそう、そうだ、猫を飼おうって思ったんです。ちゃんと世話ができるかしらとも思ったんですが、どんなに忙しくても猫の世話はまったく苦痛ではなくて、むしろ楽しかった。猫が幸せそうにしていると、幸せな気分って伝染するから、一緒にいる人も幸せな気分になれるんだと思いました。

加藤 それは「同調」ですね。人にとって最初の家畜は犬だと言われていますが、そもそも、動物が嫌いな人って生き延びていないと思うんです。犬の家畜化の始まりは番犬の役割で、犬のほうが先に危険を察知しますから、犬がいることで人は安心して眠れたわけです。安全だと思うから、動物が眠っていたりくつろいでいたりする姿に癒やされる。ということは、動物が嫌いだという遺伝子は人にはなかったはずですよね。嫌いになったのは別の理由があって、根本的にみんな好きなんだと思います。猫がしどけなく寝れば寝るほど、かわいいとか癒やされるとか言いますよね。無防備であればあるほど平和だと思える。猫のそこにみんな惹かれるんじゃないでしょうかね。

海原 なるほど! すごく納得しました。
 



◆一筆御礼 ~対談を終えて

 テーブルの上に乗って近づいて来るフーちゃんに「足、太いのねぇ」と言ったら、プイとUターンして去って行きました。「ごめん、悪気はなかったのよ」と平謝りしてしまいました。人におもねることのない、その生き方が大切なんですね。納得です。私も、もっともっと自分の気持ちに素直に生きることを目指します。

 考えれば、毎日を猫と暮らす人々は、無意識のうちに猫から多くのことを教わっているのですね。改めて、それに気づかされました。先生、猫がいる心療内科クリニック、ぜひ実現させてください。猫がそこにいるだけで人が癒やされ、心を解き放ち、前向きに生きることができるとしたら、どんなに素敵なことでしょう。実現したら、真っ先に知らせてください。即行で取材に飛んでいきますからね。

撮影:橋詰かずえ
*の写真は海原純子さん提供


海原純子 (うみはら じゅんこ)
心療内科医
医学博士、産業医。1952年生まれ。東京慈恵会医科大学卒業。2008~10年にハーバード大学客員研究員を経て、現在は日本医科大学特任教授。心療内科医として、全国で講演活動も行う。読売新聞の「人生案内」回答者、毎日新聞(日曜版)」にて「心のサプリ」を連載中。主な著書に『こんなふうに生きればいいにゃん -心療内科医がネコから教わった生き方のコツ』(海竜社、2016年)、『男はなぜこんなに苦しいのか』(朝日新聞出版、2016年)、『幸福力 幸せを生み出す方法』(潮出版社、2013年)、『困難な時代の心のサプリ』(毎日新聞社、2011年)などがある。

加藤由子 (かとう よしこ)

動物ライター
動物ライター、エッセイスト。「ヒトと動物の関係学会」監事。1949年生まれ。日本女子大学卒。大学では生物学(動物行動学)を専攻。移動動物園などを経てフリーライターになる。動物、特にネコの生態や行動学に精通し、ネコに関する書籍などを多数執筆している。ネコ関連の著書に、『雨の日のネコはとことん眠い』『ぬき足、さし足、にゃんこ足』(共にPHP研究所)、『ネコを長生きさせる50の秘訣』(サイエンス・アイ新書)、『猫の気持ちを聞いてごらん』(幻冬舎文庫)、『猫式生活のすゝめ』(誠文堂新光社)、『猫とさいごの日まで幸せにくらす本』(大泉書店)、『猫の気持ちは見た目で9割わかる!』(大和書房)ほか多数。現在は、まる(17歳)、ちび(9歳)の2匹の猫と暮らす。

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